【動乱】突然の奇襲
『シルバー砂漠』
砂一粒一粒が銀色で輝く砂漠。
横薙ぎの風が吹き荒れ、銀の砂が舞い上がる。
地形は平らで障害物は無いものの、砂嵐によって著しく視界を悪くしていた。
ここは『やみ森』の南方、そして『あちあち熱原』の東方に位置する場所。
そんな場所で、とあるプレイヤー達が足を進めていた。
「会長〜本当にここ通るのかよ」
プレイヤー“海坊主”は嘆く。
彼は気怠げそうに呟くも、会長の足は止まらない。
「位置的に回り込める場所はここしか無いですからねぇ……それに、環境が悪いからこそ、妨害されるリスクも限りなく低いでしょう」
最西端の『あまい森』ではマヨ船長との接敵があるので奇襲や潜伏に不向き。
その東側の『あちあち熱原』は本戦場のヒーロー達が居るから論外。
であるならば、回り込むには更に東側の『シルバー砂漠』からがベストなのだ。
「弱音を吐くな、海坊主」
プレイヤー“餓者髑髏”は海坊主を叱責する。
彼の身体は文字通りの骸骨のようであり、着せ替えによってスケルトンの姿になっていた。
「戦略的に『シルバー砂漠』から行くのが良いのは分かってるけど……もっと遠回りからじゃ―――」
「お兄ちゃんウザいよ」
「ごばっ……!」
ため息を吐くのはプレイヤー“からかさ”。
彼女は和傘の遺物『剣盾傘』を片手に持っており、こんな環境でも着物姿で優雅に歩いている。
「会長が「こうする」って決めたんだから、それを最大限サポートするのが私達の役目でしょ」
「うぐっ……」
「良く言った、からかさ。この弱男より妹の方がしっかりしてるじゃないか」
「うぐぐっ……!」
「まぁまぁ皆さん、本当の事をズケズケ言うのは辞めて差し上げましょう」
「それ遠回しに会長も参加してるよね!」
和気あいあいと形容しても良いかは甚だ疑問であるが、それでも彼ら『彼岸会』は『シルバー砂漠』の中を歩き続けている。
プレイヤー“亡霊マダム”率いる『彼岸会』。
残存兵力56名。
人数はそこまで多くないものの、誰もが曲者揃いであり、3勢力の内1の一角と呼ばれるだけの実力がある者達である。
「――――止まって」
「どうしたんだ?」
そんな中、からかさは蒼白なる光がふと垣間見えた気がした。
「【剣盾変換】ッ!」
からかさは『剣盾傘』を広げ、その光から仲間を守る。
突然の襲撃に『彼岸会』のプレイヤー達は臨戦態勢へと入った。
「襲撃?! こんな所で?!」
「【白骨狂演】」
餓者髑髏は地面から無数の骨を射出する。
その骨の群れは魚群のように前方へと向かうも、まるで当たっている気配が無い。
「追いましょう」
『彼岸会』は姿の見えない襲撃者を追っていくと、次第に砂嵐は晴れていった。
その瞬間――――
ガキンッッッッ!!!
餓者髑髏は迫りくる刃を、骨で造られた遺物『魔骨操剣』で弾く。
「――――お前は!」
「やぁ」
そこに居たのはプレイヤー“蛇者”だった。
トーナメントでヒーローと互角に渡り合った猛者の1人。
もし一瞬でも反応が遅れていれば、餓者髑髏の首は地面に落ちていただろう。
「ようこそ、『彼岸会』の皆さん。こちらの筋書き通りに誘い込まれてくれはりましたわ」
そしてプレイヤー“BAN”。
彼も猛者の1人であり、最も厄介なプレイヤーである。
数日前、『黒潮組』のプレイヤーが彼に喧嘩を売った事がある。
その末路は想像の通り、恐怖を埋め込まれ、弄ばれてキルされた。
今では彼の名を出すだけで震え上がる者も居る程だ。
他にも多くの『アマテラス社』プレイヤーが待ち構えており、『彼岸会』はまんまと誘い込まれたのだ。
「赤月が参戦したと聞いたが、『アマテラス社』まで介入してくるのかよ!」
「でも……不思議ね。肝心の赤月の姿が無い」
この場に居るのが『アマテラス社』プレイヤーなら、同じ陣営である赤月は何故居ないのだろうか。
――――いや、間違いなく居た。
先程の蒼白なる弾丸、あれは間違いなく報告にあった赤月の攻撃だった。
だが、どれだけ辺りを見渡そうが、一向に姿を現さない。
「あの鉄砲玉やったら、もう砂嵐の中を突っ切ってしもたで。鉄砲玉いうんは戻って来ないもの。せやから、そのまま南へ向こうたと考えるんが自然やな」
南には『セイレーン社』の本居地、『ヒート街』がある。
そして、そこに鎮座するは万事屋。
『彼岸会』を『アマテラス社』プレイヤーに任せて、赤月自身は直接万事屋を仕留めに行ったのだ。
「赤月の事なんか放っておいて、俺達と遊んでおくれよ」
「これで奇襲したつもりですか? 全員返り討ちにして差し上げましょう!」
プレイヤー“BAN”、“蛇者”率いる『アマテラス社』。
残存兵力16名。
『黒潮組』より更に数が少ない彼らであるが、その代わりプレイヤー1人1人が猛者にも届きうる存在達。
まさしく少数精鋭。
「数では俺達の方が上だろ!」
『彼岸会』の誰かがそれを呟く。
そして次の瞬間――――
ドッカァァァァァン!!!
