表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
きっと、そばに  作者: ミソラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/70

ヴィドルバン帝国①

「やあ、来たか。ジョスラン殿。」

「拝謁の栄誉を頂き恐悦至極に存じます、皇帝陛下。」

「堅苦しい挨拶はなしだ。さあ座ってくれ。」


 島国にして最強の海軍を保有し、世界各地に植民地を持つヴィドルバン帝国。

 その権勢を具現化したミレイア宮殿の中にある皇帝の私室。

 ここに通される人物は稀で、ジョスランと呼ばれた黒髪長身の男は数少ない一人である。

 彼がまだこの国に現れてから間がないが、既にヴィドルバン帝国皇帝アーチーのお気に入りとなっていた。


「まさかジョスラン・マルユス・ベルジュラックが生きてこの国にいるとはローランドも思うまい。」

「死者にベルジュラックの名は名乗れませんがね。……皇帝陛下も最初は信じていなかったではないですか。」


 アーチーは朗らかに笑った。


 *


 大小の帆船を巧みに動かして商船を襲っていた海賊に対しヴィドルバン帝国海軍も討伐に当たったが、意外にも海賊船の船長は正式な形で海軍の提督に使者を遣わし対話を望んだ。船長は警戒する提督の提案に応じてヴィドルバン帝国領海内の島で、二人の側近のみを連れて現れた。


「取引に応じていただければ貴国が探していたものを渡そう。」

 そう言って取り出したのは、暗黒時代に紛失したヴィドルバン帝国の国宝でもある宝剣だった。

 

「暗黒時代の戦のどさくさに紛れてジスラール王国に持ち去られ、教会の奥深くに隠されていた物だ。」

 側近らしき男が抱えている物を巻いている布をめくり、ちらりと宝剣の一部を見せると提督はごくりと唾を飲み込んだ。

「……真贋を確かめるため、こちらに渡してもらおう。」

「応じられぬな。ではこの話は終わりだ。西の大国に売ればいい金になるだろう。」

「ま……待て! なにが望みだ?」

「皇帝との謁見。」

「海賊ごときがなにを……!」

 黒髪の船長はヴィドルバン帝国海軍提督を見下ろした。そして踵を返しながら微笑んだ。

「失礼する。」


 提督が慌てて海賊船の船長を引き留めて急ぎ本国に問い合わせ、ヴィドルバン帝国皇帝と海賊船の船長が顔を合わせることとなった。


 果たして帝国の壮麗なミレイア宮殿にある謁見の間に現れた男は、ジスラール王国で処刑されたとされるジョスラン・マルユス・ベルジュラックと名乗った。


 アーチーは、最初は確かに疑っていた。目の前にいる正装した海賊が本当に隣国で処刑された男なのかと。

 ジョスランは体が不自由になってから表に出ることはなかったので、ローランドと皇帝の妹キャレルとの結婚式にも列席していなかった。そのためヴィドルバンに彼を知る者はいなかったからだ。


 しかし会えば分かる。


 彼は本物だ。


 *

 

「ベルジュラックでなくとも、そなたは多大な功績を挙げてくれた。……それにジスラール王国の内情には興味深いものがある。」


 きらりとした鋭いペリドットの瞳がジョスランを見る。この瞳にすくみ上がらない人間は少ないが目の前の男は平然と受け止めている。それを確認してアーチーはふっと態度を緩めた。

 

 人払いした皇帝の私室には二人しか存在しない。監視はされているだろうが皇帝による深い信頼が窺われる。

「ヴィドルバンの至宝である宝剣を隠し持っていただけではなく、愚かにもローランドが我が妹を冷遇しているとはな。」


 確かにアーチーの妹でありローランドの妃であるキャレルがルノヴァン宮殿の中で肩身の狭い思いをしているのは報告に上がっていた。しかし政略結婚であるし大人しいキャレルの性格では予想されていたことだった。


 しかし、夫としての責任も果たさず放置されているとは。これは帝国に対する侮辱である。

 キャレルも訴えてくればいいものをとも思ったが、自身の妻から「そんなこと言えませんわよ」と言われ、それもそうかと悲しくなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