第6話 vsモロク④ 新たなスタート
時は少し移り四月。
春休みも終わり、今日から新学年、新学期である。
学校では春休みの間に起こった通り魔事件の話で持ち切りである。
しかも、その被害者が同校生であることが拍車をかける。
白石イズミは自分が話題の中心になっていることにもちろん気付いている。
自分に関する噂を感じながら、新しい教室の自席に着くと声をかけられた。
「ねえねえ。通り魔に襲われたんだって?大変だったねー」
声の主は川本コータローである。
不運なことに、新学年では彼と同じクラスになってしまった。
「まあ、事故みたいな物だから、あまり気にしてはいないけど・・・」
イズミはクールに言い放ったが、どこか強がっているような感じだった。
「でも、危ない目に遭ったわけでしょ?ここは一つ、俺・・・」
と言いかけた所で、
「ぐわぁ!」
いきなりの後頭部への衝撃に、意図せず声を上げてしまった。
「おはよう。コータロー」
声の主は、こちらも新学年で同じクラスになった神崎チヒロである。
彼はコータローの後頭部をボールに見立て、皮製の学生カバンでそれを打ったのだ。
「な、何をするだーっ!」
さすがのコータローもこれには激怒した。
「あのさー、本当空気読めないよな。ここはそっとしとくべきだろ」
コータローの行動に対して、今度はチヒロも怒った。
そして、そんな二人のやり取りに置いてけぼりを食っているイズミに対し、チヒロは
「コイツが今度失礼なことをしたら、ぶん殴っていいから」
と怒りの勢いに任せて言った。
「お、おい!」
「で、でも・・・」
突拍子も無いチヒロの発言に慌てるコータローと、戸惑うイズミ。
「大丈夫だよ。僕が許可するよ」
「そう・・・」
「ちょっ!」
チヒロの軽いノリに、意を決したかのようなイズミ。
そんなイズミを見て、コータローは恐怖を感じていた。
しかし、イズミは優しく微笑みながら手を差し出す。
それに応じる形でコータローは握手しようとすると、
イズミは素早く親指を握り、逆方向に力を加えた。
「痛でででで、ギブ!ギブ!」
コータローの悲鳴を聞いて、イズミは手を放す。
「そうね。通り魔対策始めたから、その実験台だったらいいわよ」
イズミの表情から、その言葉は冗談を言っていないことを二人は悟った。
「か、勘弁してください」
あのコータローを撃退してしまうイズミにチヒロは呆然としたのだった。




