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きっと、そばに  作者: ミソラ


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夜の城①7

「ねえアンヌ、今からお嬢さんのところに行くの?」

「また? アネット。何度来ても無駄よ。」


 今日も塔に繋がる鉄製の扉の横の壁にもたれてアネットはアンヌを待っていた。ワクワクする気持ちが抑えられない。

「わかってるよ。退屈しているだろうから、これを買ってきたの。渡してもらえる?」

「雑誌? あんたにしちゃ気がきくけど。」

 アンヌは疑わしげな目でアネットを見た。


「もう一か月近く塔の部屋に閉じ込められているんでしょ? こういうものがあればちょっとでも気がまぎれるでしょ? ほら、早く持っていってあげて。」

 間に挟んである号外が見つかれば意味がない。アネットは雑誌をぐいぐいとアンヌに押し付けて急かした。

「……ええまあ。わかったわ。渡しておく。」


 その夜、塔にある部屋からなにかが割れる音が響いた。


 *


「どうした? ラウリーヌ。」

「今すぐここから出して!」


 ラウリーヌがリオンの胸ににぐしゃぐしゃになった一枚の紙を叩きつけた。


「はあ、誰がこんなものをラウリーヌに渡したの。」

 床に落ちた皺だらけの号外を拾い上げると、そこにはベルジュラック公爵に対するセンセーショナルな文言が並んでいる。

 そして「処刑」の文字。

 

「処刑ってどういうことよ! あれからまだたった数日しか経っていないわ!」


 ラウリーヌはリオンの腰にある剣をすらりと抜いた。

「おいおいラウリーヌ。貴族の令嬢がそんなもの持っちゃだめだろう。」


 ラウリーヌはすっと背筋を伸ばし、剣の切先をリオンに向けた。

「私をここから出しなさい。リオン! あなた言ったわね? ジョスランの情報を集めてくると。それをもとに助けることができると。嘘つき! もうここを出ていくわ!」

「やけにさまになっているねえ。落ち着きなよ。君だって政治犯の婚約者としてお尋ね者になっているんだ。外に出るのは自殺行為だよ。」


 ラウリーヌは自らの髪の毛を掴み、持っている剣で引きちぎるようにして切り落とした。黄金の髪が煌めきながらはらはらと床に散らばる。

「なら私は今日からラウリーヌという名は捨てる。ジョスランの元に行けるのなら、助けられるのならなにも惜しくない!」


 リオンは複雑な思いを持ってラウリーヌを見つめた。ラウリーヌの強い意志を感じてがくりと俯き、大きくため息をついた。


「わかったよ。でも処刑が執行されるのは明日の夜明けだ。助けることは叶わないだろう。」


 ラウリーヌが剣をかちゃりと音を立てて落とし、床にしゃがみ込んだ。

「明日の夜明け……?」


(嘘よ、どうして。どうすれば……。)


 ラウリーヌの頭の中をぐるぐると疑問がめぐる。


(もう無理なの? どうしようもないの? なぜ? どうして……?)

 

 それでも、ジョスランに会いたい。姿が見たい。

 その後で追いかければいいだけだ。


「……いいわ。連れて行って。」

「どこへ? シリル監獄? 今は警備が厳戒体制で敷かれている。近づくのは無理だ。」


 シリル監獄から処刑場となる道は、南部の貴族たちがジョスランを奪還するために現れるのではないかと厳重な警備が敷かれている。リオンはそれをラウリーヌに言うつもりはない。

 しかしこのままでは単身ででも奪還作戦に身を投じてしまいそうだ。


「処刑場へ連れて行きなさい。」

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