過ぎ去りし映像
「クマ!」
「何か見つけたのかい?」
俺達は無害なクマの元へ向かう。
そこにはテレビが設置されており、怪しげに砂嵐が映っているだけだった。
「廃墟のはずなのに、テレビは動くんだね」
「多分だけど、魔力が電力代わりになってるんじゃないかな。周りには青い水晶あるから、それで辛うじて付いてるのかも」
ここの文明は俺達の現代文明と似たような姿形をしているが、発展の仕方は全く異なるのかもしれない。
電力より魔力が身近にあるなら、魔力中心の技術が発展してもおかしくは無い。
ピカッ!
「何?!」
突然砂嵐が晴れたかと思えば、そこには羊の群れに背を向ける孤独な羊が映像として映されていた。
そのテレビから、何か音声が繰り返し流れ続けている。
『迷える子羊よ、もう群れの中に飛び込む事なかれ。何も無い暗闇に旅立ち、一つの灯火を求め、二つの灯火を追いかけ、そして何も無い暗闇に帰るのだ』
「むっ、この文章は……」
「何か知ってるのか?」
「知ってるも何も、これは『巨壁回廊』で書かれておったではないか」
そう言われて『巨壁回廊』の情景を思い出す。
巨大な崖の壁のような外観のダンジョンであり、先のエリアを移動する為の関所ダンジョンでもあった。
その1階部分に――――
羊の壁画と一緒に文章が書かれていた。
「確かその時はパズルのヒントになってたんだよね? 今回もパズルなのかな?」
「うーん……それは分かんないな。あの時とは違って、周囲に灯火らしき物は見当たらない」
改めて見渡してみるも、何処もかしこも青い水晶だらけ。
灯火の痕跡すら無いようでは、これをここのパズルのヒントと片付けてしまうのは早計な判断だ。
「それに――――テレビはこれだけじゃ無さそうだ」
群生する青い水晶の隙間から、テレビが垣間見える。
俺は水晶を退かすと、テレビに映像が流れた。
『皆さんは魔神をご存知だろうか。そう、突如として群星からやってきた怪物です!』
『かつて覇王の時代に現れた魔神は長年我々を支配してきました。ですが、もう恐れる必要はありません!』
『我らが魔王様が、あの邪知暴虐な魔神を封印して下さったのです! 皆さん、祝杯を挙げましょう!』
「魔神か……聞いた事が無いな」
察するに、この世界に魔神が封印されている。
大昔に魔神がこの世界を訪れた後、この地を支配した。
そこを魔王が封印を施した……と、映像では流れている。
「ふむ……これだけでは、善悪は測れぬな」
「過去に革命が起きてクーデター側が勝ったの確かだろうね。だからこそ、テレビで魔神が悪者扱いを受けているだけの可能性もある」
どの世界でもそうだが、勝者側が正しいとされるのが世の中の常だ。
俺達は、その魔神がどんな奴だったなんて分からない。
ただの偏向報道されてるだけなのかもしれないし、本当に魔神が悪者だったのかもしれない。
事実を断定するには、情報が足りない。
「クマ!」
無害なクマが、またテレビを見つけた。
俺達がそれに近づくと、また映像が流れる。
『魔力はどこから来てると思うかね?』
『魔力ですか? 考えた事もありませんでした』
『あれ、実は地下に封印されてる魔神のエネルギーから汲み取ってる物だよ。儂達は、それを流用してるだけ』
『そうなんですね……魔力が無いと家魔製品すら動かなくなっちゃいますし、これが無い生活なんて考えられません』
『だからこそ、封印の維持は最重要事項と言える。ところで、器となる巫女の調子はどうかね』
『ティターニアですか……彼女、器になりたくないって言うんですよ?』
『はぁ……全く最近の若い者は……』
この映像を見た俺達は絶句していた。
まさか、身近にある魔力は魔神が起源だったとは思わなかった。
「ティターニア……何者だ?」
「……もしかして、封印に人を使ってるの?」
「人を器とし、その身に魔神を封じ込める――――非情だな」
この口振り的に、人1人を犠牲にする封印は長年の儀式として行われているようだ。
なんて惨い事を……。
「――――待て、何か物音がするぞ」
「……俺の【魔物探知】にも引っ掛かってる」
ガシャン。
ガシャン。
ガシャン。
それは足音と呼ぶには機械のようで、擦り切れた金属音が響き渡る。
物音の方に向かって『神霊聖剣』を構えると、そこには頭部が巨大なテレビのロボットが練り歩いていた。
[エリアボスを発見しました]
[映画機兵 ヴァル=ムービー]




