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状態異常使い、敵を溶かす。~状態異常ビルドのVRMMO~  作者: MEはCat
【第四章】新しき風、蒼白なる魂を運びて

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67/69

ギャップ

 『Relics Online』――――

 それは最近リリースされたVRMMOであり、今最も流行っているゲームの1つである。


 流行りの発端はとある()()


 最早伝説と化した赤月とBANとの決闘配信。

 このゲームが広まったのは2人の影響が大きい。

 それは思想から来る対立であったが、今では健全な競争相手として日々ゲームを楽しんでいる。


 そして数日前の出来事。

 このゲーム初めての公式イベントが起きる。

 前半のバトルロワイヤルでは、大勢のプレイヤーの中から1人のトーナメントに進出するプレイヤーを選定するものであった。

 トーナメントまで勝ち進んだのは8人のプレイヤーであり、誰もが猛者と呼ぶに相応しい存在達。

 戦闘は苛烈を極め、限られた強者のみが、上へ上へと勝ち上がっていく。


 そして来たるは決勝戦。

 赤月とヒーローとの決闘――――


 激闘の末に、ヒーローは初代の優勝者となる。


 それと同時に、このゲームで最も有名なプレイヤーである赤月は準優勝の順位として刻まれていた。

 『Relics Online』をプレイしている者ならば、一度は聞いた事のあるプレイヤー”赤月”。

 彼は状態異常を扱う事で知られ、その類稀なるバトルセンスによって数々の強者を打破していった猛者である。


 人々は言う、彼こそが『Relics Online』の顔だと。


 その言葉に否定的な者は少ない。

 事実、彼が居なければこのゲームはここまで盛り上がらなかっただろう。


 魔弾の射手、赤の僭主、無秩序の象徴、自由の体現者、栄光なる者――――


 そして、状態異常使い。


 彼に関する噂は多々あるが、どれも根も葉も無い誇張された話ばかり。

 唯一共通しているのは、彼は非常にマイペースな荒くれ者だというのみ。


 そして、そんな彼が今何をしているかと言えば――――


「ほえやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


 ダンジョン『蜜密洞窟』の出口、『ノドカ山脈』が連なる高台にて、遠吠えを発していた。


「何でそこでグーパンなんじゃぁぁぁぁぁ!!! あれ無かったら勝確だっただろうがぁぁぁぁぁぁ!!!」


「花より遠吠え、春の風物詩やね」


「なぁ、知らない人のフリしていいか?」


「彼曰く、「ぽぽたん流ストレス発散法」らしい。初代遠吠えのぽぽたんから伝道された手法なんだとか」


「ねぇ、恥ずかしいから辞めてって! 本当に! それマジで恥ずかしいんだって!」


 赤月が遠吠えを発している側には、BAN、爆弾愛好家、蛇者、ぽぽたんが多種多様な反応を見せる。


 BANはもう慣れたように穏やかな顔つきで緑茶を呑む。

 爆弾愛好家は何とかして知らない人のフリが出来ないかと画策している。

 蛇者は鼻を高くして解説に専念している。

 ぽぽたんは本当に恥ずかしそうに顔を赤らめている。


 そして、カオスと混沌が支配するこの場に、また数人のプレイヤーがやって来た。


「……え、これ何やってんの?」


 プレイヤーネーム”落ち葉”。

 彼は新規参入したプレイヤーであり、激闘の『蜜密洞窟』を制した直後であった。

 ダンジョンをクリアしたと思えば、この光景が広がっており困惑を隠せない。


「……えっと、彼の事は気にしないで下さい」


 プレイヤーネーム”木こり”。

 彼女は赤月と同じ古参プレイヤーの一人であるが、この時だけは無慈悲にも遠い目をしていた。

 木こりはよく新規参入したプレイヤーと深く関わっており、初心者を相手にする時はまず彼女を紹介する程には人脈を持っている。


「噂は本当だったんだ……確かに凄い変な人!」


 プレイヤーネーム”夜風”。

 彼女も落ち葉と同様新規参入したプレイヤーである。

 噂を好む性格から、様々な情報を収集する癖がある。


「木こりさん、彼本当にあの赤月と同一人物なのか?」


