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状態異常使い、敵を溶かす。~状態異常ビルドのVRMMO~  作者: MeはCat
【第六章】厄災と動乱、その奔流

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【騒乱】獰猛な乱入者

「クマっ!」


 無害なクマ、襲来。

 一瞬にして漁師を消し飛ばした威力を見て、『セイレーン社』のプレイヤー達は戦慄する。


「【気孔掌底】」


 ふと腹を抉る感覚が過ぎる。

 1人のプレイヤーが下を見やると、そこには大穴が開いた身体がポリゴンを散らしていた。


「【気孔掌底】【気孔掌底】【気孔掌底】」


 一撃でも喰らえば只では済まない空気砲。

 それが、目にも留まらぬ速さで飛来する。

 尋常ではない攻撃速度、これを避けられる者の方が希少である。


「猛者が相手か……名を挙げるチャンスじゃねぇか!」


 ただ1人、酒池肉林が無害なクマに飛び掛かる。

 彼は無害なクマが攻撃力と素早さに極振りしているステータスだと見抜いていた。

 当然、トーナメントも観ている。

 準々決勝第二試合、無害なクマと赤月の戦闘。

 確かに彼女の身体能力は目を見張る程の物だ。

 だが守りを削っているが故に、攻撃を当てさえすれば容易に倒せる事を酒池肉林は知っていた。


「【倍速】」


 この近距離、無害なクマは【超速連撃】を選択するに違い無いと酒池肉林は読んでいた。

 例え高速移動をしているからと言って、攻撃の最中は無防備になるものだ。

 酒池肉林は【超速連撃】を耐え、反撃として『貪欲大剣』を叩き込む。


 これは賭けだ。

 自身の耐久力であれば、耐えられる。

 否、耐えなければ勝ちは無い。


 ――――使え、【超速連撃】を!


「【狂暴走】」


「なっ――――」


 実際、【超速連撃】を喰らおうが酒池肉林は耐えていた。

 現在、酒池肉林は【狂暴走】の状態中であり、被ダメージが50%も減少しているのだ。

 それ程までの耐久力は、彼にはあった。


 ただそれは――――

 相手も【狂暴走】を使って来ないであろう想定である。


「【超速連撃】ッ!」


 【狂暴走】による底上げされた火力、その連打が――――


「キィーッ!!!」


 次の瞬間、突如として何者かの影が介入する。


 それは、()であった。

 巨大な鳥が、横から猛スピードで突撃してきたのだ。


「クマっ……!」


「がはっ……!」


 その衝撃により、2人はそれぞれの樹木に衝突する。


[エリアボスが出現しました]

[煌翼蜜喰 ファル=ガルダ【狂乱】]


「こんな時にボスの乱入?!」


「しかも……おい、あれ狂乱化じゃねぇか……?」


 身体のあちこちに青い水晶が生えていた。

 戦場に投下された、一滴の変数。

 狂乱化ボスの乱入により、更に混沌を極めていく。


「おいデカブツ! こっちだ!」


 復帰したマヨ船長はファル=ガルダの足を攻撃する。


「キィーッ!!!」


 ヘイトが向けられたマヨ船長は戦場を駆け抜ける。

 そして、その道中には勿論『セイレーン社』プレイヤーが跋扈していた。


「ちょ、こっち来るんじゃ――――」


 1人、狂乱化ボスの攻撃に巻き込まれて潰される。


「キィーッ!!!」


「どうした阿呆鳥! アタシが見えないのかい?」


「あいつ……ボスで轢き殺す気か!」


 更に1人、プレイヤーが翼に切り刻まれる。

 マヨ船長の狙いは至極単純、ファル=ガルダの攻撃で『セイレーン社』プレイヤー達を殲滅する。


「そんな見え見えの攻撃、引っ掛かる訳――――」


 ピカッッッ!!!


「なっ目が――――」


「キィーッ!!!」


 また1人、ファル=ガルダに轢かれる。

 狂乱化ボスの攻撃力は非常に高く、耐久力を上げなければ一発喰らうだけでも大ダメージを負ってしまうのだ。


「ふざけやがって糞鳥が!」


 ファル=ガルダの顔面に衝撃が走る。

 『貪欲大剣』の一撃によって、大きく吹き飛ばされた。


「その様子、【狂乱化】の効果は切れたようだな」


「ぜぇ……ぜぇ……お陰様でな!」


 酒池肉林の【狂乱化】は終わりを迎えた。

 一度魔力が枯渇したが、既に上級魔力回復ポーションによって回復済みである。


「【気孔掌底】ッ!」


「――――っと、油断も隙もあったもんじゃねぇ」


 間一髪で酒池肉林は空気砲を躱す。

 そして、その一撃は――――


「キィーッ!!!」


 ファル=ガルダへと直撃した。

 余りの威力に悲鳴を上げ悶える。

 だがそれと同時に、彼の者の身体が徐々に青く煌めく。


「クマ……!」


「様子がおかしいな」


 地面に倒れ伏したと思った途端――――


「キィィィィィィッッッッ!!!」


 突然上空に飛び上がって雄叫びを上げる。

 ファル=ガルダは周囲のプレイヤーに見せ付けるように翼を大きく広げ、羽ばたく。

 それはまるで空の王者のようであり、見る者全てを威圧するような、重厚な覇気を放っていた。


[第二形態へ移行]


 バサリ。

 バサリ。


 ファル=ガルダは羽ばたき、舞い降りる。

 ゆっくりと、ゆっくりと、ゆっくりと。

 天使のように、王者のように、天のように。


「――――【覚醒解放】!」


 ファル=ガルダの姿が搔き消える。

 音すら聞こえず、ただ消える。


 次の瞬間――――


 ガキンッッッッッ!!!


