待ち侘びる思い
三人称視点です。
「【水天昇撃】【水天昇撃】【水天昇撃】ッ!」
バンダナは【水天昇撃】を乱射する。
貫通力のある水のビームが地面を盛大に抉り取り、そのまま玩具戦士の複製体を襲う。
「うーん……中々当たらないなぁ……」
それでも当たった攻撃は1回のみ。
単に予備動作が大きいだけでなく、玩具戦士の複製体の『鋼鉄機構鎧』の素早さも高い。
そして【臨界化】――――
『鋼鉄機構鎧』の全身には黄緑色の紋様が浮かび上がっている。
このスキルは自身の防御力を高め、被ダメを抑えるものであるが、それと同時に素早さも底上げされている。
これにより、鈍重な鉄の塊は、身軽な鉄の塊へと性能が昇格するのであった。
それでも【水天昇撃】の威力は凄まじく、たった1回の被弾で大ダメージを玩具戦士に与えるに至る。
「永年労働者、バンダナのサポートするよ!」
飴雨は現状をよく把握していた。
今やるべき事は、【水天昇撃】を当てやすくする為に、少しでも玩具戦士の複製体の動きを止める事だと。
「分かった」
永年労働者は飴雨の意向を受け取り、玩具戦士に向かって駆け抜ける。
「【重撃採掘】」
ガンッッッッ!!!
永年労働者の持つ『採掘鶴嘴』を大きく振り下ろす。
有効打は与えられないが、その衝撃によりヘイトを永年労働者に向ける。
「【水天昇撃】ッ!」
その一瞬の隙を水のビームが襲った。
玩具戦士の体力は残り僅かとなる。
「【反響跳弾】!」
飴雨は『跳界核』を一斉発射し、多数の小さな球体が玩具戦士の複製体を襲う。
だが玩具戦士の複製体は、突撃の構えを取った。
「……っ!」
狙いは飴雨であり、この『跳界核』の嵐の中を突っ切って確実に仕留めようとしていた。
玩具戦士は地面を蹴り、全速力で飴雨を――――
ガンッッッッ!!!
「えっ……」
突然、地面から触手が現れた。
その触手が『鋼鉄機構鎧』を穿ち、大きく仰け反らせている。
「【水天昇撃】ッ!」
バンダナは水のビームを放出する。
玩具戦士の複製体は耐えきれずポリゴンと化した。
「上手く倒せたようで何より」
ヌルハートは珈琲を啜る。
あの触手はヌルハートが飼っている触手であり、『奈落蠢動の心核』に秘められた存在達であった。
「総督!」
「部下の不手際は上司が拭うものだ。そうだろう?」
夜風の複製体、玩具戦士の複製体は片付いた。
残りは、マヨ船長の複製体のみ。
「【灼熱滅却】ッ!」
マヨ船長の複製体との戦いも佳境を迎えている。
グリムは【灼熱滅却】で周囲の廃ビルごと焼き切っているが、それでもマヨ船長の複製体は倒れない。
むしろ、目の前のグリムを強者とみなして【覚醒解放】まで使用しており、その耐久は並大抵のものではない。
「【破球】」
『ボレアス社』のプレイヤーも負けじと攻撃を重ねており、着実にマヨ船長の複製体へとダメージを与えていた。
プレイヤー“KK”は紫のオーラを纏った『破戒鉄球』を思いっ切り蹴り飛ばす。
その威力と速度は砲弾のようであり、マトモに当たれば並大抵のプレイヤーがミンチになる威力をしている。
だがマヨ船長の複製体は『解放の錨』を振り上げ、難無く『破戒鉄球』を弾き飛ばした。
「【千本向日葵】――――【巨大化】ッ!」
続けて攻撃するはプレイヤー“フォビア”。
無数の投げナイフがマヨ船長の複製体へと向かい――――
瞬く間に巨大化した。
マヨ船長は『解放の錨』を正面に向け、【巨大化】した【千本向日葵】を防御する選択をした。
ガガガガガガガガガガガガガッッッ!!!
衝突する金属音が響き渡り、徐々に後退する。
それでも致命打にはならず、正面から防ぎ切っている。
「【魔爪】!」
グリムは青き魔力で構成された鉤爪を腕に形作る。
そして、目にも留まらぬ速さで引っ掻いた。
「【灼熱滅却】ッ!」
追撃として【灼熱滅却】を放つ。
吹き飛ばされたマヨ船長の複製体は空中で身動きが取れず、マトモに炎のビームを喰らってしまった。
「……むっ?」
それでもマヨ船長の複製体は寸前の所で死なず、上空に跳躍し、最後の一撃を『解放の錨』に込める。
「――――【魔爪】」
グリムは再度、魔力の爪を形作る。
そして――――
「…………我の勝ちだ」
マヨ船長の複製体は崩れ落ち――――
力尽きた。
「天晴――――複製体なのが惜しいな」
グリムは本物との戦いを待ち侘びる思いを語る。
だがひとまず、この勝負はグリムとバンダナ、そして『ボレアス社』が勝利を収めたのであった。
※無害なクマとスパッツはちゃんと勝利を収めました




