黒の餌食、突破口は何処へ
ヒーロー視点&??視点です
幻想が崩れ去ったのか、息を吹き返したはずのビル群は再び廃ビルへと変わっていた。
どうやら俺たちは、いつの間にか元の場所へと戻ってきたらしい。
――――いや、それよりもヴァル=ムービーの様子が明らかにおかしい。
エンジェルの攻撃で身体が消えたかと思えば、黒い繊維が溢れ出ている。
「【飛来天斬】」
俺は飛ぶ斬撃で繊維を切ろうとするも――――
「なっ……!」
斬撃は消えた。
まるで、元から何も無かったかのように。
「――――――――!!」
既にヴァル=ムービーの正気は失われており、辛うじて聞き取れた英語すらもノイズ音に塗り潰されており、全く判別がつかない。
「何ぼっ立ちしてる!」
ギィィィィンッッッ!!!
身体に衝撃が走る。
マヨ船長が庇ってくれたのか、後ろで轟音が鼓膜を劈く。
「ありがとう、マヨ船長」
視界も悪く、音も聞き取り辛い。
全ての攻撃が不意打ちに成り得るのか――――
「……マヨ船長?」
「おいおい、嘘だろ?!」
悪寒が背筋を這い上がる。
まだ【覚醒解放】を使って、まだギリギリ3分経過していなかったはずだ。
その上から、あの耐久ごともぎ取った?!
「……違うわ、バフが消されてる!」
【覚醒解放】も他のスキルも自分にバフをかけ、ステータスを強化するスキルだ。
もしそのスキルの効果を消された上で倒されたのだとしたら、マヨ船長が倒されたのにも納得が行く。
「……私も1度被弾しちゃった。たった1度だけね。それで、乙女パワーは消えちゃった」
「身体から生え並ぶ黒の繊維――――当たらない方が良さそうですね」
「はっ! 視覚も聴覚もジャミングされた状態でか? 冗談キツイぜ……!」
このままだと確実に全滅してしまう。
使うしかないか――――
「【神霊顕現】」
俺の背中から神霊が顕現する。
6本の腕を生やし、6本の剣を構える。
これ以上、誰も犠牲にさせない!
「――――――――!!」
無数の黒の繊維が襲いかかる。
神霊は全て叩き斬ろうと、目にも留まらぬ速さで剣を振り回す。
――――神霊が消えた。
「……は?」
黒い繊維――――
まさか、バフだけでなく力そのものを打ち消す性質があるのか?
「【亜空鏡】!」
ノブレスは【亜空鏡】を生成し、即座にヒーローの前へと飛び出した。
咄嗟に身体を押し当て、庇う。
そして――――
「ノブレス!」
ノブレスも黒の餌食となった。
「くっ……!」
なんてザマだ。
少しは強くなったと思っていたのに、誰も守れないのか。
それ所か、仲間に庇われるなんて……これじゃ足手まといじゃないか。
「【地盤粘土】」
雪だるまは地面を隆起させ、大岩を浮かび上がらせる。
勢い良く射出させるが、黒の繊維に触れた瞬間――――
大岩が止まった。
「こりゃ……詰みか?」
巨大な岩石でさえ、超速の斬撃でさえ、多重のバフでさえ、光輝なる力でさえ、乙女パワーでさえ、黒の繊維で打ち消されてしまう。
その上、常に視覚と聴覚がノイズで汚染される状況。
余りにも敗戦濃厚の戦闘であり、倒されるのも時間の問題だった。
――――そのはずだった。
ガンッ!
ふとヴァル=ムービーの巨大なテレビに衝撃が走る。
その瞬間、視覚と聴覚を覆っていたノイズが晴れ、周囲の状況を把握できるようになった。
あれは何処か遠くから狙撃されたものだった。
一体誰が――――
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ヒットしました」
廃ビルの上、とあるプレイヤーが戦場を覗き込んでいた。
その者は『静寂の長銃』の銃口を、ヴァル=ムービーに向けている。
「私はこのままバフ要因?」
「はい。このままお願いします」
「【聖戦賛美】」
その後ろでプレイヤー“鬼巫女”が目蓋を閉じ、祈りを捧げるような姿勢を取る。
するとプレイヤー“黒豆”の武器に、紫のオーラが灯った。
バンッッッッッッ!!!
そして、もう一発放つ。
ただ冷静に、黒豆はヴァル=ムービーの巨大なテレビに向かって狙撃し続ける。
その一撃が、ヒーロー達の突破口となる事を祈って。
黒豆&鬼巫女参上!
第二章以来の再登場です()




