偉そうな面接
八百屋(万事屋)視点です。
遠くから彼を観察していたけど、やはりプレイングスキルは異次元だった。
どんな攻撃も軽々と躱し、的確に敵の脳天を撃ち抜く。
その動きに一切の無駄が無く、ヘッドショットの精度は、むしろ見ていて清々しい。
時には危機に陥るも、咄嗟の機転と反応速度で何度も解決してしまう。
まさしく、超人。
本当にルーキーか怪しいくらいさ。
いつも反射神経で動いているんじゃないだろうね。
見れば見るほど、底が知れない。
「————で、いつまで付いて来るんだ?」
「あ、やっぱり気付いてたのね」
「泳がしてただけだ。それなのに、一向に攻撃してこないから逆に困ってた所だ」
「やだなぁ~僕に戦闘の意思は無いよ。というか、商人プレイヤーだし」
そして当然、僕の尾行も気が付てる始末。
やはり、僕の眼に狂いは無かった。
こいつは、大物になる予感がする!
「ならなんで付いて来る」
「ずっと君の事見ていたんだけどさ、見た所凄い強いと思ってね。僕が所属してるギャングに推薦出来ないかと思って」
「ギャングに……推薦だと?」
朱雀は僅かに眉を動かした。
意外な提案だと思ったのか、少し反応に困っているようだ。
「そ、人材なんてあればある程良いからね。君が良ければだけど、もし入ってくれたら戦力になるかもしれない。どうする?」
「入る」
「即答?!」
余りにも迷いのない返答に、思わず素っ頓狂な声が出た。
摑み所の無い奴だな……扱い辛い。
それでも実力は確かなんだ、きっとボスも喜ぶはずさ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ほう、君が……噂の朱雀か」
薄暗いアジトの最奥。
玉座に仰々しく座るは我らがボスの”ヌルライフ”。
ぶっちゃけ独裁者みたいな奴だけど、部下に横暴な事はしない。
むしろ、敵対者の心を完全に折るタイプの人さ。
「あぁ、俺が朱雀だ。凄い偉そうな奴だな」
「ちょっ!」
僕は思わず変な声を上げた。
君、本当にこのギャングに入るつもりあるのかい?
初対面のボスに向かって、その第一声はさすがにどうなんだ。
ここはもう少し、こう、穏便にだね————
「……これは済まない、実際に偉そうにしているだけだ。偉いからな」
そういう問題?
「”八百屋”のオススメでこのギャングへ入る事にした。宜しく」
彼も彼で、緊張も遠慮も見えない。
この場の空気に全く呑まれていないんだ。
「……いや、我々が「宜しく」と言うのは、君がある質問に答えてからだ」
「面接があるのか」
「軽く、だがな」
ヌルライフは玉座に肘を預け、朱雀を値踏みするように見下ろす。
その視線には、威圧と興味が混じっているような気がした。
「君はこのギャング入るというのなら、我々に何をもたらしてくれる?」
……あーあ。
ボスも人が悪い。
何も知らない単なる新人に「何が出来る」って問いかけるなんて。
何を語ろうと、所詮はルーキーの戯言として片付けられるだろう。
力を誇れば増長した馬鹿に見えるし、謙遜すれば凡庸だと思われる。
これは……流石に駄目かな?
せっかく連れてきたけど、ここで終わりかもしれない。
一抹の沈黙の後、朱雀は口を開いた。
「お前を、もっと偉そうに出来る」
一瞬、空気が止まった。
あまりにも真っ直ぐで、あまりにも大きすぎる物言い。
ヌルライフですら虚を突かれたように目を見開き、数秒だけ言葉を失う。
広間にいた他の連中も、息を呑んだまま固まっていた。
そして————
「ふはははははは!!! ここまで大口を叩いた奴を見るのは初めてだ!」
次の瞬間、ボスは腹の底から愉快そうに笑い出した。
「お前は偉さに重きを置いてそうだったからな。それとも、何の偉くもない地べたの方がいいのか?」
「否、私が狙うは天下のみだ。そこまで言うのなら、実力で示す事だな」
「言われなくとも、そうしてみせる」
そうして朱雀は、もう話は終わったと言わんばかりに踵を返し、この場を後にしようとする。
「ちょ、僕を置いていかないでくれよ!」
慌てて声を上げ、僕もその背中を追いかけていった。




