表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幸福の道標~悪魔は聖女の妹に「聖女よ、ふさわしいものを手に入れろ」と囁いた。ピカッと光らないタイプの聖女様が起こす奇跡の物語~  作者: 赤林檎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/15

13.失礼な悪魔レモラ

 わたくしは聖女様らしくなれるように、王立学院での勉強もがんばり、キートパー筆頭公爵家での行儀見習いで礼儀作法もどんどん身につけていったの。


 お姉様にちゃんとカーテシーを習って、グラグラしないようにもなったわ。


 いろいろやっているうちに、あっという間に半年くらい経って、お姉様が王立学院を卒業したの。


 お姉様は卒業と同時に、レオニード殿下と結婚式を挙げた。


 お姉様とレオニード殿下は、六頭の白馬が引く王家の馬車でパレードをしたの。婚礼用の白くて金で装飾された、豪華な屋根なし馬車よ。


 二人がパレードをしている間、馬車のあたりだけ、キラキラした金色の雨みたいなものが降っていたの。


「奇跡だ!」


「天が聖女イネッサ様の婚礼を祝っておられる!」


 なんて、民たちは大騒ぎ。


 わたくしも大興奮だったわ!


 お姉様とレオニード殿下が王宮のバルコニーから手をふるのを、わたくしはヴィクトル様や民たちと一緒に広場から見物したの。


 お二人とも、とっても幸せそうで、わたくしまで幸せな気持ちになったわ!



 それから二年たって、わたくしも王立学院を卒業したの。卒業と同時に、ヴィクトル様に嫁ぐことになったのよ。


 ヴィクトル様は国王陛下の甥っ子で、王都を守る騎士団長。民たちがヴィクトル様のご結婚をお祝いしたいみたいで、わたくしたちの結婚式でもパレードが行われることになったの。


 わたくしたちもお姉様と王太子殿下が乗ったのと同じ、六頭の白馬が引く王家の馬車でパレードをしたのよ。この婚礼用の白い屋根なし馬車には、わたくしの大好きなピンクのおリボンを付けさせてもらった。王家の伝統ある馬車らしいんだけど、正直あんまりかわいくなかったのよ……。


 わたくしたちはカーネリア侯爵家を出発して、キートパー筆頭公爵家に寄ってから、王宮に行くというルートを通ることになったの。


 わたくしは、別に王宮には行かなくていいんじゃないかと思ったんだけど……。

 ヴィクトル様は筆頭公爵家嫡男で王族だから、国王陛下と王妃殿下にご挨拶しないといけないみたいなの……。


 次期筆頭公爵夫人になるのって、けっこういろいろやることがあるのよ……。


 ヴィクトル様は騎士の白い儀礼服を着て、腰に銀のレイピアを下げていた。


 わたくしのウェディングドレスには、大好きなフリルとレースとおリボンをたくさん付けてもらえたの。ウェディングベールには、お姉様がピンクの刺繍糸で、小さなおリボンをいっぱい刺繍してくれたのよ。

 ティアラは、なんとタチアナ殿下が贈ってくれたの。鉱山で採掘したピンクの宝石を並べて、おリボンみたいに配置してくれたの!


 わたくしとヴィクトル様は、馬車から沿道の民に手をふった。


 わたくしはお姉様みたいなピカッと光るタイプの聖女様ではないから、空からキラキラしたものが降ってくるなんてことはなかったわ。


 聖女様にも、いろいろなタイプがいるから仕方ないわよね。


 だけど、代わりに、民たちが色とりどりの紙を小さく切って、わたくしたちが通る時に空に向かって投げてくれたの。その紙が風に乗ってひらひら舞いながら、わたくしたちに降り注いだのよ。


 カラフルで、かわいくて、とってもうれしかったわ!


 しかも、お姉様が沿道でピカッと光って、青い空に大きな虹をかけてくれたの! これでさらに、聖女様の結婚パレードらしくなったのよ!


「おお、聖女イネッサ様が、聖女ニーナ様のご結婚を祝っておられる!」


 なんて、民たちは大騒ぎよ!


「お姉様、ありがとう!」


 わたくしはうれしくなって、馬車からお姉様にたくさん手をふったの。お姉様は、レオニード殿下と寄り添って立っていたわ。


 馬車は王都の中をどんどん進んでいって、国王陛下が『再開発地区』と名付けた場所にさしかかったの。


 わたくしがヴィクトル様と出会ったばかりの頃、貧民窟として案内してもらった場所よ。


 石畳は国王陛下が命令して、すっかり敷き直してもらえている。


 今では孤児院や貧困者救済病院の他に、公衆浴場である『聖女温泉』や、親のいない赤ちゃんのための乳児院、職業斡旋局の本部、平民学校があるの。


「おお、ニーナ様だ!」


「聖女ニーナ様!」


「ニーナ様、おめでとうございます!」


 民たちが、わたくしを祝福してくれて、とってもうれしかったわ!


