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私が不要と捨てた元婚約者が身の程を知らずに「ざまぁ」を企てているようですが?  作者: あとりえむ


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12/12

第12話:極上の毒

鼻腔を濃密に満たすのは、夜咲きのジャスミンの甘く重い香りと、そして何よりも私の狂気的な理性を一瞬で焼き切る、ヴィクトリア様自身の白い肌から立ち上る芳醇で麻薬のような匂いだ。


大理石の暖炉の炎がパチパチと爆ぜる微かな音だけが、広大な寝室の静寂を際立たせ、世界のすべてがこの部屋の外で停止しているかのような錯覚を起こさせる。


私の視界のすべては、今、最高級のシルクで設えられた巨大な天蓋ベッドの中、無防備に、しかし絶対的な支配者の余裕を持って横たわる彼女の姿だけで埋め尽くされていた。



私の異常なほど高い体温が、彼女の冷たく滑らかな肌に触れるたびに、ジュワッと水が蒸発する音がしそうなほどの強烈な温度差を生み出している。


彼女の雪のように白い、完璧な曲線を描く腰を抱き寄せる。


その驚くべき細さ、そのガラス細工のような脆さ。私が少しでも力を込めれば、容易く折れてしまいそうなその肉体の奥底に、どれほど恐ろしい知略と、世界を容易く反転させる圧倒的な魔力と、絶対的な支配欲が隠されているのか。


その深淵のすべてを知り、それに触れることを許されているのは、この広い世界で、私が首輪を繋がれた私一人だけだ。



「ヴィクトリア様……あぁ、私の女神……。私の光、私のすべて……」


喉の奥から、言葉にならない熱い塊が込み上げてくる。一人称すら忘れそうになるほどの、視界が明滅するような狂気的な執着。



私は彼女の細い首筋に顔を深く埋め、そこにある、微かに脈打つ青い血管に、獣のように噛み付くような口付けを落とした。


ザラザラとした熱い舌が彼女の冷え切った肌を舐め上げるたび、私の体内で煮えたぎっていた破壊のマグマが、彼女のためだけに注がれる極上の蜜へと変換されていくのがわかる。


あの夜会で、あの醜いゴミ虫を完全に破滅させた時の彼女の微笑み。その冷酷で残酷な美しさを思い出すだけで、私の全身の血液が一箇所へと集まり、血管が破裂しそうなほどの凄まじい熱を帯びる。



ヴィクトリア様の細く冷たい指先が、私の無造作な黒髪に絡みつき、私の頭をグイと強引に引き寄せた。


彼女の美しく整えられた爪が私の頭皮に深く食い込む。その微かな痛みが、私に脳髄が溶けるような強烈な快感をもたらす。私の首に嵌められた銀のチョーカーが、彼女の美しい鎖骨に当たり冷たく澄んだ音を立てた。



この冷え切った金属の感触こそが、私が彼女の所有物であるという絶対的な証明。この首輪の重みがなければ、私はとうの昔に世界を破壊し尽くすだけの、ただの狂った化け物に戻っていただろう。



「クロード……貴方の心臓の音、ひどくうるさいわよ。まるで私の耳元で、大きな早鐘を直接打たれているみたい」


彼女の低い、微かに掠れた声が私の鼓膜を直接震わせる。



その声に含まれた微かな熱と気怠さ、そして私を煽るような響きが、私の理性を繋ぎ止めていた最後の一線を完全に断ち切った。


私は彼女の上に重くのしかかり、その細い両腕を私の太い手で乱暴に押さえつけ、ベッドのシーツへと縫い止めた。


私の黄金の瞳と、彼女の氷色の瞳が、互いのまつ毛が触れ合うほどの至近距離で交差する。彼女の瞳の奥底に、私という最も危険な獣を完全に手懐け、完全に支配しているという圧倒的な全能感が揺らめいているのがはっきりと見え、私は、彼女に完全に飲み込まれる歓喜に震えた。





私の全身を重く覆い尽くす、圧倒的な物理的質量と、肌を焦がすような暴力的な熱量。


クロードの太くたくましい腕が私の細い手首を完全にシーツへと押さえつけ、彼の巨大な影が私の視界の光を完全に塞いでいる。彼の荒々しい、酸素を貪る獣のような呼吸が私の顔に直接吹きかかり、彼から発せられる強烈な闘争本能と、私への狂気的な愛が混ざり合った濃密な匂いが、私の脳髄を極上の麻薬のように痺れさせた。


