【別視点】粛清
万事屋視点
『ヒート街』
灼けつくような熱い日光が地面を焦がす。
それでも荒くれ者達は酒を飲み交わし、目の前のプレイヤーを嘲笑う。
「こんな事をして、ただで済むとお思いですか!」
磔にされているのは“賢者牧師”。
腕に縛られる拘束具によって、一切の身動きが取れなくなっている。
その前にわざとらしく歩くは“万事屋”その人だった。
「それはこちらの台詞さ。君達こそ、僕達に何をするって?」
「貴方方の暴行は、いつか天罰が――――」
ドッカァァァァァン!!!
「あ、ごめん。手が滑っちゃったよ」
その瞬間、周りのプレイヤー達はゲラゲラと一斉に大笑いが沸いた。
この光景は、まるで公開処刑のようであり、必死に抵抗するプレイヤーを心の裏側まで嘲笑うかのようだった。
これは『黒潮組』が良くやる粛清方法であり、気に入らないプレイヤーを磔にして爆殺する手法が流行っている。
勿論、流行らせたのは万事屋である。
「万事屋」
ふと万事屋の背後から突如出現したのは“浪人”。
彼は忍者のような格好をしており、口数が非常に少ない。
「どうだった?」
「ヒーローと赤月が接触した」
「うげ、このタイミングでか……」
万事屋は苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべる。
赤月は唯一自分自身を下した存在であり、最大警戒対象のプレイヤーとして認知していた。
もし彼が西側に付くようであれば、今回の戦いは相当厳しいものになる。
「“やぶ医者”に兵隊の製造を急がせろ」
「了解」
『黒潮組』、『荒波海賊団』からの移籍組、やぶ医者の兵隊でも戦力が足りない。
やはり大局を分けるのは――――
「お困りのようね」
優雅に歩く音が響く。
その足音に目を向ければ、そこには“亡霊マダム”が居た。
「ここに君が居るって事は……参戦してくれるって事で良いんだね?」
「えぇ、これを機に表で暴れるのも良いと思いまして」
彼女は『彼岸会』の会長にして謎多き人物。
というのも『彼岸会』自体が秘密主義であり、情報統制を徹底している勢力だ。
「良く言うよ。借りを作りたいだけだろ?」
「うふふ、見抜かれてしまいましたねぇ」
全く動揺を見せず、恍惚とした表情で笑う。
彼女の言っている事が、どこまで本当でどこまでが噓なのかすら分からない。
言ってしまえば、胡散臭い。
「まぁ良いや。君達が参戦してくれるなら百人力さ。健闘を祈っているよ」
「まぁビックリ! あの非情な万事屋さんが「健闘を祈っている」ですって!」
「罵倒の方が良かったか?」
万事屋は少し青筋を立てながらも、今保有している情報を亡霊マダムに話す。
「なる程~お相手は猛者2人ですか。2人同時は厳しいものの、1人だけなら足止め可能だと思いますよ」
「それは心強いね」
亡霊マダムも『彼岸会』の会長をやっているプレイヤーであり、彼女も猛者に匹敵する実力者と見て良い。
むしろ足止めすら出来ないようだと、戦力としては不十分だと言わざるを得ない。
「所で、今マヨ船長は何をやられているので?」
「あちら側に着いたよ。あの馬鹿は最後の最後まで抵抗するようなプレイヤーだからね」
マヨ船長は猛者にも届きうる強者。
だが良くも悪くも諸突猛進するタイプであり、自分の決めた事は絶対曲げない。
一度抵抗を決めてしまえば、もう仲間に引き入れる事は無理だろう。
「それは残念ですね……彼女が味方になってくれれば、どれ程良かった事か……」
「こればっかりは仕方ないね」
ゲームをやっていけば、気質の合わないプレイヤーも居るものだ。
たまたま、それが彼女だったというだけの話。
「今や彼女は僕達の敵になった。向かって来るなら、容赦無く叩き潰すだけだよ」
万事屋はマヨ船長を倒すと冷酷に宣言する。
例え相手が誰であろうと、敵対する者は粛清を受けなければならないのだ。




