美しき戯れ
ヒーロー視点です
「マヨ船長さん、今回は宜しく♡」
「宜しく、エンジェル。改めて見るが……凄いな筋肉量」
「ふふっ、気が付いたかしら? この筋肉は乙女パワーを上手く使う為のものなのよ」
「……なぁヒーローって言ったか。『アマテラス社』の連中はどいつもこいつも個性が強過ぎる気がするんだが」
「全くだね。まるで嵐みたいだ」
赤月曰く、「そもそも『アマテラス社』は基本的に纏まりが無い。俺のような自由人が勝手にやってるだけだ」と言っていたが、その評価は正しいものだったと痛感している。
彼らにはリーダーが存在しない。
俺のような、ヌルハートのような、はたまた3勢力のような牽引する者が台頭していない。
それ故に、お互いが対等に会話出来る環境だったのだろう。
従う相手が存在しないからこそ、自分達の思うがまに行動している。
まさしく制御不能の変数達だ。
「どうやら、マトモなのは俺達だけのようだな」
「お前も中々愉快な格好してるけどな」
プレイヤー“雪だるま”は嘆く。
これでは単なる遠足だと。
緊張感が全く無い遠征になりそうだと。
それを雪だるまの着ぐるみを着たプレイヤーが宣っている。
「良いだろ格好は別に……苦労人ポジな事には変わらん」
「まぁ、気持ちは分かるよ」
ふと思い返せば、『ドリュアス社』の団長として皆を牽引するようなプレイばっかしてきていた。
要するに、苦労人ポジが型に付いてしまっている。
自由な『アマテラス社』が羨ましい限りだ。
「そう言えば、お前は執政官って言ってたな。他に誰が居るんだ?」
「前提として、執政官は4人居る。俺と、“雪華”と、“あやとり”――――後は“ノブレス”って奴だ」
雪華は自分のやるべき事をテキパキ行う「出来る女性」という印象を受けた。
あやとりは同じ猛者として、彼女の実力を認めている。
雪だるまは……見た目は愉快そうだが、案外苦労人気質のある人だと親近感を覚えている。
ノブレスはあまり聞いた事の無い名前だな。
「ノブレスはどんな人なんだ?」
「所謂ナルシストって奴だ。強い癖に、戦いにも美しさを求めるから、その隙を突かれて危ない目に遭う事が多い」
「なる程、その人も個性が強いようだ」
戦いに美しいも何も無いとは思うが、わたあめ大将軍のような戦闘の派手さを求めるプレイヤーが居るのも事実。
戦闘における美の追求か――――
俺には分からない世界だな。
「――――ん?」
ふと遠くで物音が響く。
誰かが戦闘しているのだろうか。
「見よ! この美しい輝きを! 【閃光花火】ッ!」
「キェェェェェ!!!」
そこには、今まさに狂乱化ボスと激しい戦闘を繰り広げているノブレスが居た。
[冥灯蜘蛛 アニマ=ドミナ【狂乱】]
「居た。あいつがノブレスだ」
「見れば分かる」
ノブレスは自身を中心として弾幕のように光弾を連射し、アニマ=ドミナを翻弄する。
だが腐っても狂乱化ボス、フィールド中を動き回り蒼き刃がノブレスを襲う。
「待った」
ふと雪だるまが静止をかける。
暗に「あの程度でやられる奴じゃない」と言っているようだった。
「――――【亜空鏡】」
真下に鏡が生成される。
ノブレスは鏡の中に吸い込まれる様に落下していき、アニマ=ドミナの攻撃を回避する。
そして次の瞬間――――
「【閃光花火】ッ!」
いつの間にか、ノブレスはアニマ=ドミナの背後に出現していた。
回避の許さぬゼロ距離射撃。
光弾幕の全弾命中により、アニマ=ドミナの体力は底尽きてしまった。
[冥灯蜘蛛 アニマ=ドミナ【狂乱】を倒しました]
[『冥灯魂衣』を入手しました]
[『青魂冥灯環』を入手しました]
[『魔水晶』を入手しました]
[20000HGを入手しました]
「転移ゲートみたいなものだな」
【亜空鏡】に通った物は何者であろうと、もう1つの【亜空鏡】に転移させる事が可能性なのだ。
例えば自分自身や相手、更には【閃光花火】の光弾幕でさえも【亜空鏡】の対象であり、転移可能となる。
これこそが、彼が執政官として選ばれた要因の1つとも言える。
「おや、私の劇に観客がいらっしゃいましたか」
ノブレスは【亜空鏡】を通して目の前に出現する。
そして、丁寧にお辞儀した。
「お初にお目にかかります。私、ノブレスと申します。貴方様の美しき旅に、ご同行させては下さいませんか?」
「美しき……旅ぃ?」
「通訳すると、「パーティに入りたい」って事だな」
「入れちゃっても良いんじゃないかしら?」
「――――そうだね、実力は備わっているようだ」
[プレイヤー ノブレスからパーティ申請を送られました]
[承認/拒否]
「感謝します。異邦の長よ」
ノブレスは透き通った声色で感謝を述べる。
エンジェルとは違う異色な気配に困惑している様子を感じ取り、雪だるまはため息を吐く。
「いつもそうだが、仰々し過ぎるんだよ、お前は」
「おや、雪だるま様もいらっしゃったのですね」
「……俺達はヴァル=ムービーって奴を狩りに来ている。何か知らねぇか?」
「ヴァル=ムービー様ですか……申し訳ありません。余りご存知の無い方ですね。何せ、先程まで蜘蛛様と戯れておりましたから」
「「戯れ」……まぁ良いか」
あの激闘を戯れと呼称しても良いのか甚だ疑問だが、彼にとっては戦闘も美の一環なのだろう。
彼の表現に戸惑いながらも、目的地の場所まで歩みを進めていった。
これにて全執政官登場完了!




