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状態異常使い、敵を溶かす。~状態異常ビルドのVRMMO~  作者: MeはCat
【第七章】夢の跡地【別視点】

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金の切れ目が縁の切れ目

三人称視点です

 一方その頃、また別の場所では“ヒーロー”と“マヨ船長”が合流を果たしていた。


「マヨ船長、お前は『セイレーン社』のプレイヤーにしては非常に丁寧な人物だと記憶しているよ」


「そう思って貰えて光栄だ。だが、突然改まってどうしたんだい?」


 ヒーローは笑顔を崩さないままマヨ船長を()()()()()


「お前は“無害なクマ”の遺物を持っているな?」


「その件か。“酒池肉林”が無害なクマをキルしちまったから心配なんだろ? 安心してくれ、ちゃんとアタシが取り返してやったさ」


「それは安心だね。そう、それは俺の仲間の大切な物なんだ。返して欲しいのだが」


 それを聞いたマヨ船長は顔色を全く変えず、こう答えた。


「10万HGだ」


「………………」


 確かにマヨ船長は『セイレーン社』の中では穏健派であり、彼らの中では()()()マシな部類のプレイヤーである。

 それでも、彼女は『セイレーン社』のプレイヤーに違いは無い。

 それ故に、自身が優位となった時には容赦が無いのだ。


「俺の聞き間違えかな? 今、お金を請求されたような気がしたんだけど」


「10万HGだ」


「いやいや、仮にも共同戦線を張った者同士じゃないか」


「……分かった。9万HGで手を打とう。お友達価格という奴だな」


「――――今、俺がここでキルしたって良いんだぞ?」


「もう『金庫』に入れちゃったけど良いのか?」


「くっ……こいつ!」


 ヒーローは苦虫を嚙み潰したような表情で睨む。

 それと同時に、マヨ船長はヘラヘラとした表情で――――

 心無しか小馬鹿にしたような表情で見やる。


「ヒーロー、やっぱり『セイレーン社』って信用ならなかったんじゃ……」


 プレイヤー“わたあめ大将軍”の召喚したゴーレム達に囲まれてもなお、マヨ船長は余裕を崩さない。

 これでも『セイレーン社』の()3勢力の内の1つ『荒波海賊団』船長だったのだ。


「良く良く考えてみたまえ。やろうと思えば、このままデスポーンしてトンズラしたって良かったんだ」


 死んでも、失うのは現在の遺物だけ。

 彼らが喉から手が出る程欲しい"無害なクマ"の遺物は落とさない。

 何故なら『金庫』に入れた遺物はキルされても保管されたままなのだ。


 この無害なクマが装備していた遺物さえあれば、時間はかかるだろうが元の遺物を回収する事も出来た。


 だが、それをせず、交渉に持ち込んだ。

 これがマヨ船長流の()()である。


「だけど、私の良心が「返した方が良い」と告げ、私の悪心が「ただであげるのは癪」だと告げたんだ。だから金を取る事にした」


「ぐぬぬ……!」


「でも良いじゃないか。たった9万HGで大事な遺物が帰って来るんだから」


「――――良いだろう。9万HGくらいくれてやる」


「ヒーロー?!」


「良く言ったヒーロー。「共同戦線を張った者同士」、私もあるべき場所に返せて嬉しく思うよ」


 マヨ船長は心にも無い事を言いつつも、ちゃんと取引を済ませる。


[プレイヤー マヨ船長に90000HGを送金しました]

[プレイヤー マヨ船長から遺物を譲渡されました]


「……後で覚えてろよ」


「何の話だっけ――――」

「【飛来天斬】ッ!」


「あっ――――ぶな! 何するんだい!」


 ヒーローの飛ぶ斬撃をマヨ船長は間一髪で避ける。

 彼女は常に不意打ちを警戒していたとは言え、もし当たれば本当に全ロスとなっていた。

 その事実から、マヨ船長の心の内では心臓バクバクになっていた。


「『夢の跡地』に居る内は斬らないでいてやる。1歩でも出たら敵同士だからな」


「全く、ちょっと魔が差しただけだと言うのに厳しいねぇ」


()()()()?」


(口笛を吹く音)


