【準々決勝】第一試合
本日2話投稿目!
これから全試合書いていく都合上
結構別プレイヤーの視点入ってきます
ご了承ください
[第一試合 開始準備]
私、魔羅 祐介――――
もといヌルハートは戦場へと転移されていく。
『トーナメント 砂岩山』
戦場は砂岩に覆われた土地だった。
周囲には固められた砂岩が転がっており、常に横薙ぎの風が吹かれている。
「やぁ、君が噂のヌルハート君だね?」
対戦相手はプレイヤーネーム”万事屋”。
彼は飄々とした口調で話し掛けて来る。
「万事屋――――いや、元八百屋と形容すれば宜しいかな」
「……へぇ」
万事屋は一瞬、目を細める。
八百屋――――
その名前はあるVRMMO『スペースアナーキー』と呼ばれるゲームでの名前だ。
彼がそのゲームで野菜という名のドーピング薬を売り捌いていた事は、まだ記憶に新しい。
「第八回目の王者――――君ならこの意味を寸分違わず理解出来るはずだ」
「……はっはっは! これは驚いた、まさかの彼だったとは!」
まるで面白いネタを見せつけられたかのように、万事屋はケタケタと笑う。
その笑いの中にいくつかの嘲笑が入っている事を、私は見逃さなかった。
「……あの件のリベンジと行こうか。万事屋」
「君も必死だねぇ〜そんなに怒っているのかい?」
「当然だとも。負け犬風情が、私の物を咥えて走り去ったんだ。躾を付かせなければ気が済まないね」
万事屋は少しピクリと震える。
確かに彼は煽り屋ではあるが、それと同時に煽りに弱い。
「……言ってくれるじゃないか。だけどね、今度は君がそうなる番だよ」
「それは試してみないと分からないな」
[プレイヤー ヌルハートは準備完了しました]
「確かにそうだね。それじゃ、口上はこれくらにして……さっさと始めちゃおうか!」
[プレイヤー 万事屋は準備完了しました]
[第一試合 開始まで]
万事屋、武器遺物を構える。
[3]
万事屋は水鉄砲のような武器遺物を構えていた。
ただの舐めプか、それとも秘密兵器か――――
どちらにせよ彼のニヤケ面は止まらない。
[2]
対するヌルハートは――――
何も構えない。
決闘開始まで武器遺物を出さないつもりなのか、それとも持っていないのか。
――――それは、直ぐに分かる事だ。
[1]
両者、緊張が走る。
この勝負を制した者のみが準決勝へと勝ち上がるのだ。
[0]
[第一試合 開始]
次の瞬間、万事屋の持つ『高圧水撃砲』から線のように細長い水が放出される。
だがその勢いが現実の水鉄砲とは異なる。
水の勢いは音速を超え、水圧カッターの如くヌルハートの心臓へと向かって飛んでいくのだ。
だが――――
その水が身体に届く事は無い。
「うげっ……!」
万事屋は不意に声が漏れる。
ヌルハートの身体から幾重の触手が蠢いており、その内の1つが水の光線を弾き出していた。
「失礼、私のペットだ」
「良く趣味が悪いって言われない?」
「この子の可愛さが分からないとは。センスが無いようだ」
『奈落蠢動の心核』から放出したは無数の触手達は、ヌルハートの手となり足となり、自在に動かしてフィールド中を駆け回る。
見る者を不快にさせる動きを行いながら、バレリーナのように触手を万事屋へと伸ばしていく。
「何だよそれ、気色悪すぎ!」
万事屋が悪態を付きつつも、ヌルハートの攻撃を余裕を持って避け続けている。
それ何処か『高圧水撃砲』を振り回し、触手の1つを切り落とす。
「くっ……!」
「なる程、弱点は付け根だね!」
触手は先端であればある程硬度が高く、付け根であればある程硬度が低くなる。
その弱点が判明したのか、万事屋は大きくフィールドを駆け回りながら隙を探し――――
更に1本の触手を切り離す事に成功する。
「確かに触手は脅威だけど、切り離してしまえば――――」
「【超再生】」
ヌルハートがそう唱えると、切離したはずの触手を即座に再生した。
「「切離してしまえば」――――何だって?」
「……そう簡単には行かないよね〜」
触手は再度活発な動きを見せ、先程よりもより大きくアグレッシブに動き回り、万事屋を追い詰めていく。
だが万事屋も『高圧水撃砲』から射出される水圧光線をしならせ、触手を1本1本切り刻んでいく。
「それなら、僕もギア上げてくよ!」
万事屋が取り出したのはサーフボードであり、その上に乗ったと思えば地面から水が放出される。
万事屋は地面を、壁を、空中を『波翔板』で自由自在に動き回り、それに加え水の光線を出し続ける。
「小癪な……! 【異形解放】ッ!」
ドゴォ!
ドゴォ!
ドゴォ!
ヌルハートは絶え間ない水圧光線を捌きながら、全力で無数の触手を伸ばす。
身体から、地面から、壁から、あらゆる場所から巨大な触手が飛び出した。
蠢く触手は獣のように万事屋を捕らえようと震わせる。
触手は何も10本や20本ではない。
3桁を超える程の触手を同時に出現させている。
それは、まるでクラーケンに追いかけられるサーファーのようであり、万事屋は観客に魅せるように舞う。
触手を出しては細切れにされ、触手を出しては輪切りにされ、触手を出しては千切りにされる。
「かぁっ!」
ヌルハート本体の身体からも無数の触手が伸びている。
ロボットを操縦するかの如く触手を伸ばし続け、猛攻を止める事は無い。
「ヌルハート! 君がどれ程の手数を持っていたとしても、僕には敵わない。物量攻めで僕を落とせるとは思わない事だね!」
「どうやらそのようだな……ならば!」
ヌルハートの動きが更に素早くなる。
触手による物量攻めは辞め、自身の身体能力を向上させるコンパクトな攻めに回る。
「【終ノ抱擁】」
ヌルハートは目にも留まらぬ速さで、触手を纏わせた拳を万事屋の腹へと殴り付ける。
「がはっ……!」
その一瞬、万事屋は気が付く。
――――離れない!
いつの間にか、身体に触手が絡みついていた。
しっかりと万事屋の身体を縛り付けており、中々抜け出す事が出来ない。
「状態異常を扱うのは、何も赤月の専売特許ではない」
「拘束の……状態異常?!」
拘束の状態。
それは相手の動きを止める事に特化した状態異常であり、使用者本人が許可しない限り解ける事は無い。
デメリットはある。
それは使用者本人もその場から動けなくなる事だ。
「私には愛らしい触手達が居る。私が動けなくとも、この子達さえ動ければ良い……!」
「くっ……考えたな……!」
あくまで動けなくなるのは使用者本人。
触手は本人とは独立した扱いとなる為、制限の影響を受けずに攻撃する事が可能となる。
「終わりだ……!」
ヌルハートがトドメを刺そうと触手を蠢かせる。
――――違和感。
「あぁ、その通りみたいだね……お前がな!」
ニヤリと万事屋は顔を歪ませる。
その直ぐ視界の端には、『波翔板』が飛んで――――
バゴンッ!
「ごふっぁ……!」
拘束は解かれた。
「――――じゃあな!」
万事屋はその一瞬の隙を縫い合わせるかの如く――――
水圧光線を発射した。
[プレイヤーネーム 万事屋が第一試合に勝利しました]
[プレイヤーネーム 万事屋は準決勝に進出しました]




