22話 年齢
団長さんから言われたことはいますぐ誰かに確認したい。でも張本人が横にいて聞きづらいから、まずは殿下に聞きたいことを先に済ませて、彼がいなくなったタイミングでこっそり確認してみよう。
「あの、これまでの対応的にも私、かなり若く見られてますよね? いくつぐらいに見られてます?」
「女性に年齢のことを話せと?」
「この過保護な環境が続くと思うと息が詰まるぐらいには私は年齢重ねているんですよ。皆さんのその過保護っぷりは私が異世界人であること以外にも年齢が若く見られている可能性があるんじゃないかと思うんです」
「護衛に関しては当然だと思うがな。こちらの年齢は知っているのか?」
「ロキ君とロク君とアナは21歳で、殿下は22歳。ディルクさんとクィンさんが25歳、大神官長様が52歳だとお聞きしています」
「そうだな、騎士団長も大神官長と同い年だよ」
「えっ」
52歳!? ここのイケオジたちはどうなっているんだ。
殿下が女性に年齢は聞きづらいのか、先を促すような目線を送ってくるから、自ら年齢を明かすことにした。
「えっと、改めまして、モカは2歳。私は28歳です……」
「えぇーっ!?」
双子君の驚いた大声に対して、ほかのみんなは口をぽかんと開けてこっちを見てるわ。モカはあくびで大きな口を開けている。
「妙に落ち着いていたのはそれでか……」
ぼそっとそう言ったのはディルクさんだ。きっと初日のことを言ってるんだと思うけど、内心はパニックでしたよ、落ち着いていません。
「トワさん、めちゃくちゃ若く見えますね!」
「それは確かに窮屈に感じるかもしれないな。君は向こうではどんな生活を?」
「普通の社会人、仕事してました。家も早くに買って持っていたので、自立はしていましたよ。私がいた国は事件や事故はあるけど、80年ほど戦争のない国で、世界でも平和な国として知られていました。なのでこんな誰かに守ってもらう生活なんて当然送っていません」
「戦争がない」
「国を守る組織はありますよ。国内の防衛が主で、災害の多い国だったのでその支援や防衛活動をされていました」
「魔法もないんだったな?」
「はい。魔法の代わりに、科学というものが発展しています。インフラも整っていますし、清潔な国としても知られていました。車という乗り物や大勢の人を乗せて運ぶ電車、空を飛ぶ飛行機というものもありました。モカは車が好きでしたし」
「こっちは車がなくて、馬車だから酔いそうだよね」
眠そうだったモカが、そう言いながらよっこいしょとでも言いそうな雰囲気で膝に乗ってきた。
「空飛ぶ乗り物ってめっちゃ楽しそうですね! ドラゴンに乗る感覚ですかね?」
「ごめん、そのドラゴンに乗る感覚っていうのがさっぱりわからないわ」
ドラゴンっているんだ。ちょっと見てみたいけど、見たら最後かもしれない。それに乗るってどういうこと? 実は同じ名前なだけでめちゃくちゃ可愛い生き物とか?
「まぁ、とにかく私はこの年齢で自立していたんです。過保護だと言った理由、わかってもらえました?」
「ああ、よくわかった。君が危ないということがな」
「はい?」
「君はそんな平和な国から来たんだろう? ということはきっと危機管理能力だってない。この世界は戦争だってあるし、魔物もどこにでもいるし、治安の良くない場所だってある。人身売買や奴隷制度もある。そんなところに君みたいな何も知らない人間がいたら危ないと思わないか? 簡単に狙われてもおかしくない」
「そこはモカがいるから大丈夫ですよ。皆さんを連れているほうが目立つんですって」
「他の者ならいいのかって、それは無理そうだな」
殿下がちらっと見たのはディルクさんだ。私も気になって顔をうかがうが、無表情だった。こういう表情だと氷のような冷たさを纏う美しさだなと思う。
「では、やはり先ほど言った通りのままで」
ハァ、やはりこれ以上言っても無駄なようだ。自由はこの国を出てから味わうことにしよう。
それからは、これからのことや小難しい話はなしにして、殿下の乾杯の挨拶から親睦会が始まった。
「ではっ、異文化交流にカンパーイ!」
ご機嫌で乾杯の音頭を取ったのは殿下だった。私が教えたカンパイと言っているが、みんなが手にしているのは紅茶か果汁の飲み物だ。料理に手を伸ばしてみたが……これは後で話そう。
「王子殿下ってもっとこうなんというか、尊き存在みたいなイメージだったわ」
「我々は、王太子殿下のための騎士団だし、リオレス殿下は共に討伐に出られることも多いからみんなとの距離は近いな」
「へぇ、あんなキラキラした見た目なのに戦えるんだね」
そういえば、自分は戦えるって話されていたな。魔力もかなり多いと言っていたことを思い出す。
「そこの仲良しなお二人さん!」
「殿下、酔ってます?」
「ここに酒はないよ。私も飲まないからね」
「その割にテンション高くありません?」
「ずっと働きっぱなしなんだから、そりゃおかしくもなるよ」
殿下は、肩をすくめて私の右隣に並び立った。左側は、ずっとディルクさんがそばにいる。モカは、アナからお肉を分けてもらったりしていて楽しそうだ。でも野菜も食べてほしい。
「あまり食べていないようだけど、楽しめている? モカ様はよく食べてくれているみたいだけど」
「今日は昼食をしっかり食べちゃったので……あ、でも少しはいただいていますよ!」
嘘ではない。ただ、この国の料理を初めて食べたが、なかなか衝撃的だった。見かけはさすが王宮料理。とても美しい。楽しみに一口、時が止まったわ。濃い。思わずお茶で流し込むほど濃い。次に食べたものは――今度は、味がしない。どうやらこの国、味が両極端らしい。
どういうことなの。見かけに反して繊細さのかけらもない。スイーツの甘さはもはや砂糖を食べているかのようだ。砂糖はこの世界では、高級品で主に王族や貴族がよく使うものらしいから、贅沢アピールの一端なのかもしれない。
幸いなことにお茶は美味しいし、果物はまだマシだった。ただし、メロンのような、マンゴーのような、苺のような、全て似ていて微妙に違うものばかり。
私は世界各国の料理が集まり、オリジナルで進化させていくような食の豊かな日本育ち。
ここでの食事は、早々に諦めた。




