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第3話 vsメフィスト① 契約

チヒロの高校では昨日から文化祭が始まった。


自クラスの出し物や、時間が空いた時は他クラスの出し物にも行って、

高校生になってから初めての文化祭を楽しんでいた。

遠藤ユカの追及をかわせたことで心を晴れたというのもある。


そんなチヒロを遠くからじっと見つめる人がいた。

遠藤ユカである。


ユカは四日前の出来事が気になっていた。

それはメイド服姿の少女の正体は神崎チヒロと疑っていたが、その二人が同時に現れたことである。

偶然にしてはできすぎている。


あのメイド服姿の少女は神崎チヒロが用意した替え玉ではないか。

だが、遠藤ユカにとってはメイド服姿の少女の正体を暴く術を持たない。

自身の身体能力では敵わないからである。


そんなモヤモヤした気分で化学準備室に戻って自席に座ると、どこからともなく声がした。

「汝のその望み、叶えてしんぜよう」

「誰なの?」

辺りを見回すが誰もいない。


「我が名はメフィスト。我と契約をすれば、汝の望む力を手中に収めることができよう」

「その話は本当なの?」

メフィストの誘惑にユカの心が動く。


「我の言葉に嘘は無い。その代わり汝の望みが叶ったら、我の望みも叶えさせてもらおう」

メフィストの言う交換条件が少し気になったが、今は自身の欲望を満たしたい気持ちの方が勝った。


「あなたと契約させてちょうだい」

「了解した」

とメフィストが言うと、ユカの体に変化が起こった。

「凄い。体に力が満ち溢れてくる。これならアイツの正体が神崎チヒロだと暴くことができる」




午後になって、自クラスの出し物の担当時間が終わったチヒロは、他クラスの出し物を見ようとしていた。


校内を歩いていると目の前に現れた一人の女子生徒が現れた。

だが、その女子生徒を見るなりチヒロは今来た廊下を引き返す形で走り去った。

そして階段を駆け上がり屋上へと向かおうとしたが、ドアの前には先程の女子生徒が立っていた。


「いきなり逃げ出すなんてひどいです」

その女子生徒は神様だった。


「逃げたわけじゃないです。ただ部外者が校内にいるとまずいから移動しただけです」

とチヒロは理由を説明した。


走って移動したことにより息はまだ切れている。

「えー。大丈夫ですよー。今日は文化祭で人がたくさんいますし、人って案外他人を気にしないものですよ」

チヒロの心配をよそに神様は楽観的だった。


「いえ。ウチの制服を着ているのは非常にまずいです」

とチヒロは反論したが、神様はその意味がわからなそうな表情をしていた。


「コータローです。アイツ、女子生徒全員の顔と名前を知っているから、その姿だと疑われます」

「へー。それは凄いですねえ」

このコータローの能力には、神様も感心せざるをえない。


さらにチヒロはコータローの話題をまくしたてる。

「というかアイツ、ウチの学校通っているのも可愛い先輩が多いというのが理由なんですよ。

学校一バカだったアイツが受かった時は、学校中大騒ぎでしたし・・・」

「それで、今日の用件ですが・・・」

神様は本題を切り出して、話題を変えた。


「この学校の先生の遠藤ユカさんご存知ですよね?彼女がメフィストという悪魔と契約してしまいました」

「え?」

遠藤ユカと悪魔、チヒロにとっては忌むべき二つの名前が同時に出てきたことにショックを受け、

「契約って、どういうこと?先生は悪魔になっちゃったの?」

と尋ねた。


「そういえば悪魔の契約の仕組みについて話をしていませんでしたね。

悪魔は欲深い人間を標的にし、契約を持ちかけます。契約が成立すると人間離れした力を与えます。

そして契約を結んだ人が欲求を満たすと、身も心も悪魔の者となってしまいます」

普段は温和な神様にしては珍しい真剣な口調に、チヒロも聞き入った。


「悪魔からの力により、例えばリリスは男性を虜に、ヴァンパイアは血により若返るという欲求を満たしました。

ですが、彼女はまだ欲望を満たしていないので、悪魔にはなっていません」

最悪の状況に陥っていないことにチヒロは安堵した。


「それで、その先生の欲望って何なの?」

「それは、変身したチヒロ君の正体を暴くことです」

「ええっ!」

思わずチヒロは絶句した。


四日前に神様が替え玉となって、自身と一緒にユーリアを登場させたことで疑惑は解消したはずだ。

まだあきらめていない執念に恐ろしさを感じた。


「じゃあ変身しても、先生と会わないようにすればいいんだね」

正体を暴かれない最善の方法をチヒロは進言をしたが、

「残念ながら、それはできません」

と神様は首を横に振った。


「変身したチヒロ君をおびき出すために、彼女は窃盗や傷害といった悪事を働くでしょう。

それでも無視できますか?」

「うっ」

チヒロは言葉に詰まった。

知人が犯罪者になってしまうかもしれない事態を無視することはできない。


「彼女は今晩にでも悪事を働くかもしれません。早速変身をしてメフィストを倒しましょう」

「早速ということは、ここで今すぐ変身をするの?」

チヒロは神様の提案に慌てた。


ここはチヒロを知っている人が大勢いる学校である。

そんな所でメイド女装するのは絶対避けたい。


だが、神様は

「もちろんです。早いにこしたことはありません」

と言い切った。


「ちょっと待って。せめて文化祭が終わるまで待ってよ。

多分、こんな時間じゃ先生も何もできないんじゃあないかなあって・・・」

チヒロのその言葉は変身したくない一心から、ほとんどでまかせに近いものだったが、

「わかりました。待ちましょう」

と神様はチヒロの提案に応じてくれた。


だが、チヒロはこれから変身をしなければならないこと、

さらに遠藤ユカと闘って彼女を救出をしなければいけないことという難題を与えられ、

楽しいはずの文化祭を憂鬱な気持ちで過ごすことになってしまったのだった。


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