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状態異常使い、敵を溶かす。~状態異常ビルドのVRMMO~  作者: MeはCat
【第六章】厄災と動乱、その奔流

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【動乱】リビング・デット

『あちあち熱原』


 ここは『あまい森』の東方面、そして『ぽかぽか大草原』の南方面に位置する場所。

 サバンナ地帯である『あちあち熱原』は非常に開けた地形となっている。

 その為、遠くのモンスターも容易に視認する事が出来る。


「……なぁヒーロー、俺達の相手は『セイレーン社』、それも主に『黒潮組』の連中だったはずだよな」


「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉ……!」


 遠くからゾロゾロと歩み寄るは()()の群れだった。

 次なる獲物を求めるように、進軍を続けている。

 それを見た『ドリュアス社』プレイヤー達はやる気に満ちており、戦闘開始の合図を今か今かと待ち侘びている。


「よく見ればゾンビ達の後方からプレイヤー達も歩いて来ているね」


「ゾンビを肉壁にしてる訳だ」


 あくまでゾンビは数合わせ。

 プレイヤーのような連携を知らぬ雑兵に他ならない。

 赤月は舌なめずりをしながら前へ出ようとするも、ふとヒーローに止められる。


「あの部隊は僕達に任せてくれないか?」


「なんだ、せっかく俺の拳銃が火を噴く所だってのに」


「赤月は個別で、東の方面から攻めて欲しい」


「奇襲係って奴か?」


「というより、奇襲()()係だね。僕の勘だけど、あちら側の性格なら2つの部隊で挟み撃ちしてくると思うんだ」


 ヒーロー曰く、自分達が目の前のゾンビ軍団に気を取られている内に、もう1つの部隊が東から北上し、横から攻撃を差し込む可能性が高いのだそう。

 赤月の役目はその部隊を妨害する事。

 もし予測が外れて来ていなかったら、そのまま本拠地に進軍すればいい。


「良し、請け負った。きちんと潰してやるぜ」


 赤月はそう言って、姿が掻き消えた。


 ヒーローは一瞬安心したような表情を浮かべ、改めて目の前の脅威を見据える。

 それと同時に、グリムが天から舞い降りた。


「やるか、ヒーロー」


「あぁ、戦闘開始だ!」


「「「「「「了解!」」」」」」


 それを聞いたグリムはニヤリと笑みを浮かべて飛び回る。

 『ドリュアス社』は一斉に遺物を取り出して、かのゾンビ軍団へと突撃していった。


「往け、儂の可愛い屍兵よ! 全てを踏み鳴らすのじゃ!」


 それを見たプレイヤー“やぶ医者”は「受けて立つ」と言わんばかりに、無数のゾンビ軍団を前進させる。


「【灼熱滅却】ッ!」


 グリムは前方を灼熱で焼き払う。

 ゾンビ軍団は呻き声を挙げて次々と倒れる――――

 はずだった。


「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉ……!」


 ゾンビが――――

 ()()した。

 焼け尽くす刹那、ゾンビ1体が2体に、2体が4体へと数を増やしていく。


 やぶ医者の持つロザリオ型の遺物『異教徒ノ逆十字』に秘められた【屍人ノ供物】。

 召喚された屍兵が死亡した場合、分裂を起こす。

 分裂した場合、その屍兵のステータスが半分になるものの、肉壁の軍隊を求めるならば分裂した方が良い。

 戦争が始まる前、やぶ医者は何度も何度も屍兵を殺して数を増やしたのだ。


 屍兵が存在する場合、自動で魔力を消費する。

 そして屍兵を消すには、やぶ医者自身の魔力切れしか方法は無い。


「調子良く派手に攻撃しちゃってるようだね。おもしろっ」


 プレイヤー“くるくる星人”は嗤う。

 『ドリュアス社』の攻撃は、『セイレーン社』への戦力提供に他ならない。

 自分達の残存兵力が増すばかりであった。


「油断は禁物。相手はヒーローだ」


 プレイヤー“クラブ”は警戒を怠らない。

 例え増え続けるゾンビ軍団が居るとしても、この程度でヒーローが止まるとは思えなかったのだ。


「――――【堅固防御】ッ!」


 突如としてクラブは飛び上がり、盾の遺物『蟹殻盾』にて迫りくる()を受け流した。


「ヒーロー?! 儂の屍兵を無視して来たのか!」


「こういうのは、本体を潰せばゲームセットだろう?」


「……そうならない為に俺達が居る」


 クラブは片手に盾、もう一方の片手に小刀を持っている。

 この『Relics Online』において、武器遺物を2つ持つ事は珍しくは無い。

 ただし、クラブのように2つ()()()異なる遺物を持つプレイヤーは非常に珍しい。


「オレっちも忘れて貰っちゃ困るよ!」


 くるくる星人がヒーローに向かって飛び出した。

 彼はガントレットの形をした遺物『蝦蛄拳甲』を両手に装備しており、その拳がヒーローを捉える。


「【閃泡撃】!」


 ――――ただし、その拳がヒーローに届く事は無い。


 いつの間にか、岩身体をしたゴーレムが目の前を立ち塞がっていた。

 高威力の一撃を喰らったゴーレムは身体が崩れるも、その奥から()()が放たれる。


「【飛来天斬】」


「【堅固防御】」


 飛ぶ斬撃は寸前の所で防がれるも、ヒーローは次の攻撃の準備をしていた。


「させるか! 【不可知斬】ッ!」


 一見、クラブの持つ小刀のリーチではヒーローには届かないように思えた。

 それでも、ヒーローは類稀なる直感により、()()を相殺するように剣を振るう。


 ガキンッッッッ!


