てんやわんや
ヒーロー視点です
臨時拠点に向かうと、混乱の文字すら生温い混沌に満ちていた。
上空から絶え間なく複製体が降り注ぎ、プレイヤー達が忙しなく迎撃している。
「――――あぁ、やっと来はりましたか」
その内の1人であるプレイヤー“BAN”は余裕そうな表情を浮かべながら、迎え来る複製体を返り討ちにしていた。
むしろ武器遺物の特性上、至極冷静に敵を薙ぎ倒していくその様は、まさしく一騎当千の強さを誇る。
「状況は?」
「てんやわんや、やね。報告通り、結界が解放されたのに気付いた魔神が大軍呼び寄せた……それで、見ての通りですわ」
それでも複製体の大軍に押されているようで、状況は依然劣勢となっている。
今こそ力を合わせて、奴らを撃退しなくては。
「皆、各戦場に行って手助けに行って欲しい」
「合点承知!」
爆弾愛好家の声と共に、先程まで共闘してくれたプレイヤー達は各々の戦場へと向かう。
「そうそう、一番守りが手薄な所は南の方やから、そっち行ってくれると助かるんやけど」
「分かった」
BANの言われた通り、俺は南の戦場に向かってフィールドを駆け抜けていく。
すると、その先にはプレイヤー“亡霊マダム”とその一味である『彼岸会』が戦闘を行っていた。
「うふふ……これは驚きましたわ。強力な助っ人とは貴方の事でしたか、ヒーローさん」
「俺も、まさか『彼岸会』と協力する時が来るとは思わなかったよ」
『彼岸会』が戦闘を行っている相手は、プレイヤー“KK”、プレイヤー“賢者牧師”、プレイヤー“スカーフ”、プレイヤー“クワバラ料理人”……の、複製体か。
「……ふん、『アマテラス社』じゃなきゃ何でも良い」
「“餓者髑髏”ったら……いつまで『アマテラス社』に負けた事グチグチ言ってるの?」
「口じゃなくて身体動かせよな〜」
確か『彼岸会』は『アマテラス社』と交戦したと聞く。
彼らにしてやられてヘイトが高まっているからこそ、今回余り関係無かった俺が駆り出されたのか。
こういう所でも、やり手だな……BAN。
「さて――――【鎮魂神風】」
亡霊マダムは身体から人魂を生成する。
賢者牧師の複製体は前方に結界を張るも、すり抜ける。
そして、身体へと入り込んだ。
バガンッッッッ!!!
次の瞬間、人魂をすり抜けられた賢者牧師の複製体、その身体の中から衝撃波が放たれた。
その衝撃により、身体が破裂し塵となる。
「流石会長!」
「――――海坊主、後ろ」
「え? ……っと!」
突然後ろから、クワバラ料理人の複製体が斬りかかる。
海坊主は背中から泥の腕を生やし、大太刀を真剣白刃取りをかました。
「【泥沼拳】ッ!」
更に地面から沼の拳を飛ばし、顎元を打ち上げる。
その衝撃により、クワバラ料理人の複製体もポリゴンとなって消えてった。
「所詮は模倣って事だ。俺にかかれば――――」
「【飛来天斬】ッ!」
バゴンッッッ!!!
俺が飛ぶ斬撃を飛ばせば、猛スピードで飛来した球体に衝突し、攻撃を逸らす。
――――俺の斬撃を持ってしても逸らす事が限界な攻撃なんて、そう多くは無い。
「油断大敵だよ、お兄ちゃん」
「……強いな、あいつ」
KKの複製体の足元には、サッカーボールのような形をした遺物があった。
その球体から紫色のオーラが灯されており、それを勢い良く蹴る。
弾丸よりも速く打ち付けられた球体に合わせて『神霊聖剣』の刃を合わせるも、感触から両断する事が叶わないと瞬時に判断する。
俺は球体を受け流し、後方へと飛ばした。
「なんだ、あの威力?! 大砲かよ!」
後方では轟音を響かせていた。
単に球体を蹴っただけでは、絶対に出せない威力。
それを可能としているのは、あのサッカーボールの遺物そのものの力によるものだろう。
「また来るぞ!」
もう1度、再度生成したサッカーボールに紫色のオーラが再燃する。
間違いなく、あれは避けなければならない攻撃だ。
「何だ……!」
KKの複製体が球体を蹴る直前、突風が吹き荒れる。
それは大きな隙を作るべく、スカーフの複製体が作り出した風だった。
「くっ……!」
海坊主に向かって、球体が射出される。
「【剣盾変換】!」
からかさは『剣盾傘』を展開し、砲弾のような球体の攻撃を防御する。
ジリジリと後退するも、何とか上に打ち上げた。
俺は咄嗟にスカーフの複製体のもとへと駆け出し――――
その首を斬った。
「ナイスだ、ヒーロー! これで邪魔されねぇ! 【白骨狂演】ッ!」
餓者髑髏は地面から無数の骨を射出する。
例えこの場にスカーフの複製体が生きていれば、この無数の骨すらも突風で無効化していただろう。
だが、スカーフの複製体はもう居ない。
KKの複製体は無数の骨によって串刺しにされてしまう。
そして、ポリゴンとなって消えていった。
「ひとまずは……片付けましたか」
ここの戦場は勝利を収めた。
他の戦場の戦況はどうなっているんだ……?
複製体に倒されてなければ良いが……。
臨時拠点の防衛戦……ファイッ!
この程度で脅威が終わる訳が無いのだ^^