この女尊男卑の世界において「不良品」として社会から忌み嫌われ、排除されるべき純粋で暴力的な男の熱。それを、私だけが完全に制御し、この誰にも見られないベッドの上で、私のためだけにその鋭い牙を剥かせているという事実。


これが、私の背骨の髄液にどれほどの究極の陶酔感をもたらすか、世界中の誰一人として理解できないだろう。



「……ふふっ。いい子ね、クロード。貴方のその飢えた瞳、完全に理性を失った美しい猛獣そのものだわ」


私が微かに口角を上げて微笑むと、クロードの太い首の喉仏が大きく上下した。


彼は私の手首を押さえていた手を離し、今度は私の腰を、あばら骨が軋むほどの強い力で乱暴に抱き寄せた。彼の鋼のように硬い筋肉が私の柔らかな肌に隙間なく密着し、互いの極端な体温が激しく混ざり合う。


彼のザラついた熱い舌が、私の唇を強引にこじ開け、口腔内へと乱暴に、しかし切実な飢えを伴って侵入してきた。



夕食で飲んだ赤ワインの深い残り香と、彼の持つ鉄と野性の匂いが口腔内で混ざり合う。私が息を吸う隙間すら一切与えられないほどの、深く、貪欲で、酸素を奪い尽くす口付け。


私の口腔内のすべてを、私の存在のすべてを彼の色に完全に塗り替えようとするかのような、狂気的な執着。



「ん……っ……」


私の口から、無意識のうちに微かな甘い吐息が漏れた。


彼の圧倒的な熱が、私の冷え切った身体の奥底へと、まるで毒が血を巡るようにジワジワと浸透していく。


私の手は自然と彼の広い背中へと回り、そこにある無数の古い刀傷や、焼け焦げたケロイドの痕を、冷たい指先でゆっくりとなぞった。かつて彼が地下闘技場で何年も味わい続けた地獄の記憶。それを私がなぞるたびに、クロードはビクリと大きく身体を震わせ、さらに深く、私を腹の底まで求め、私の首筋や肩にその鋭い犬歯を立てる。


肌が破れそうな微かな痛みが走るが、それはすぐに背骨を突き上げる電流のような快感へと反転し、私の下腹部に甘く、ひどく重い痺れを蓄積させていく。



「あぁ……ヴィクトリア様……貴方様の恐ろしい知性と、その残酷なまでの冷たさに……私の魂は、骨の髄まで永遠に囚われています……」


「私を、貴方様の猛毒で完全に満たして……私という存在を完全に壊してしまってください……貴方様の足元でしか、私は息ができないのです……」


クロードが名残惜しそうに唇を離し、酸素を求めて息も絶え絶えになりながら、私の耳元で狂信者のようにそう囁いた。



彼の熱い吐息が私の耳介をくすぐり、鼓膜を震わせる。


私は彼の太い首に両腕を回し、私の方へと強く引き寄せた。彼が私のためならば、世界中の人間を皆殺しにして世界を壊すことすら厭わないという、その底なしの狂気と忠誠。ジュリアンのような、コルセットで腹を凹ませて虚飾に塗れただけの滑稽な道化には決して到達できない、純粋で暴力的で、圧倒的な真の価値。


「ええ、そうね。貴方は一生、私が特別に用意したこの甘く熱い檻の中から、一歩も抜け出すことはできないわ。私の手足となり、私の剣となり、私のためだけにその命と熱を燃やし尽くしなさい。」




「貴方のすべては私の盤上にあるのだから」


絶対的な支配の宣言。



私は彼の黄金の瞳を真っ直ぐに見据えながら、極上の、すべてを支配する女帝の微笑みを浮かべた。


それに対する答えとして、クロードは喉の奥で獣の唸り声を上げながら、再び私の全身を己の暴力的な熱で包み込んだ。


女尊男卑の狂った世界で、私はすべての盤上を完全に支配し、最も危険で美しい獣を完全に飼いならしたのだ。



窓の外には月明かりが冷たく輝いているが、この部屋の中だけは、私が生み出した極上の毒と、狂犬の狂気的な熱によって永遠に満たされていた。

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