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状態異常使い、敵を溶かす。~状態異常ビルドのVRMMO~  作者: MeはCat
【第七章】夢の跡地【別視点】

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脅威を知らせる汽笛

ヒーロー視点です

「――――いや、今は誰かなんて重要じゃない」


「えぇ、()()も見つかったみたいだしね」


 このノイズ混じりの視覚と聴覚の妨害は本体である巨大なテレビに攻撃を当てると解消されるみたいだ。

 黒の繊維に当たった時とは違って、攻撃が吸収されたような様子も無い。


 つまり、あそこがヴァル=ムービーの弱点に他ならない。


「……ま、対処法が見つかってもキツいがな」


 雪だるまの言葉の通り、黒の繊維は未だ脅威に違いない。

 あの繊維を搔い潜り、巨大なテレビに攻撃を当てなければならないのだ。

 それ以外の部位は全て打ち消されてしまう。


「――――――――!!」


 ヴァル=ムービーは黒の繊維を振り回す。

 自由自在に伸び縮みする攻撃、その上狂乱化で底上げされた攻撃速度――――

 それが俺に向かって襲い掛かる。


「あくまで力を消すだけなんだろ? なら――――【地盤粘土】」


 ニヤリと笑みを浮かべた雪だるまは『地母神大鋤』を地面に差し込む。

 地面から四角く切り取られた岩の柱を伸ばす。


 ドンッ!


 黒の繊維が岩の柱で止まった。

 あくまで黒の力は、あらゆる力の打ち消しである。

 元々静止している障害物には、打ち消す力は無い。

 岩の柱は【地盤粘土】によって地形を操作されただけであり、生成物ではない。

 それ故に、触れた瞬間に消滅する事も無い。


 ガンッ!


「――――――――!!」


 再度、狙撃が飛んで来る。

 蓄積された攻撃により、ヴァル=ムービーは言葉にできない悶え声を漏らした。


 エンジェルが大きく飛び上がる。


「【愛死天流】」


 乙女パワーは再燃する。

 エンジェルの桃オーラが湧き出す。

 ヴァル=ムービーは警戒しているのか、黒の繊維を何重にも前方に張り巡らせる。


「【飛来天斬】」


 エンジェルに向けられたヘイトを見逃さず、俺は飛ぶ斬撃を飛ばす。

 斬撃は巨大なテレビに直撃し、大きく仰け反った。


「【純愛正拳】ッ!」


 その隙を狙って、エンジェルは最大火力を放つ。


 1度で駄目なら、2度。

 2度で駄目なら、何回でも――――


 愛情を叩き込むのだ。


「My old king(我が旧王)――――」


 ヴァル=ムービーはそれだけ呟いて――――

 消滅した。


[クエストボスを撃破しました]

[栄華機兵 ヴァル=ムービー【狂乱】を倒しました]

[『栄華の勲章』を入手しました]

[『映画の黒縄』を入手しました]

[『魔水晶』を入手しました]

[50000HGを入手しました]

[ランク38になりました]


 ドンッ!


 突如として、遠くの方から衝撃が伝わった。

 これで、結界が解かれたのだろうか。


「■■■■■■■■■■■■■■■■」


「また、あの声か……!」


 時々流れる謎の声――――

 いや、状況からして()()の声なのだろう。

 俺の奥底が覗き見られているような不快感が這い上がって来る。


「うっそだろ、おい……」


 思わず、雪だるまが呟く。

 空を見上げると、上から何かが向かって来ていた。


 列車だ。


 ポーッポーッと汽笛を響かせており、見える限りでも数十はこちらへと向かって来ている。 


「【飛来天斬】ッ!」


 俺は飛ぶ斬撃を列車へと当てる。

 真っ二つに切ったかと思えば、中から何者かが大量に飛び出して来た。


「プレイヤーの……複製体!」


 見知らぬプレイヤーから見知ったプレイヤーまで、無数の複製体が空から降って来る。

 ヴァル=ムービーを倒しても、脅威は終わらないという事か。


 俺は『神霊聖剣』を構え直す。

 ここからが正念場だ。

 切り抜けて皆の所まで戻る。

 それが、今出来る俺達の最善だ。


「……何だ?」


 ふと、何かが高速で近付いて来る。

 先程の狙撃のような銃弾の音ではなく、もっと何かが燃え上がっているような――――


「【超新星】ッ!」


 ドッカァァァァァン!!!