後方で大爆発が轟く。
『アマテラス社』の攻撃は既に始まっており、次々と『彼岸会』プレイヤーが倒れていく。
「何だあの爆発?!」
海坊主が驚愕している内に、何処からともかく筋骨隆々なプレイヤーが飛び出した。
「余所見してる場合なの?」
「不味っ――――」
「【純愛正拳】」
海坊主は咄嗟に地面から沼の手を生やしたお陰で九死に一生を得たものの、余りの衝撃で遠くまで吹き飛ばされてしまう。
「一名様ご案内だぜ!」
その先に“飛雷神”が待ち構えており、『神罰の雷槍』が空中に居る海坊主を捉える。
「【穿雷突貫】ッ!」
「【泥沼拳】ッ!」
飛雷神の攻撃と同刻、地面から沼の拳が飛び出した。
沼の拳がタイミング良く『神罰の雷槍』の側面に当たり、攻撃は寸前の所で逸れる。
「へぇ……やるじゃねぇか!」
「サンドバッグになる気は無いぞ! 【泥沼拳】!」
海坊主は地面から巨大な沼の腕を生やす。
それを思いっ切り、飛雷神に向かって叩き潰す。
ガンッッッッ!!!
だが潰れたのは飛雷神ではなく“玩具戦士”だった。
彼は『鋼鉄機構鎧』を身に纏っており、強烈な一撃すら防ぐ硬さを持つ。
「嘘っ?!」
「良い火力してるじゃないか!」
「【博愛】」
その上、削られた体力は“エンジェル”によって回復される。
それを見た海坊主は思わず逃げ出したい気分になった。
「アタッカー、タンク、ヒーラーと揃ってるパーティ相手に1v3クラッチしろってか! 他の連中は――――」
チラリと他の仲間を確認してみれば、彼らも各々の相手をしているようだった。
「ちっ……【白骨狂演】!」
「【五月雨】」
無数の骨に対抗するはたった1本の太刀。
プレイヤー“落ち葉”は雨の如く降り注ぐ骨を『雨太刀』にて、全てを叩き斬る。
例え幾千万の攻撃が襲いかかろうとも、腹を括った1本の太刀には叶わない。
蛇者にすら届きうる、反撃の極意。
「どうした、そんなものか?」
「俺の骨に対抗出来るってか? ふざけた野郎だ……喰らえ! 【獅子舞骨】ッ!」
餓者髑髏は地面から、骨で出来た獅子舞を出現させた。
それは前方を覆い尽くす程に巨大であり、例え無数の剣を操れるとしても、これを相殺する事は出来ないだろう。
「跪け! 【崩落】ッ!」
ふと声が響く。
気が付けば、プレイヤー“夜風”が巨大な獅子舞の前に立っていた。
手袋を付けたまま人差し指を地面へと向ける。
ドゴォォンッッ!!
突如として獅子舞は地面へと落ちる。
まるで獅子舞の重力が重くなったかのようで、周囲に衝撃が伝わった。
手袋の遺物『支配者の重力手袋』に込められた【崩落】は対象のあらゆる重力を重くする。
――――そして、重くする方向も調整可能である。
「【崩落】」
ドゴォォンッッ!!
夜風が全方に指を指すと、獅子舞は後方へと吹き飛ばされて、そのまま『彼岸会』プレイヤーの軍勢に衝突した。
「……本当にふざけたスキルしてやがる」
餓者髑髏は寸前の所で避けており、獅子舞に巻き込まれる事は無かった。
それでも、あの重力操作は非常に厄介であり、もし効果の対象となれば自分の身すら守れずに倒されてしまうだろう。
「……だが、それでもやりようは――――」
餓者髑髏は再度骨を飛ばそうとした。
出来なかった。
ふと身体を見てみれば、いつの間にかポリゴンの粒子が飛び出していた。
「【狂獣鉤撃】――――だにゃん」
「――――クソ喰らえ」
捨て台詞を吐いた餓者髑髏は、バタリと倒れ伏した。
『アマテラス社』参戦……!
このままだと『アマテラス社』無双になるので、他会社より人数が少ないというナーフが入りました




