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第二話 新しい住まい

お読みいただき、ありがとうございます。

第二話も楽しんでいただけたら嬉しいです。

第二話 新しい住まい


ショウコは村の道を静かに歩いていた。


やわらかな風が桜の花びらを空へ舞い上げ、白い石畳の道へそっと降り積もらせる。


木造の家々が並び、村全体に穏やかで温かな雰囲気を漂わせていた。


道行く獣人たちは足を止め、驚いたように彼女を見つめる。


「九本の尻尾……。」


「誰なんだ……?」


「見たことがない……。」


小さなささやき声が風に乗ってショウコの耳へ届く。


しかしショウコは気にしなかった。


彼女の頭の中にあるのは、ただ一つだけだった。


「まずは……住む場所を見つけないと。」


村の奥まで歩くと、少し古いが手入れの行き届いた一軒の木造の家が目に入った。


木の門、小さな縁側、静かな庭。


その落ち着いた雰囲気に、ショウコは思わず足を止めた。


その時――


「その家が気に入ったのかい?」


後ろから穏やかな声が聞こえた。


ショウコが振り向くと、白い髪に猫の耳を持つ老人が立っていた。


老人は優しい笑みを浮かべていた。


「この家は、もう何年も誰も住んでいないんだ。」


そう話しかけた老人は、不意に言葉を失う。


視線はショウコの黒い耳と九本の尻尾へ向けられていた。


その笑みは少しずつ驚きへと変わっていく。


「……九本の尻尾。」


老人は思わずつぶやいた。


「その耳と尻尾は……王家だけに受け継がれる証のはずだ。」


ショウコは優しく微笑んだ。


「すみません……。


でも、私は王家の者ではありません。」


老人は驚いた表情で眉をひそめた。


「では……君は何者なんだ?」


ショウコは少しだけ黙り込む。


「正直に言うと……。


私はこの世界へ来たばかりなんです。


この場所のことは、ほとんど何も知りません。」


老人はしばらくショウコの瞳を見つめていた。


その瞳には嘘も悪意もなかった。


ただ、疲れと静かな孤独だけが映っていた。


やがて老人は小さく息をついた。


「私は長い年月を生きてきた。


人間も獣人も数え切れないほど見てきた。


だが、君のような者は初めてだ。」


老人は懐から古びた鍵を取り出し、ショウコへ差し出した。


「この家の主人は十年前に亡くなった。


それ以来、誰も住んでいない。


もしよければ……ここで暮らすといい。」


ショウコは穏やかに微笑んだ。


「ありがとうございます。」


そう言って、感謝を込めて静かに頭を下げた。


老人は満足そうにうなずいた。


「それでは、この家は今日から君に預けよう。」


ショウコはゆっくりと門を開け、中へ足を踏み入れた。


目の前には、美しい庭が広がっていた。


白い石が敷き詰められた小道は、小さく落ち着いた木造の家へとまっすぐ続いている。


道の両側には満開の桜の木が並び、やわらかな風にそっと揺れていた。


一本一本の桜の木の下には、白い石で囲まれた小さな池がある。


澄んだ水面には、白と淡い桃色の蓮の花が静かに揺れていた。


庭の両側には青々とした芝生が広がり、やさしい風が草をゆっくりとなでていく。


ショウコはしばらく立ち止まり、庭を静かに見渡した。


その美しい景色を眺めながら、自然と穏やかな微笑みが浮かぶ。


「……とても綺麗。」


彼女はそう小さくつぶやき、木の扉を開けて家の中へ入った。


木の床は静かにきしみ、畳の香りが部屋いっぱいに広がる。


障子から差し込むやわらかな光と、庭から吹き込む涼しい風が、家の中を優しい静けさで包んでいた。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また次回、お会いしましょう。

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