表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
きっと、そばに  作者: ミソラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/70

シリル監獄②

 処刑二日前。


「ジョスラン! 遅くなって申し訳ない。」

「レノーか……。」

「……! ジョスランその姿は……。」


 鉄製の柵の向こう、むき出しの石の床の上に置かれた簡素なベッドにジョスランが力なく横たわっている。ジョスランの衣服はところどころ破れ、そこから血が滲み出していた。


「なんで……、誰がこんなことを……!」

「……アンジェル王妹だ。彼女はなかなかいい趣味をしている。」


 ユベールの言っていた意味がわかったと笑うジョスランに、レノーとクレマンは目に涙を滲ませながら悔しげに唇を噛んだ。

 

「……監獄の者たちの買収は完了している。身代わりも用意した。ここから出るぞ。」

「ラウリーヌは……?」

「……すまない。」

 ジョスランが痩せて落ち窪んだ瞳を光らせて鍵を開けるレノーを見た。

 

「一足遅く……何者かに攫われた。」

「なに?」

 身を起こそうとしたジョスランの顔が痛みに歪む。

「もしかして麻痺しているのか? クレマン、治療を。」

「ああ。ジョスラン、動かなくていいから仰向けになってくれ。」

 

「……ラウリーヌさまの馬車がならず者に襲われて連れ去られた。」

「ならず者……? ラウリーヌはなぜ屋敷を出た?」

「コームの話だとラウリーヌさまは国王に呼び出されたそうだ。」


 ジョスランは無言で傷の手当てを受けているが、その表情は静かな怒りに染まっていた。

「ここは火傷か……。ひどいな。跡が残るかもしれない。」

 クレマンが顔を歪めながら怪我の具合を確かめ、薬を塗っていく。

 

「王都の屋敷は調査の名目で金品を差し押さえられた後、民衆に略奪された。タイルの一枚まで剥がされたよ。

 南部の土地は王家によって召し上げられそうなところを家臣団や騎士たちが守っている。

 ラウリーヌさまが国王に召喚されたことを知らせてくれたおかげでテレーズさまはなんとか逃げることができてサージェス伯爵と南部に逃れてもらった。」

 

 レノーがそこで言葉を切り、目を伏せて続けた。

「……ラウリーヌさまのことは残った者たちで捜索しているが、この監獄を掌握するためにも手が取られていた。ジョスランが帰ってくればバラバラになった者たちも結集するだろう。」

「……動かせる者は全てラウリーヌの捜索に当たらせろ。」


 レノーはぐっと奥歯を噛んだ。

「俺の、俺たちの主はジョスランなんだよ……。」

「おまえ……。」

「まずはジョスランの安全確保を最優先にしている。」

 ジョスランは今まで見せたことがないような感情をむき出した目でレノーを睨んだ。それでもレノーは怯まずジョスランを見返す。クレマンがゆっくりと立ち上がり、レノーを見やった。

 

「……怪我の手当ては終わった。あとは場所を移動して清潔にしてからだ。レノーもいいな? ジョスラン、飲めるか?」

 クレマンが丸薬と水を差し出す。

「睡眠薬じゃないだろうな。」

「鎮痛剤だよ。」

 

 クレマンは普段と違うジョスランに苦笑した。しかしなによりもジョスランが生きていることが嬉しい。クレマンにとってもジョスランは唯一の主だ。

 なにをするにもジョスランがいなければ意味はない。


 薬を飲んだジョスランはそのまますうっと意識を遠のかせた。

 レノーが呆れたようにクレマンを見た。

「睡眠薬だったのかよ。」

「眠っている間は痛みを忘れる。」

「詭弁だな。」


 レノーとクレマンはジョスランを担いでシリル監獄を後にした。


 *


 二日後、民衆の集まる広場で、クレマンの薬によって朦朧とし、左腕と左足の自由を奪われ目隠しをされた、同じシリル監獄に収容されていた囚人の男が処刑された。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