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第六話 とあるネカマヒーラーの旅行

 翌日、さんさんと照りつける日光の元、セフィリアとレオンハルトは人で溢れるベルモンテ広場の片隅で話をしていた。


「レオンは盾スキルが60超えて、僕も神聖魔術が60になったけど、NPCが売ってるスクロールも奥義書もスキル50のものまでしかないよねー」


 どうやって手に入れるのかなあとセフィリアが口に出すと、レオンハルトが答えた。


「今日攻略情報を見た限りだと、どうやら種族ごとの里があって、そこで売られているみたいですよ」


「えっ、種族ごとって、エルファ、ホビティ、ドワーフィ、オーガン、ヒュームの5つだよね」


「はい、エルファの里では魔法系のスクロールと奥義書が、ホビティのとこでは遠距離武器とか軽い武器系の奥義書があって、オーガンの里では槌術スキルとか盾術スキルとかが売られているそうです」


 なるほど、魔法系はエルファ、軽量武器はホビティ、タンク系はオーガンという塩梅のようである。となると残ったものは──


「ドワーフィが生産系でヒュームはそれ以外全部?」


「そのようですね。汎用性の高い武器とか技術系のスキルは全部ヒュームの里にあるようです」


「うわー、面倒そうだね。じゃあまずはエルファとオーガンの里に行かなきゃか」


 セフィリアが里の場所が分かるかとレオンハルトに尋ねると、どうやらそこも調べていたようだ。いずれもベルモンテから馬車で30分ほどのところにあるようである。

 ちなみに、馬車とは比較的安価に利用できる交通サービスである。これも一部のプレイヤーが作り上げたシステムだそうだ。調教スキルで馬のMobをテイムして訓練し、木工・鍛冶・裁縫スキルで馬車を作ったと言われている。生産系のスキルを育てているプレイヤー達の一部は、ギルドを組んでそれぞれ都市のインフラを構築したりしているらしい。

 セフィリアは生産系のスキルを育てていないが、そういう話を聞くと生産も面白そうだなあと感じるのであった。


「よし、じゃあ行こうか」


 と二人が出発しようとした時である。近くの壁にもたれかかっていた小柄なホビティの男性が声をかけてきた。


「すまねえお二人さん、ちょっと良いか?」


「どうしました?」


 はて、と二人は思いながらもセフィリアが尋ねる。


「いや、実は話を聞いていたんだが、あんたらエルファとオーガンの里に行くんだろ?俺も同行させてくれねえか」


「それは構いませんが、どうして?」


 セフィリアは彼の提案を不思議に思った。馬車を使えばこの近辺のMobは近寄ってこない。わざわざ同行する必要があるのだろうか。


「実はその里で扱っている系統のスキルが60に達していないと、里に入れないんだわ。たとえばエルファの里に入るには何らかの魔法系のスキルが60を超えてないと無理だ。ただPTを組んでれば、PT内の誰かが超えてれば入れるっていう話らしい」


 なるほどそういう仕組みになっているのか。たとえスキル要求値に達していなくとも誰かに便乗して里に入り、今のうちに奥義書などを買っておけば、後から楽になるであろう。セフィリアはレオンと顔を見合わせて、口を開いた。


「なるほど、そういう理由があるのですね。良いですよ、一緒に行きましょうか」



 それから少し時間が経過し、彼ら3人は馬車の中にいた。ホビティの彼はゴールドラッシュ金山という名前で、生産系のプレイヤーとのことである。


「なんで金山さんは生産職なのにエルファとかオーガンの里に行こうとしてるの?」


 ヒュームなら分かるけど……、とセフィリアが問う。レオンハルトも疑問の声をあげていた。


「実はな、これはオフレコで頼むんだが、スクロールと奥義書は書写スキルで複製できるんだわ」


「書写スキルなんてものがあったのですね」


 レオンハルトが驚く。セフィリアもその存在を知らなかった。生産系のスキルにはノータッチだったのである。


「育ててるヤツの少ないかなりマイナーなスキルだけどな。それに自分の書写スキル値以下のスクロールとかしか複製できねぇから、序盤は全然役に立たないんだわ。NPCも売ってるしな」


 確かにその通りである。セフィリアもレオンもNPCからしか奥義書やスクロールを買ったことは無かった。


「だから、なんとか金貯めて里の巻物を買い込めるようにしたんだわ。これで書写スキルで複製すれば、まあ複製にもコストはかかるんだが、ベルモンテで里の巻物を売れるってことになる。それを誰よりも早くやっちまえばがっぽり儲けられるってわけだ」


