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2.スイナンノソウ

コンビニの袋にびしょ濡れの上着を入れ、買ったTシャツを着る


まったくひどい目にあった


まさかアイツの元カノがいて、ソイツに頭からビールをかけられるとは……


本当にひどい目にあった


そのうえアイツらには何も言うなと、メモまで渡して口止めしてきた

何を企んでいるのやら

ま、かなり多めにクリーニング代を頂いたから、今晩は黙っていてやろうと思う


「まあまあ!何か都合の良いこと考えてます?」


耳障りな女の声

目の前に、あの女占い師が立っていた


「お、お前……」


いつの間にか自分は人気のない路地裏に入っていた

そして気配もなく、この女……

何故かのどが、胸が締め付けられる


「水難の相、インチキ臭かったけど、良く当てたな、褒めてやるよ」


「あは、本当に占ったと思ってるんですか?」


「?」


「あの店員の彼女と、私がグルだと思わないんですか?」


「!?」


「あと、まさか水難の相……あれで終わりだと思ってます?」


「どういう意味……だ……?」


「あれあれ?思い当たりません?そんなにあなた善良でしたっけ?」


「お前、何を知ってる!?」


「あなたが鬼畜の一人だということ」


占い師の女は、ベールをそよりと揺らし、笑った。

女が指を一つ立てる

真っ白い細く長い指

まるで夜空の月のように


「一つ!あなた女性を騙して、あの男に紹介してましたね?」


あ、返答はいいです、と女は手を振る

そして、二本目の指を立てる


「二つ!紹介料としてあの男からお金を受け取り、別れるときは始末料と称して、また多額のお金をもらっていた」


コツコツと女が自分の周りを歩く

耳障りだ!目障りだ!何もかもが気に障る!!


「三つ!」


三本目の指が立てられる


「彼に振られた彼女たちを、脅迫してお金を……」


我満ができなくなって、女に手を伸ばし口を塞ごうとする

ぬるりと女はその手をかわし、くるりと回る

勢いのまま地面に転げた


ドカッ!

背中に衝撃

女の足が背中を踏みつけていた

そのままカーテシーでもするかのような優雅な佇まい

ゆっくり女の口が耳もとに近付いてくる

そしてーー


「その脅迫材料は情事の盗撮・盗聴……ほんと鬼畜ね」


人の背中の上で、女は不気味に笑う

何故か起き上がれない

あんな見た目は華奢な姿から、想像もつかない力を感じる


「私これでも忙しいんですよ。これから彼にも会いに行かなければいけませんし、そのあともイロイロ、ね」


指先にひっかけて、鍵付きのキーホルダーをくるくると回す

そのキーホルダーは、どこかで見覚えがあった


「あなたみたいな小物に時間はかけられないんですよ。ああ、水難の相でしたね、今から水難が起きますから、覚悟してくださいね」


女はキーホルダーを懐にしまい、どこからともなくペットボトルを取り出す


ドカッ!


今度は頭を踏みつけられたようだ

アスファルトに顔面を打ち付けられ、思わず涙がにじむ


とぽとぽとぽ


最初に頬が濡れ、首筋ひんやりと何かが流れた

次第に顔全体が濡れ始め、土と埃の匂いが強くなる

頭を踏みつける力が強くなる

鼻や口に砂の混じった水が入り込む

馬鹿かコイツ!こんな水溜まり程度で大の大人が溺れるとでも?


「するんですよ、溺死。5~10センチ程度で大人でもね」

頭を踏む足の力が強くなる

鼻や口から水が入り込む

慌てて呼吸を止めようとするが、間に合わない

「大丈夫!いくら忙しくても、あなたの死に目くらいはしっかり見届けますから」


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