 ファル=ガルダは剛翼を『解放の錨』に押し当て、轟音を鳴らす。

 その直後、爆音が戦場を支配した。

 音すら置き去りにする一撃。

 それでもマヨ船長は1歩も動かず、耐える。


「ふんっ!」


 攻撃を弾き返したと思った刹那、重い攻撃が1つ2つ3つ。

 マヨ船長が反撃を試みる瞬間、姿が消えて、残るは衝撃が伝わる感触のみ。


「ぐわっ!」

「くそ……速ぇ!」

「畜生、何なん――――」


 ついでとばかりに、周囲の『セイレーン社』プレイヤー達が鏖殺されていく。

 目にも留まらぬ速さで森の中を飛び回り、剛翼で轢いて回っているのだ。

 無作為に、無差別に攻撃する様はまさに暴君。


「クマ……!」


 今度は無害なクマをも襲う。

 彼女に向かって突撃をかました。


「クマ!」


 突撃と同刻、無害なクマの蹴りがファル=ガルダの顔面を捉えた。

 反撃したのも束の間、ファル=ガルダは即座に復帰して天高く飛び上がり――――


 ドゴーンッ!


 そのまま地面に向かって急降下する。

 無害なクマが後方へと飛び退くと、元居た場所にクレーターが形成されていた。


「【天下無双】、【疾風迅雷】、【破竹ノ勢】」


 マヨ船長は今持つバフのスキルを全て積み、目の前の怪物へと飛び上がった。

 そして、『解放の錨』を振り下ろす。

 ファル=ガルダは思わず怯み、大きく仰け反った。


「とことんムカつく畜生だ。まさか船長が、吾輩ではなく、お前に【覚醒解放】を使わせるとはな!」


 その隙を縫うように、草むらから酒池肉林が飛び出す。

 彼はファル=ガルダの顔面を思いっきり叩き斬った。


「クマッ!」


 無害なクマの【狂暴走】も既に効果終了している。

 現状、自身の魔力は枯渇しており、スキルは使用不可となっていた。

 それでも、その着ぐるみに内包された攻撃力は尋常でない程に高い。

 彼女のボディブローが、吹き飛ばされている最中のファル=ガルダの胴体を抉った。


 ボコンッッッ!!!!


「はっ!」

「クマ!」

「喰らえ!」


 三者三様、それぞれの共同攻撃により乱入者は塵と化した。


[エリアボスを撃破しました]

[煌翼蜜喰 ファル=ガルダ【狂乱】を倒しました]

[『蛇王の装束』を入手しました]

[『石化の眼球』を入手しました]

[『魔水晶』を入手しました]

[20000HGを入手しました]


 既に辺りは静寂に包まれていた。

 あれだけ居たプレイヤー達も、ファル=ガルダによって一掃された。

 もしくは、恐れをなして逃げ出したプレイヤーも居るのだろう。

 だが今、そんな情報など必要無い。


 重要なのは――――


「「「【狂暴走】」」」


 立っていた3人のプレイヤーが、『魔水晶』を手に入れたという事実のみ。


「【倍速】【気孔掌底】【気孔掌底】【気孔掌底】」


 無害なクマは酒池肉林に向かって空気砲を連打する。

 酒池肉林は煩わしく『貪欲大剣』を振り回し、相殺した。


「邪魔だ! 猛獣!」


「【超速連撃】ッ!」


 無数の拳が酒池肉林を襲う。

 だが――――


「――――【起死回生】!」


 【起死回生】――――

 それは酒池肉林が誇る()()切り札。

 自身を0.01秒間のみ()()()()の状態とする。

 喰らったダメージを無効化し、そのままそっくり相手に返す効果を持つ。

 刹那の誤差も許さぬ土壇場で発揮される山勘。

 それが無害なクマを破壊するに至る。


「がはは……残るは船長、お前さんだけだ!」


「アンタだけは絶対に仕留める。これは、()()としての意地だ」


「やってみろよぉ!」


 酒池肉林が無害なクマを下した後、間髪入れずにマヨ船長へと襲い掛かる。

 ここでも彼は賭けに出る。

 マヨ船長を【起死回生】で反撃し、怯んだ所を『貪欲大剣』で叩き込む。


「はぁっ!」


「【起死回生】ッ!」


 酒池肉林は勝ちを確信する。

 このままマヨ船長が攻撃すれば――――


「なっ?!」


 ふとマヨ船長の攻撃がピタリと止んだ。


「寸止――――」

「ふんっ!」


 『解放の錨』で、酒池肉林の脳天をカチ割った。


一体いつから乱入者が1匹と錯覚していた?

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