 このことはオフレコで頼むぜ?とゴールドラッシュ金山は念を押してくる。なるほど、確かにそれは売れそうだ。というかセフィリア自身絶対に買うだろうと思った。


「それは夢があるね。じゃあさ、僕達が金山さんの店で買い物するときは何かサービスとか期待しちゃっても良かったりする?」


 協力者だし、とセフィリアは悪い笑顔を浮かべる。とはいえ見た目がエルファの美少女なため、あまり悪そうには見えないのであるが。


「いいぜいいぜ、成功した暁にはたっぷりサービスしてやんよ。だからこのことはホント内密にな」


 とことん念を押してくるゴールドラッシュ金山であった。



************************************



 道中特に問題もなく、無事にエルファの里にたどり着くことができた。ちなみに馬車システムを作り出したギルド「ファーストワゴン」は御者も派遣しており、騎乗スキルを持つ人物のいない利用者にはそれなりに安価で御者がつくことになる。安い理由は騎乗スキルを上げるついでに御者をやっているからだそうだ。騎乗スキルを上げる必要の無い人が増えたらもしかしたら利用料が値上がりするかもしれない、などとセフィリアはぼんやり考え事をしながらエルファの里の門をくぐる。門は巨大な樹木でできていた。


「うわ、すっご……」


 馬車で揺られてぼんやりしていたセフィリアの頭が一気に覚醒した。見渡す限りの緑。エルファの里は、超巨大な樹木に居住用の穴を作ったものだった。馬車で遠目から大きな樹があるとは思っていたが、まさかこれほどとは。そして至る所に様々な色に発光するクリスタルが浮遊しており、非現実的で幻想的な光景であった。


「すごいですね……!私ここに住んでみたいです!」


 レオンハルトのテンションが何時になく上がっていた。セフィリアにもその気持ちが良くわかった。ファンタジー系VRMMORPG、なんとロマンの塊なのか……、と感慨に耽っていると、ゴールドラッシュ金山が声を上げた。


「おーいお前さん達、いつまでそこで呆けてんだ?さっさと買い物すっぞ!」


 ゴールドラッシュ金山はいち早く金儲けしたくて堪らないようである。風情も何もあったものではないとセフィリアたちは呆れた笑いを零しながら付いていくのであった。



 それから数刻、買い物も順調に済み、今度はオーガンの里に向かった。オーガンの里は低い岩山にあり、建物も全て岩でできていた。そして何故か溶岩がそこらから溢れていた。

 幸い溶岩に触れてもダメージは受けないが、空気が非常に熱かった。それに加え、オーガンとは筋骨隆々で巨体の種族である。暑苦しいことこの上なかった。


「ここは早く出よっか……」


 セフィリアの提案に、他の二人も即座に同意するのであった。



 それから間もなく彼らはベルモンテの街へと帰還した。ゴールドラッシュ金山は相当に資金を溜め込んでいたようであるが、エルファとオーガンの里の巻物を買い漁った結果ほぼ所持金が底をついたようである。ドワーフィの里にはすでに行ったとのことで、ホビティ、そして非常に種類の豊富なヒュームの里の巻物はおいおい買い込んでいくとのことであった。


「金山さんの商売が成功することを期待してるよ。それじゃあまたー」


「金山さん、がんばって下さいね」


 セフィリアとレオンハルトがゴールドラッシュ金山に別れを告げる。かれこれゲーム内で3時間ほどは一緒に行動していた。それなりに親しくなり、フレンド登録も互いに行っていた。


「おう、でっけえ店を建ててやんよ。期待して待ってな!」


 まずは地獄の複製作業からだけどな!と言いながらゴールドラッシュ金山は去っていった。ホビティの小さい体躯とは思えないほどの、野望に満ち溢れる大きな背中であった。


「面白い人だったなあ」


 セフィリアはしみじみとそう呟いた。


「ですね。生産をやっている人たちってああいう方が多いのでしょうか」


「いやー、そうでもなんじゃないかなあ。こじんまりした露店とか開いて自分で作ったものを売って楽しんでる人も多いだろうしね」


 街中でよく見かけない?とセフィリアがそう問いかけると、レオンハルトも確かに言われてみれば、という顔になった。


「私が生産をするとしたら大商売とかよりも、そういうゆるい生産ライフが良いですね~」


「僕はどっちも楽しそうだと思うかな。まあ僕が商売で成功してる未来は見えないけど……」


「分かる気がします」


 いやいやそこは否定してよ、とセフィリアがレオンハルトに突っ込むと、彼は笑いながら謝罪するのであった。そんなやりとりをしながら今日の冒険は終わりとなり、彼らは現実世界へ戻っていくのであった。


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