真の猛者
爆弾愛好家視点です
ひとまずは“偽BAN”と呼称するとして――――
偽BANは『星断の光子剣』から【光刃】を伸ばす。
【光刃】は自由に伸びる距離を操作可能であり、伸びる距離は無限。
言ってしまえば、ビームの付け根を振り回しているような無法さを誇るのが、この遺物の特徴である。
ブォンッ!
【光刃】の横薙ぎにより、廃ビルは次々に崩れていく。
「【波李威】!」
その光景を見ても夜露死苦は退かず、【光刃】に合わせて金属バットの遺物『鉄塊打者』で叩き潰す。
すると、衝撃波を放ち【光刃】を弾き返した。
「嘘だろ?! あの攻撃防げるのかよ!」
「言ったろ、「ぶっ飛ばしてやる」ってな。言葉の通りだ」
夜露死苦は偽BANに向かって駆け出し、『鉄塊打者』を振り下ろそうとする。
次の瞬間、偽BANの片手には『風魔掃除機』が握られていた。
「ちっ……!」
前方に【渦巻】が発生し、夜露死苦を吹き飛ばす。
寸前の所で『鉄塊打者』の攻撃は届かない。
「――――隙を晒しましたね」
そう呟くのはあやとり。
かつてのトーナメントの時のように、上空から無数の糸を垂らす。
「【傀儡糸】」
その糸に当たった偽BANは、自分の意思で身体を動かす事叶わず。
彼女の支配によって、1歩、また1歩と後退していく。
スパッ――――
「【切断糸】」
そして、偽BANの首が落ちる。
かつてのトーナメント戦とは異なり、余りに呆気なく勝負が付いた。
あやとりの戦術は【傀儡糸】で相手を操り、強制的に移動させて【切断糸】で切り落とすというもの。
【傀儡糸】に当たれば最後、相手は何も出来ず倒れる姿を見るだけとなるのだ。
だが、だからと言って避けようにも【切断糸】が罠のように張り巡らされており、触れたら勿論、大抵のプレイヤーが即死する火力を誇る。
何とか【傀儡糸】と【切断糸】を掻い潜ったとしても、【守護糸】によって攻撃が通らない。
彼女にとっては、必勝の戦法であった。
「やっぱり、貴方は偽物ですね……」
その戦法を初めて打ち破ったのが、BANである。
目の前の偽りの猛者などではない、真の猛者。
偽物が本物に勝る術無し。
性能という1点においては、本物のような再現度を誇るが、BANの本領は思考や駆け引きの強さである。
それすら模造出来ない存在が、本物に届きうる事は無い。
「偽物とは言え、あのBANを瞬殺すんのか……流石だな」
「ありがとうございます」
やっぱり、オドオドした様子は演技で、こちらが素の性格なのだろう。
でもあれは悪意を持ち騙す為の所作ではなく、1つの戦略として不意打ち戦法を使っていただけに過ぎない。
言ってしまえば、勝つ為には手段を選ばないだけなのだ。
――――人物像を改めないといけないのかもな。
「そういやさ、お前らって同じ陣営のプレイヤーなのか?」
「俺達は北の『ボレアス社』のもんだ。そういうてめぇらは、何処の陣営のもんだ?」
「私と爆弾愛好家さんは東の『アマテラス社』のプレイヤーです」
「『アマテラス社』か……そういや、”赤月”がうちの所でポーション屋開いてたな。ありゃマジで世話になってるぜ」
「ポーション屋?」
「……いや、何でそれは知らねぇんだよ」
思えば、最近赤月と出会ってないんだよな。
あいつは勝手に何処かにブラブラと歩くタイプだからか、出会う事すら珍しい。
つーか、ポーション屋って……あいつ見ない間に、一体何やってたんだよ……。
「夜露死苦さん、『アマテラス社』は余程の事が無い限り、基本的に纏まりが無い人達なので……」
「それもそっか、つい『ボレアス社』の基準で話してたわ」
木こりちゃんの話に嘘偽りは無い。
『アマテラス社』は本当に自由人しか居ないから、リーダーとかも居ないんよな。
きっと、この先もリーダーが出てくる事も無いだろ。
今回戦争に参加したのは、『セイレーン社』への鬱憤勢とPVP勢が合致した結果、あれだけ集合出来ただけだからな。
それでも人数不利だったし。
「夜露死苦さんも……パーティに加わりませんか?」
「んじゃお言葉に甘えて」
[プレイヤー 夜露死苦からパーティ申請を送られました]
[承認/拒否]
木こりちゃんが承認を押す。
徐々に味方が増えて来たな。
この調子で、人を集めたい所だが――――
「皆さん、向こうの方騒がしく無いですか?」
「こいつぁ……明らかに戦闘してる音だな」
ふと遠くの方から轟音が響き渡る。
かなり派手な戦闘をしているみたいだ。
「ならさっさと行こうぜ! 全速前進!」
「待ちやがれ! 何でてめぇが先導してんだ!」
「とても騒がしい人達ですね」
「あはは……」
あやとりは勝つ為には手段を選ばない子なだけで、悪い顔して見下すような女の子では無いです
それはそれでアリだな………