「ニーナ嬢、おめでとう!」


「聖女様、良かったな!」


 ログネダ先生はサムイルと結婚したの。孤児たちと一緒に夫婦で並んでパレードを見てくれていたわ。


 サムイルは、元は伯爵家の三男だったけれど、孤児たちを放っておけなくて神官の真似事をしていたんですって。だから、子爵令嬢のログネダ先生と身分が釣り合って、すんなり結婚できたのよ。


 二人は孤児院をやりつつ、平民学校の先生もしてくれているの。


「ニーナ、綺麗よー!」


「ニーナ嬢、おめでとうございます!」


 乳児院前では、ソフィーが婚約者で伯爵令息のドミトリーと並んで手をふってくれていた。この乳児院は、ソフィーがドミトリーの力を借りて作ってくれたの。


 ソフィーはソフィーのお姉様と一緒に、孤児院に捨てられていた新生児のお世話をしてくれていたの。そうするうちに、ソフィーは赤ちゃんのことが大好きになったんですって。それで、捨てられる赤ちゃんたちのことを考えるようになって、赤ちゃん専門の孤児院である乳児院を作ってくれたの。


「ニーナ、すごく素敵よ!」


「聖女ニーナ様、お幸せに!」


 職業斡旋局はリディアが作ってくれて、元孤児のミハイルが局長をしてくれているの。リディアはミハイルと婚約したのよ! 二人は、孤児や仕事のない人々に、仕事を斡旋する仕組みを考えてくれたの。そうやって二人で一緒に働いているうちに、結婚の約束をするまでになったのよ。


 リディアは男爵令嬢だけど、「ほとんど平民みたいなものだしね」なんて笑っていたわ。ミハイルは職業斡旋局の局長という立派なお仕事をしているし、リディアのご家族も二人の仲を応援してくれているの。


「聖女様、いつもありがとうございます!」


「今日、この命があるのも、聖女様のおかげです!」


 貧困者救済病院の前には、民たちが大勢で立っていたわ。今も怪我や病気で苦しんでいる方も、すっかり治った方も、だいぶ良さそうな方もいたわ。


 わたくしは聖女様だから、月に一回は貧困者救済病院へお見舞いに行くことにしているの。怪我や病気で苦しむ民を励ますのも、聖女様の大事なお仕事なのよ。


 最近はすごく忙しくて、二か月に一回になってしまっているんだけど……。忙しい時は仕方ないわよね。


 わたくしは聖女様だから、無理のない範囲で貧困者救済病院へのお見舞いも続けていくつもりよ。


 病弱なアンナ様は、王都以外にある貧困者救済病院も視察しているの。いずれ『聖女ニーナ医療基金』を使って、全国各地にある貧困者救済病院も、民たちに寄り添える病院に変えてくれるはず。


 これまでの貧困者救済病院は、ボロボロの建物で、器具も揃っていなくて、診察時間は二時間ぽっち。あれでは、民に寄り添っていたとは言えないわ。


「聖女様、温かいお風呂をありがとうございます!」


「ニーナ様のおかげで、体調が良くなりました!」


『聖女温泉』の前にも、たくさんの民がいたわ。民たちの服は古ぼけていたり、質素だったりした。けれど、民自身は、どこもかしこも清潔だったわ。


 温泉を作ってくれたのは、マリア王妃殿下と辺境伯夫人のエカテリーナ様なんだけど……。わたくしが民を気にかけて、お二人に頼んだことを、民たちはとっても感謝してくれているの。


 マリア王妃殿下と辺境伯夫人のエカテリーナ様は、今は王都以外の貧しい人々のために、全国各地に温泉を作ってくれているのよ。温泉作りって、とっても楽しいらしいわ!



 わたくしたちは、こうして『再開発地区』を通り過ぎ、王宮へと続く大通りに入ったの。


 大通りにも民たちがたくさん並んでいて、わたくしたちにカラフルな紙を投げてくれていたわ。


 ――それなのに……。


 かわいい紙の雨がいきなり渦を巻いて、そこから黒い魔物が飛び出してきたの。


 黒い髪に、短い真っ赤な二本の角。白目のはずの場所が黒くて、瞳は禍々しい紫色。お肌も紫色よ。口にも二本の赤い牙が生えている。顔の作り自体は、そう悪くないわね。生意気な美青年という感じの顔よ。


 着ているのは、執事みたいな燕尾服。左胸に金色の勲章みたいなものをいっぱい付けているの。


 背中には、コウモリみたいな黒い羽根。


 手には黒い巨大なフォークを持っているわ。お食事の途中で来ちゃったのかしら……?


 その魔物は宙に浮かんで、わたくしたちを見下ろしていた。


「貴様! そこの聖女の妹! どういうことだ!?」


 わたくし自身も聖女だけど……。


 聖女の妹といったら、わたくしのことよね?


 どうやらこの魔物は、わたくしに話しかけてきたようだわ。


「どちら様ですか?」


 わたくしは礼儀正しく訊いた。誰なのか、まったくわからなかった。


「俺様は悪魔レモラだ! おい、偽聖女! お前は俺様に聖女だと言われて、すっかり信じていただろう!? 俺様は作戦が成功したと思って祝杯をあげ、うっかり二年も寝入ってしまっていた! お前はこの間、なにをやっていたんだよ!?」


 偽聖女というのも、わたくしのことよね!?


 この悪魔レモラという方、すごく失礼だわ!


「わたくし、あなたと会ったことなんてないわ!」


 いきなり出てきて、なんなのかしら!?


 ずっと眠っていたなら、まだ寝ぼけているの……?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