 その小刀と剣が触れていないのにも関わらず、金属音が辺りに響いた。

 攻撃の当たり判定が、見た目よりも長くなっている。


「ちっ……これを防ぐか」


「見えない刃って所だね」


 盾による防御性能に、見えない刃によるリーチ詐欺。

 厄介さだけなら、猛者にも届きうる強者だと、ヒーローは判断した。

 この者を無視してやぶ医者を倒すのは至難の業だろう。


「大丈夫? ヒーロー」


「うん、問題無いよ」


 わたあめ大将軍が駆けつける。

 先程のゴーレムは彼女が召喚した物。

 もし彼女のゴーレムが割って入らなければ、【蝦蛄拳】がヒーローに直撃していた可能性があった。

 並大抵の攻撃を防ぐ強固なゴーレムが、あの強烈な一撃によって容易に砕け散ったのだ。

 当たればまず即死と考えても良い。


「他の皆は?」


「ゾンビの足止めだね。あれが『ルナ街』方面に流れ込んだら大変だもん」


「なら、さっさと片付けないとね」


「強気な発言じゃなヒーロー。ならば儂らがその意気を挫き、無惨に葬ってやる!」


 プレイヤー“やぶ医者”率いる『セイレーン社』。

 残存兵力3名と屍兵1232名。


 プレイヤー“ヒーロー”率いる『ドリュアス社』。

 残存兵力325名。


 これより、戦場は激化を迎える。


「オレっちに力を!【水球槽】!」


 くるくる星人の身体に水が纏わり付く。

 次第に水の球体が形成され、彼は水槽の中に居るように漂っている。


「そんな状態でヒーローの攻撃を避けられるの?」


「「避ける」? お前、()()の力を知らないな?」


 蝦蛄のパンチは弾丸並みに速く、プロボクサー顔負けの威力を放つ。

 更に水中で攻撃を加えれば気泡が生まれ、その泡が弾けるエネルギーで発光する事もあるという。


「まさか……! わたあめ大将軍っ!」


「【閃泡撃】ッ!」


「えっ――――」


 ふと、水球前方に閃光が走る。

 次の瞬間、まるで大砲のような威力の拳が――――


 屍兵と『ドリュアス社』プレイヤー達数名を塵と化した。


「――――フルヒットならず、か。庇うとは思ってたけど、オレっちの攻撃を掠るだけで済むとはね」


「ヒーロー?!」


 一撃。

 たった一撃で戦場に()()が刻まれた。

 その場に残されたのは、地面が抉れた跡地のみ。


 咄嗟にヒーローはわたあめ大将軍を庇ったものの、当たり所が良かったのか、ギリギリ体力が残った。

 このゲームのダメージは全部位一律ではなく、攻撃が当たった部位や場所によってダメージが異なる。

 心臓部分よりも、腕や足などの方がダメージ量が微妙に少ないのだ。


 その()()な差異が、ヒーローを救った。


「今が勝機! 畳み掛けるぞ!」


「おうよ!」


 それでも手負いな事には変わらず、攻撃を与えれば誰でも倒せる体力しか残っていない。


「【不可知斬】ッ!」


 見えない刃がヒーローに迫る。


「――――何処見てるんだ?」











「がはっ……何……だ……?」









 次の瞬間――――

 斬られていたのは、クラブとくるくる星人の方だった。

 彼らは何が起きたのか全く分からないまま、そのままポリゴンと化して消えていった。


「なっ……!」


 やぶ医者は唖然としていた。

 何かしらの反撃を喰らって彼らが倒れた事は、辛うじて理解出来る。


 ただ――――

 見えなかった。


 クラブの【不可知斬】のように見えない斬撃ではない。

 余りにも攻撃が速すぎて、太刀筋が追い付けないのだ。


「――――【神霊顕現】」


 ヒーローの背後から、神霊が召喚される。

 その神霊から生える複数の腕からは剣が握られており、近付く者全てを切伏せると言わんばかりの威圧感を放つ。

 この【神霊顕現】は普通に発動するだけではなく、カウンターとして発動させる事も可能だったのだ。


「ちっ……ここで切って来るか……!」


 それを見たやぶ医者は、思わず舌打ちをする。

 クラブが倒された以上、くるくる星人だけでは彼を止められはしない。


「屍兵よ、戻れ! 【再起融合】!」


 無数のゾンビは分裂した後の姿であり、元々は1つのゾンビであった。

 分裂した後のゾンビのステータスは、元々の半分として生まれ落ちる。

 逆に言えば、分裂したゾンビを元の1体に戻せば、圧倒的なステータスのゾンビが誕生するのだ。


「余り使いたく無かったが仕方ない……この屍兵をもって、その切り札を――――」


 一刀両断。


「……は?」


 長台詞すら彼にとっては大きな隙となる。

 例え強大なゾンビを従えようとも、動かされる前に斬ってしまえば関係無い。


 圧倒的なステータスには圧倒的理不尽を。

 だからこそ、彼は()()なのである。


やはりフィジカル……フィジカルは全てを解決する……!

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