白石 紬 14
「ダメだ、奪われるな! 白石くん、絶対に車を奪われるなッ」柏樹さんが声を荒げ——荒げた直後に、痛い痛い痛いと連呼してみんなから取り押さえられて、口の中へ布を詰め込まれる。
心配して近寄ろうとしたけど制された。私が診ているから捜査官を追いかけなさい、と流地さん。そこへ竹山兄弟の片方が駆けてきた。行きましょう――これは長友さんの台詞。ぼくは柏樹さんを診ている流地さんと、竹山兄弟のもう片方を残して、宍戸捜査官のあとを追った。
階段を下りる。気がつくとぼくは最後尾にいた。靴の中に居座っている異物を隅っこに移動させるべく時折つま先で床を叩いていたからだ。
「離れろ!」
一階に到着するなり、
「車から離れろッ!」
恫喝としかいいようのない宍戸捜査官の声が飛んできた。
目を向けると、ライフルを構えた宍戸捜査官が、建物の外へでて行こうとしていた。
NICスタッフが怖ず怖ずと宍戸捜査官に歩み寄る――いまにも発砲するんじゃないかって態度に不安を隠せない様子だ。
ぼくも近づく。
中央通りに停まった車両を囲んでいる男たちの姿が見えた。
広域捜査官の専用車両の近くに立った男性が、口をぽかんと開けてこちらを見ていた。突然のことだったので呆気にとられているようだ。だけどそれも僅かな時間でしかなかった。建物になにか衝突したんじゃないかってくらいの轟音が鳴り響いて、車両のそばに立っていた男性の背後に鮮血が舞った。開かれた口の中に背後の景色が見えたと思いきや、糸の切れた操り人形さながら路上へと崩れ落ちる。
「……!」
またも撃った――宍戸捜査官が。返答を待たず。威嚇射撃抜きで。
相手が何者であるのか確認することもなく。




