奥底からの目覚め
ヴァル=ムービーを倒した直後、辺りは妙に静まり帰っていた。
この場にあるのは、俺を含む4人のプレイヤーと、青い水晶に包まれた廃墟の街、そして――――
テレビ。
いつの間にか、ポツンとテレビが置かれていた。
そして突然光ったかと思えば、ある映像が流れ始める。
『博士、我々が使う魔力って蒼白色をしていますよね……どうして、モンスターの魔力は青色なんでしょうか……?』
『そもそも我々の魔力が蒼白色なのは、魔神の魔力を制御しやすいように薄めて馴染ませた結果の産物だ。対するモンスターは薄めなくても動けるように造っておる』
『それって、魔神の魔力の……原液のようなものじゃないですか? それ暴走しないんですか?』
『今の魔神は封印された状態。奴が動かす意思さえ持たなければ問題は――――』
『大変だ!』
『どうしたんだ、そんな慌てて』
『器の巫女が……ティターニアが失踪した!』
『何だと?! 今直ぐ探せ! でないと―――』
『(獣のような叫び声)』
「――――結局、ティターニアが逃げ出して文明が崩壊したという訳か。何ともやるせないな」
もしティターニアが逃げ出していなければ、まだ文明が残っていたのかもしれない。
だが、それは彼女自身の喪失と同義となる。
そもそも、こんな1人の犠牲の上に成り立つ社会構造自体が歪だ。
ここが崩壊するのは、むしろ定められた運命だったのかもしれないな。
「……でもさ、ちょっとおかしくない?」
「何か気になる事があるのかい?」
「うん……人間の使う魔力が蒼白で、モンスターの使う魔力は青なんだよね? じゃあ……私達は?」
……考えもしなかった。
よくよく考えればそうだ。
そう、俺達の扱う魔力は青だ。
蒼白ではない。
先程、博士と呼ばれる人物がモンスターに対して「造っておる」と言及していた。
モンスターは自然発生したものではなく、元々は人に造られたものだったのだろう。
そして、人間のように濃度を薄めなくても魔力を扱えるように出来ている。
もしこれが本当なら――――
ドンッッッ!!!
突如として、『夢の跡地』が大きく揺れた。
このタイミングの不自然な地震は、きっと偶然じゃない。
震源地は――――
あの大穴の底からだ。
俺達は思わず大穴の方へと視線を向けた。
「■■■■■■■■■■■■■■■■」
それは羊だった。
それは雲だった。
それは空だった。
それは青だった。
神々しい、清々しい、美しい。
静かで、穏やかで。
涼しくて、暖かい。
天国心地良景色浮。
俺昇天心清。
嗚呼素晴光景。
清々気分始。
魔神讃祭。
万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳万歳――――
「――――――っは?!」
俺は今何を見ていた。
俺は今何を感じていた。
精神が汚染されるような感覚がした。
精神が乗っ取られるような感覚がした。
一体何が起きている。
――――いや、確かな事が1つ分かった。
ここに魔神が居る。
大穴の向こうに、あの深淵の向こうに魔神が潜んでいる。
まだ完全には起きてはいないものの、確実に俺達の存在に気付かれた。
「――――撤退だ! 今直ぐ離れるぞ!」
俺は声を張り上げる。
立ち尽くす仲間を抱えて、『夢の跡地』から抜け出していった。
ここは撤退すべきだ。
俺達が挑むには、まだ早いと警鐘を鳴らしている。
俺達は、とんでもない存在を目覚めさせてしまった。
これにて幕間終了でございます!
次は第六章ですが、少しばかりの休稿をします。
というより、章の終わりには休稿を挟む事にしました。
7月の初旬辺りより、投稿再開致します。
それでは、またお会いしましょう。




