偽りの猛者
爆弾愛好家視点です
「エンジェルが出会ったプレイヤーって……まさかのお前かよ」
「その……お久しぶりです」
教えられた場所に向った先には“あやとり”が居た。
バトルロワイヤル時はオドオドとしていた彼女だったが、今では落ち着いた様子となっており、冷静に狂乱化ボスをミンチにしている。
彼女はトーナメントまで駆け上がった猛者の1人だ。
その証拠に、彼女は1歩も動いていない。
それなのに、狂乱化ボスがバタバタと倒れて逝く。
「お知り合いなんですか?」
「あぁ、バトルロワイヤルで俺を即ミンチにしてきたんだ」
「そう言えば、そんなお話していましたね」
あれは悲しい事件だった……。
ちょっと可愛い子が居たから近付いてみたら、物理的に首が飛んでたもんな。
「あやとりさん、私達とパーティ組みませんか? こんな状況ですし」
「願ってもないです。一緒に行動しましょう」
[プレイヤー あやとりからパーティ申請を送られました]
[承認/拒否]
木こりは承認を押す。
俺達としても、猛者が味方になるのは熱い。
一時は敵対したが、今回は共同戦線を張れそうだ。
「んで、結局どうすればここから脱出出来るんだ?」
「一番手っ取り早いのは、私達を転移させた主を倒す事でしょうが……」
ここから出るなら、一瞬俺達を見ていた羊のような雲のような化け物を倒すしか無いだろう。
そして、奴が居る場所は十中八九――――
あの大穴に違いない。
この瞬間も圧力を感じる。
今までのボスとは格が違う。
言うなればラスボスのような威圧感だ。
「あいつを倒すにしても、人を集めないとか。あれ絶対レイドボスの類だろ」
「全プレイヤーが、文字通り死力を尽くさなければ勝てない相手……という事ですね」
ついさっきまで戦争モードで盛り上がってただろうし、皆ログインしていないって事も無いだろう。
きっと探せば、俺達のような集まったプレイヤー達も居るはずだ。
そいつらと合流を果たす。
ドゴンッッッ!!
少し遠くから戦闘音が聞こえる。
その音の先に向かうと、そこには金属バットの遺物を持ったリーゼントの男が狂乱化ボスを殴り倒していた。
「……あん? 何ガン付けてんだ、こら」
プレイヤー“夜露死苦”。
明らかに不良漫画から出てきたような風貌と口調をしており、背中にも『夜露死苦』と刺繍が施されたマントを羽織っていた。
「お、あやとり嬢じゃねぇか!」
「……お久しぶりです」
「流石は猛者、顔も広いんだな」
もしくは、同じ陣営の人とかなのかな。
それなら知り合いなのにも納得が行く。
「ったりめぇよ、あやとり嬢にかかれば、てめぇのようなチャラ男もミンチだぜ?」
「誰がチャラ男だよ?! つーかミンチは経験済みだよ」
いいか、あくまで俺は木こりちゃん単推しなんだ。
他の女に色目使う訳――――
「爆弾愛好家さん……私にナンパしてきましたよね」
「あ〜! 聞こえな〜い! 何も聞こえな〜い!」
木こりちゃんの目の前で何て事を言うんだ!
あぁ違うんだ木こりちゃん……これは、その、魔が差しただけというか何というか……あっ、凄い呆れられてる気がする!
「もう、爆弾愛好家さん。女遊びが過ぎると、軽薄な男として見られてしまいますよ」
「はい、すみません……」
こういう時は素直に謝るに限る。
何処かで名誉挽回しなければ、でなければ木こりちゃんの好感度が右肩下がりになったままだ。
「……んぁ? 何だ、ありゃ」
ふと夜露死苦が何かに気が付く。
列車だ。
空中から亀裂が入り、その奥から列車が宙を舞う。
そして、その中から信じられない存在が表れた。
「あれは……BAN――――じゃ無さそうだな」
俺達の目の前に表れた存在は、一瞬BANのように思えた。
だが、身体には青い水晶が生えており、饒舌な会話もして来ない。
まるでプレイヤーの情報を記憶し、それを模造しているかのようだった。
「プレイヤーの複製体――――」
「危ないっ!」
ブォンッ!
俺は咄嗟に木こりちゃんを庇う。
元居た場所には、焼け焦げた切断跡のみが残されていた。
「爆弾愛好家さん、ありがとうございます!」
「良いって事よ!」
よーし、格好良い所見せれた!
マジでありがとう、BAN!
偽物だけど。
「相手が猛者の偽物だろうが、ぶっ飛ばしてやるよ!」
夜露死苦の宣言と共に、俺達は各々の遺物を構え、戦闘を開始する。
やっとトーナメント以外であやとりを登場させれた……
決して忘れてた訳ではないです
出すタイミングが無かっただけです!
サクシャウソツカナイ