 ヒーローは溜息を吐く。

 確かに彼女は戦争で大いに活躍してくれていた。

 その代償がこの程度なら、まだ良い方なのかもしれない。


「あら、ここ結構プレイヤーが居るのね」


 ふと、ヒーローの後方から声が聞こえる。

 振り返れば、筋骨隆々の大男――――

 否、オカマが立っていた。


 エンジェルは天使の魔法少女の服装をキツキツで着こなしており、女性声と男性声が混ざったような、ねっとりとした声色が脳裏に張り付く。


「き、君は一体……」


「正義の味方♡」


「えっと……エンジェルさん? 顔近くないですか?」


「あらやだ、距離感見誤っちゃった」


 この場には既に多くのプレイヤーが集まっているにも関わらず、ここまで個性の強いプレイヤーは何処をさがしても彼女……そう、彼女だけだった。


「私ね、エリア中を駆け回って結構情報持ってるの。せっかくだし、共有しちゃうわね」


「それは有り難い。是非とも聞かせてくれ」


 改めてエンジェルは椅子に座り、出されたお茶を啜る。


「まずは大前提。ここ『夢の跡地』から脱出する為には、あの大穴の中に居る大ボスを倒さなければならない。ここまでは分かっているわね?」


「あぁ、それは皆の共通認識だ。だからこうして、プレイヤーを集めている」


 周りを見渡してみれば、陣営を問わず多くのプレイヤーが集まっている。

 先程まで死闘を繰り広げていた“狩人”と“漁師”は互いに談笑をしており、『彼岸会』の会長“亡霊マダム”は先んじて降伏した事で一時的に協力すると宣言してくれている。

 『ボレアス社』の執政官である“雪華”と“雪だるま”も『ゆるゆるポーション屋』から取り寄せた特殊なポーションを配っている。

 『アマテラス社』も“クワバラ料理人”による料理バフの提供や、“蛇者”による周囲の警護なども抜かりは無い。


 皆が手を取り合い、強大な相手に向かって結束を強め、戦おうとしている。

 全員が居る訳では無いだろうが、既に大部分が集まってきていると言っても良い。


「それでね、探りを入れる為に、あの大穴へと近付いてみたの。そしたら――――弾かれたわ」


「弾かれた?」


「何か条件を達成しないと、通れないようになってるわね」


 エンジェル曰く、穴の上を覆い被さるように透明なバリアが張ってあるのだとか。


 そして、何かしらの条件というのは――――


「その上で何だけど……ここって狂乱化ボスしか居ないじゃない? でも1体だけ、()()のボスが居たの」


「普通のボス……ちなみに風貌は?」


「頭が()()()の機兵ね」


「……っ!」


 かつて1度『夢の跡地』に迷い込んだ時、ヒーロー達の前に立ち塞がったのが、あのヴァル=ムービーだった。


「名前はヴァル=ムービー、彼は()()でこのように繰り返していた。「封印を守らなければ」と」


 つまり、ヴァル=ムービーを倒さなければ大穴に突入する事すら叶わないという事だ。

 彼の者からすれば役割を全うしているだけだろうが、この際四の五の言ってられない。

 邪魔をするなら全力を持って倒しに行くのみ。


「皆、話は聞いたか? ヴァル=ムービーを討伐しに行きたい者は俺の下へ集まってくれ」


 戦いたいと願うプレイヤーは多く、各陣営からも実力者が参戦を希望してくれていた。

 『ドリュアス社』からは“ヒーロー”。

 『アマテラス社』からは“エンジェル”。

 『ボレアス社』からは“雪だるま”。

 『セイレーン社』からは”マヨ船長”がヴァル=ムービーの討伐に参加する事となった。


「待った、アタシも行くのかい?」


「お前は強制参加だ」


「9万HGくらいの働きはするかな」


 ヒーローはマヨ船長の発言にイラッとしながらも、ここでは鬱憤を抑える事にした。


『セイレーン社』は蛮行上等な所あるからなぁ……

勝てば良かろうなのだぁ!


そんなんだからスカーフとバンダナに逃げられるんだよ()

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