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きっと、そばに  作者: ミソラ


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ルノヴァン宮殿④

「……久しいな。イーヴ、ラウリーヌ。」


 リオンとラウリーヌは場違いなほど広い、海外からの賓客を迎える謁見の間に通された。贅を凝らした空間は太い大理石の柱で支えられている。

おそらく、その柱の陰に見張りが立っているのだろう。


 壇上の玉座に座るローランドがリオンとラウリーヌを見下ろした。

 ローランドの両脇には北部と西部の諸侯と重臣たちが並び、離れたところにランベールをはじめ近衛兵が警備している。

 みな一様に驚きを貴族の仮面の中に押し込んで、リオンとラウリーヌを見ている。


(なるほど「金と銀」か。ラウリーヌはある程度予想していたが……イーヴ。生きていたのか。)

 ローランドはふふっと笑った。

(美しい組み合わせではあるが、な。)


「今日呼んだのは、そなたらの罪を詳らかにするためだ。」

「……罪。」

「盗賊であり、違法賭博を営業している罪。」

「取り締まることもできず放置した罪……か?」

 リオンが嘲笑うと、ローランドの眉がぴくりと動いた。


「……不敬だ。」

「従兄弟同士ではないか。軽口も叩けないとは寂しいものだな。」

「反逆者の息子など従兄弟だとは思わぬ。」

「ふ、これでも今の時点で第一王位継承者だ。この王宮の兵士たちも私を捕まえることはできないよ?

 そちらは勘違いしているかもしれないが、私はサージェスと養子縁組はしていない。法的にはまだイーヴ・リオネル・ジスラール。……れっきとした王族だ。」

「そんなもの、私の力で覆すことも……。」

 

「申し訳ありません! 申し上げますっ! ヴィドルバン帝国皇帝より使者が参りました!」

「待たせておけ。」

「そ、それが……。」


 コツコツと一人の男が文書を携え、脇に二人の従者を連れて入ってきた。

 その男を見るなりローランドは顔色を変え立ち上がった。

「ジョスラン・マルユス・ベルジュラック……!」


 ジョスランは周囲のざわめきにかまわず胸に手を当てて優雅に腰を折った。

「ジョスラン・デューイ子爵と申します。ヴィドルバン帝国皇帝アーチーより遣わされました。緊急の用件にて失礼とは存ずるが急ぎ伝えさせていただきます。」


 ジョスランは体を起こし、ローランドを微笑みながらまっすぐ見た。

 どすんと玉座に座るローランドを確認して徐に携えていた文書を広げる。


『ヴィドルバン帝国皇帝アーチーは、現ジスラール王国国王ローランド一世を認めず、イーヴ・リオネル・ジスラールを支持する。』

「内政干渉だ!」


「南部貴族一同、ローランド一世の退位を要求いたします。」


 リオンとラウリーヌ、そしてジョスランの背後の扉からサージェス伯爵をはじめソビシュ伯爵など南部貴族たちの代表が入ってきた。

 その中にはラウリーヌの兄のキーファーもいて、ラウリーヌと目が合うと微笑んで小さく頷いた。


「承諾なされない場合、南部一帯はジョスラン・マルユス・ベルジュラックまたの名をジョスラン・デューイを君主とするベルジュラック公国として独立することを宣言いたします! ベルジュラック公国はジスラールに従属せず、ヴィドルバン帝国と友好を結びます!」


「謀反人どもを捕らえよ!」


 ローランドが叫ぶと近衛の騎士や王宮警備の兵士たちが雪崩れ込んできた。

 その間に南部所属の騎士たちが居並ぶ重臣たちを囲んだ。

 

「無礼なっ。」

 北部諸侯ヴァリエ公爵が声を荒げたが、ジョスランが冷静な声で通達した。


「ジスラール王国王妃キャレル陛下より北部ヴァリエ公爵へ横領と傷害の訴えがございました。キャレル王妃の予算を改竄したほか侍女への暴力があったとか。

 その侍女はヴィドルバン帝国伯爵家の息女であり、皇帝陛下より裁判にかけられるまでヴァリエ公爵の身柄を確保しておくようにと命じられております。……しかしジスラールの法で裁かれますのでご安心ください。」


「死にぞこないが……っ。」

「ご自分の立場をわきまえられよ。今はジスラール王国存続の瀬戸際ですぞ?」


 ジョスランの後ろの従者が抱えていた荷物の布を取り払うと、中から数本の剣が姿を現した。ジョスランはその一本を持ち、するりと剣を抜いた。


「謁見の間に武器を持ち込むとは!」

「私はこの国を信用しておりませぬ。……それに、しばらく見ぬ間に宮殿の警備の質も落ちましたな。ヴィドルバンの使者だと言うと身体検査なしで通してくれましたよ。ラウリーヌ、イーヴ!」


 レノーがラウリーヌとリオンに剣を投げると、二人も受け取って剣を抜いた。

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