栄華の映画
ヒーロー視点です
目的地に進んでいけば、周囲に多くのテレビが置かれていた。
最初に迷い込んだ時に見たテレビと同じ物。
俺達が1つのテレビに近付くと、ふと映像が流れる。
『魔王様、無礼を承知でお聞きします。かつて覇王は魔神と友好な関係であったと聞きます。どのような御方だったのですか?』
『快活な奴だった……とでも言おうか。その上で、あの魔神と対等に渡り合う強者でもあった』
『魔神と……ですか?』
『奴には赤き力が備わっている。魔力とは対と為す体力の怪物。奴だけが、其の友となれる存在だった』
『……もう1つ質問宜しいですか?』
『言ってみろ』
『何故、魔王様は魔神と敵対されたのですか?』
『単なる好奇心だ。もし、魔神の力を制御出来れば、どのような恩恵を得られるのだろうか……とな。それ以上は無い』
「魔王ね……」
エンジェルが何とも言えない表情を浮かべる。
常に余裕そうな彼女にしては珍しい様子だった。
「何か心当たりがあるのか?」
「いえ、私の知り合いに”まおう”ってプレイヤーが居るの。文字は平仮名でね。こんな偶然あるのね」
「漢字表記じゃなくて良かったな。どっちの魔王を指しているのか分からんくなる所だった」
俺がまだ出会っていないプレイヤーだろうか。
きっと、彼自身も魔王というNPCが登場するとは思ってもみなかっただろう。
設定上出てくる、過去のNPCなのが救いだな。
「赤き力が体力を指してるなら……青き力は魔力を指してるって事で良いのか?」
「そうだろうね。魔力の消費が無いのも、周囲に青い水晶が生えているお陰だと推測しているよ」
「今後は色に着目してみるのも良いかもな。世界観的に秘密が隠されてるかもしれない」
あまり注力してこなかったが、色はこの世界において重要な要素である可能性が出てきた。
確かに、雪だるまの言う通り、これから色に着目するのも良いだろう。
「にしても不思議なものだな。さっき流れたのは過去の映像か、古臭いがアタシは嫌いじゃないね」
「どうして、こんなにもテレビが置かれているのかしらね」
「そりゃ……あそこに例のボスが居るからじゃねぇか?」
ガシャン。
ガシャン。
ガシャン。
それを足音と呼ぶには機械の音が混じりすぎている。向こうから力無く歩き続けるはテレビ頭の機兵。
だが前回見た時より身体がボロボロになっており、痛々しい傷跡を覗かせていた。
「……We must protect the seal. We must protect the old king……(封印を守らなくては……旧王を守らなくては……)」
「誰か翻訳出来るか?」
「封印と……旧王を守る使命感に苛まれているわね」
「旧王……?」
こんな話を聞いた事がある。
魔神は器となる人物に封印されていると。
前回来た時では、1度魔神が出てきかけた所の映像を見た事がある。
その後で旧王と呼ばれる存在に封印されたのか……?
あくまで仮説だが、完全に魔神が出現していなかった現状を鑑みるに、後々誰かに封印を施したのは確実だろう。
「悪いが……俺達はその封印を解かなければならない。斬らせて貰うよ」
「Do you intend to resurrect that demon god……? Or will you become its vessel……? Either way, I cannot allow an intruder to live.(かの魔神を復活させるつもりか……それとも、貴様が器となるか……どちらにせよ、侵入者は生かしておけない)」
[クエストボスを発見しました]
[栄華機兵 ヴァル=ムービー]
「Be consumed by glory!(栄華に呑まれろ!)」
次の瞬間、周囲に置かれた無数のテレビから細長い剣が飛び出した。
かつてヴァル=ムービーが仕掛けた時とは異なり、自身の頭のテレビではなく、周囲のテレビを操作し襲いかかる。
「【亜空鏡】ッ!」
だがその刃が届く事は無い。
同じ数の鏡が出現し、刃が鏡を通る。
そして、無数の刃がヴァル=ムービーへと襲いかかった。
「My attack……!(私の攻撃を……!)」
「多少攻撃パターンが変わっていようが、容赦はしない。【飛来天斬】!」
無数のテレビが即座に積み重なる。
そして、飛ぶ斬撃を防がれてしまう。
「へぇ、そうやって防ぐのか。だったら、こいつは対処出来るのか? 【地盤粘土】」
雪だるまは『地母神大鋤』を地面に差し込んだ。
盛り上がり、ヴァル=ムービーの両側に巨大な岩の壁が出現する。
「This is nothing……!(この程度……!)」
ヴァル=ムービーは両手にテレビを収束させる。
それと同時に、岩の壁が勢い良くヴァル=ムービーを挟み込んだ。
「【疾風迅雷】【破竹ノ勢】――――」
「もう1度言おうか? 「だったら、こいつは対処出来るのか?」」
マヨ船長は自己バフをかけ、大きく駆け出した。
「【亜空鏡】」
それと同時に、前方へ【亜空鏡】を出現させた。
気が付けば、ヴァル=ムービーの目の前に運ばれている。
マヨ船長は、その頑強なテレビ頭を捉え――――
「――――ふんっ!」
ガッキィィィィィィンッッッ!!!
『解放の錨』を大きく振り下ろし、脳天をカチ割る。
ヴァル=ムービーは大きく仰け反るも、その隙を狙って俺は拳で殴り、遠くまで吹き飛ばした。
俺は敢えて『神霊聖剣』で斬らなかった。
何故なら――――
「オーライ♡」
そこに待ち構えていたのはエンジェルであり、その拳には乙女パワーが込められていた。
「【純愛正拳】ッ!」
【純愛正拳】を直撃したヴァル=ムービーは、何も出来ずに廃ビルへと衝突する。
ガラガラと音を掻き鳴らしながら、建物が崩れる。
一抹の静寂の後、その瓦礫の中からヴァル=ムービーが飛び出した。
「あれだけの攻撃を受けて、まだ立てるのね……」
一見すれば、もう動けるような身体ではない。
それでも、ヴァル=ムービーに内包された執念がゾンビの如く現世に蘇らせるのだ。
「Ah……O old king. I will fulfill my duty. I will let no one come near!(あぁ……旧王よ。私は使命を果たします。誰も近づけさせない!)」
ふと、周囲の景色が歪む。
気が付けば、そこは現代の世界だった。
気が付けば、そこは生き返っていた。
気が付けば、そこは栄華が戻っていた。
「I am the one who protects glory!(私は栄華を守る者だ!)」
過去の栄華、それはかつての夢であった。
文明という名の映画は、もう戻って来ない。
それを知って尚、ヴァル=ムービーは酔いしれていく。
[第二形態へ移行]
再戦ヴァル=ムービー……ファイッ!
再戦時でちょっと違う所は
エリアボス→クエストボス
映画機兵→栄華機兵
の表記になってます