「……………個人的には「いいえ」と言いたい気分です」


「同一人物なのか……」


 落ち葉は実力がある者を好む。

 だがそれはそれとして赤月にドン引きしていた。

 イベントの時の格好良い赤月と、今の変人な赤月を同一人物とするのを脳が拒否しているような感覚が蝕む。


「おっ新入りだね!」


「こんにちは、蛇者さん」


「こんにちは〜!」


「……どうも」


 蛇者は赤月を放っておいて新入りの対応をする事にした。

 彼はとても真面目そうに、そして爽やかに対応する。


 ――――ぶっちゃけ蛇者も赤月と同等の変人なのだが、自分以上の変人達に囲まれているが故に、()()()真面目な人みたいなオーラを醸し出している。

 自分自身がこのゲームでも最上位のトッププレイヤーだから……というのもあるのかもしれない。 


「よし、なら新入りの方に……ここで過ごすに辺り、先に言っておくべき事が3つある!」


「はい、なんでしょうか!」


「まず1つ目、見ての通り凄い緩い所だ。ガチガチなルールも何も無い代わりに、自分自身でやりたい事を開拓していく必要がある」


 2人は頷く。

 それは道中薄々感じていた事であり、今この瞬間それが確定しただけである。

 ここ『アマテラス社』のプレイヤーは、互いが緩い繋がりであるが故に争いは起こらない。

 むしろ、自分のやりたい事を自由にやれるので誰もが気を楽にしている。

 何かをしないといけない訳でもなく、各々がやりたい事を精一杯するのが、ここの気風である。


「そして2つ目、何か困った事あればすぐに他のプレイヤーに聞く事。誰かに頼る時は遠慮しなくてもいいし、逆にPVPしたい時は決闘機能を使って喧嘩売りに行っても良い」


「おぉ! PVP待ってました!」


「むしろ、俺達はPVPがやりたくて来たんだ」


「へぇ、それは楽しみだね」


 そう、2人は雰囲気こそ真反対ではあるが、どちらもPVPを好むタイプのプレイヤーである。

 彼らは武闘祭のイベントを見て参加を決めた。

 これはある意味で当然の話である。


「それで、3つ目は?」


「最後の3つ目は……ここ、強い奴しか集まってないから。余り舐めてると痛い目見るぞ」


「「……っ!」」


 一瞬、2人は蛇者から()()が飛ばされたような感覚がした。

 つい先程まで真面目で頼れる兄貴分のようだったプレイヤーが、その刹那のみ、まるで血に飢えた猛獣のような雰囲気に変貌していたような気がした。


 これは、ただの錯覚なのかもしれない。

 だが本能が告げていた――――

 この場所こそが本当の()()であると。


「ちょっと蛇者さん、余り新人の方を怖がらせてはいけませんよ?」


「あ、ごめんよ……つい」


 そう、この騒がしくも愉快な雰囲気で忘れそうにはなるが、2人はまだ新人の立場だ。

 更に蛇者が言っていた「強い奴しか集まってない」。

 これは単なる脅しではない。


 本当に猛者しか居ないのだ。


 表向きはノリが良く楽しく見える集団なのかもしれない。

 だがその実、彼らは攻略の最前線に立つトッププレイヤー達である。


「……蛇者さん」


「どうしたんだい?」


「……俺、今は無理でも、いつか蛇者さんを倒すよ」


「――――いつでもおいでよ。その時を楽しみにしてる」


 蛇者はニヤリと笑みを浮かべる。

 生意気な後輩程可愛いものはない。

 いつか自分を超える――――

 それは強者にとって、最高の挑戦宣言だった。


「蛇者〜後輩相手に格好付けてるのか?」


 騒ぎを聞きつけたのか、赤月は遠吠えを辞めて駆け寄る。

 その顔付きは、かつてのイベントで見た()()そっくりだった。


「落ち葉、夜風――――改めてようこそ。どうせゲームやるんだ、気楽〜に行こうぜ?」


 赤月は2人を流し目で見やる。

 先程までには無かった強者としての()が、彼らの心奥底にまで届いた。


「……宜しくお願いします!」


「おう宜しく!」


「俺そっちの赤月さんの方が好きだな」


「……お前も叫ぶか?」


「叫ばない」


 だがやはり、普段とのギャップで苦しくなる。


新章開幕!

いや開幕直後に何してるんだこの人……

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