 突如として、上空が爆炎に呑まれる。

 爆発音が周囲を轟かせ、プレイヤーの複製体達が撃ち落されていく。


「何かヤベぇのと戦ってんな! 加勢するぜ!」


 プレイヤー“爆弾愛好家”――――

 彼は爆弾のような物を次々と空に放り投げ、列車諸共炎上させていた。

 見知らぬプレイヤーだが……状況からして俺達を助けに来てくれたのだろう。


「助太刀に感謝する」


「おうともよ! この俺に任せ――――」


「良い所に来てくれたわね♡」


「やっぱ帰ろうかな」


「いやいや帰んな! 頼むから!」


 エンジェルと知り合いなのか。

 それなら信用しても良さそうだな。


「だけどよ、助っ人に来たのは俺だけじゃないぜ?」


「【灼熱滅却】ッ!」

「【水天昇撃】ッ!」


 更に追い討ちとなるように、火炎のビームと水のビームが交差する。

 列車と複製体は何も出来ずに塵と化していった。


 この攻撃方法は――――


「グリム!」


「「ヒーローは遅れてやって来る」とは言うが、やはり創作。現実は逆のようだな」


 振り返れば、紅き翼を羽ばたかせるグリムが居た。

 まさかグリムが助けに来てくれるとは思わなかった。

 ……隣のその子は見た事が無いな。


「バンダナ……初めましてかな?」


「始めまして! ……赤月と違って正統派って感じだね」


「正統派……?」


「【波李威(パリィ)】ッ! どうした、数だけかこの野郎! てめぇらなんざ、フルボッコにしてやっから降りて来いや!」


「あれが正統派じゃない人の代表例ね」


「なんとなく分かった気がするよ」


 プレイヤー“夜露死苦”。

 確かに荒くれ者のような夜露死苦や赤月が正統派かと聞かれたら違うだろうけど、比較されると萎縮してしまうな。


「貴方がヒーローですね。はじめまして」


「……ヒーローでも苦戦する相手ですか」


 他にはプレイヤー“木こり”、プレイヤー“あやとり”が参戦してくれる様だ。

 はじめましての方が多いな……あやとりの方はトーナメントで見た顔だ。


「こんなにも加勢してくれるなんてね。これで負けたら流石に恥ずかしいよ」


「猛者が2人居て負ける相手など、それこそ脅威でしょう」


 確かに、ここには猛者が2人も居るんだ。

 この危機も切り抜けられるはずだ。


「やる気か? あやとり」


「居たんですか、雪だるま」


「影薄いみたいなの止めくれ、普通に傷付く」


「……それで、最終目標は?」


「多くのプレイヤー達は臨時拠点に集まってる。そこまで撤退だ」


 列車の数も、減っている様子は無い。

 ここは臨時拠点に戻るのが先決だろう。


「撤退戦ですね。では――――【傀儡糸】」


 あやとりは上空に無数の糸を伸ばし、、列車の窓から顔を覗かせている複製体へと突き刺す。

 複製体は自由に身動きが取れなくなり、自身の武器遺物で首を搔き斬った。


「何度見てもえげつねぇな」


「合理的でしょう」


「だな」


 あやとりの戦術は合理的で恐ろしいな。

 だけど、味方ならこれ程頼もしいものはない。


「俺も活躍しないとな。【飛来天斬】【飛来天斬】【飛来天斬】!」


 飛ぶ斬撃を3連放つ。

 列車が貫通し、両断される。

 どうやら自動車同様、そこまで強固ではないようだ。


「さぁ、皆! こっちよ! 私について来て!」


「どうしよう、理性では付いていきたいけど本能が拒んでるよぉ!」


「爆弾愛好家さん! 私について来て下さい!」


「どうしよう、理性では付いていきたいし本能が受け入れてるよぉ!」


「はよ行けチンピラ」


「あっはい……いやチンピラじゃねぇし!」


「……愉快な人達なんだな」


 俺達は騒がしくも、無事に臨時拠点へと撤退していった。


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