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懐かしの



翌朝。



まだ、完全に日が昇る前。空は薄暗く、気温は低い。


悠は、いつも通りの時間に起床し、普段からしている修練を始める。

まず、魔力を体中に循環させ、効率や密度を高める。魔力を巡らすと、体の中から温まってポカポカしてくる。


次は、足運びや歩法の練習だ。

悠は、戦闘において、最も重要になるのが機動力だと考えている。なので、一歩ずつ集中して踏みしめる。


最後になり、やっと剣の鍛錬の時間がやってくる。

この頃には、悠の額には大粒の汗が浮かび、息もあがっている。また、最初は薄暗かったが、空は明るさを増している。





––––––シュッ! シュッ!



刀の風を切る音だけが静寂の中聞こえてくる。時折、襲ってくるモンスターを一刀のもとに斬り伏せていく。


昨晩の見張りは、ソルスにしてもらった。そのお陰か、今日はぐっすり眠る事が出来た。

王都に着いたら、とびきり美味しい肉串を食わしてやろう。



暫くして、朝のメニューを終えると野営地に向け、歩いていく。






☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆






「……それにしても長いな…。」


「…まあ、私達は平民だから待ち時間が長いのは仕方ないよ!」





そう


俺達は今、王都へ入るための手続きをしようとしている。だが、思ったよりも人が多く、なかなか行列は減らない。


「………何でこんな人が多いんだろうね。」


何時もは元気いっぱいのアリシアでさえ、この調子だ。俺なんて、今にも寝そうなくらい並ぶのに疲れた。



「…戦争が近いから、商人や、腕に自信がある冒険者が王都に集まってるんじゃないかな。」


「そうなのかな。」






「へぇ〜、ご明察の通りだよ。久しぶりに会ったけど、順調に成長しているんだね〜!」


「え……。…お前、誰だ?」


「………も、もしかして、覚えてないのかな〜?」



「…ユウ、あの記憶に残らなさそうな顔の人って誰なんですか?」


「……俺は知らんぞ。てか、どっかで会った事あったっけ。」



見た感じは、俺より一回り年上に見える。顔は、平凡と言えるが、どちらかと言えば、整っている部類に入るだろう。


いわば、『中の上』というやつだ。



「……本当に覚えてないんだね。」



「改めて、ボアの村で会った事あるから初めましては言わないよ〜。商人のマルスだよ〜!」


切り替えの早さは一流。流石は、王都へ進出する商人なだけはある。




ん?


この切り替えの早さはどこかで––––



「……あ。あのカモか!!」


「……へ、へぇ〜、僕の事をそんな風に思ってたんだ〜。」


マルスは引き攣った顔で笑うという器用な事をしながらも、スマイルを維持している。コイツは根っからの商人なのだろう。



「まあ、そんな事はおいといて、何の用だ。」


「……顔見知りがいたから話しかけたまでだよ〜。」


「……あんたも暇人だな。で、王都に店でも出すのか?」


マルスの表情に、一瞬だけ哀しげな表情が浮かぶが、直ぐに何時もの笑顔へ戻る。


「違うよ〜。……急に父が亡くなったから、僕が父の商会を継ぐ事になったんだ〜。良かったら暇な時にでも、見に来てね〜。」


「……残念だったな。…天国の親父が安心出来るくらい、しっかり頑張れよ。…あと、時間ある時に見にいくからな。」


「ありがと〜。商会は、王都の3層目の東側にあるよ〜。」


「分かった。楽しみにしとく!」



その後も、順番が来るまでマルスとアリシアで話し続けていた。






☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆






王城【玉座の間】




煌びやかに装飾された玉座の間。その荘厳な雰囲気の中、一番上座に座る、男が跪いて頭を垂れているローブの者に問いかける。



「–––強大な魔力の波動を感じた。というのは誠なのか、オリバーよ。」


オリバーと呼ばれたローブの男は、真剣な表情を浮かべたまま喋りだす。


「…はっ! 宮廷魔導士の名にかけて、偽りはございません。」


「…皆の者、どう思う。」



「早急に討伐を!!」

「いえ、討伐は早計と思います!」

「国にとって危険でないのなら放置すべきです!」



様々な意見が飛び交うが、上座に座る男が一喝すると、急激に辺りは静まる。



「…余としては帝国との戦の為に戦力は温存しておきたい。それに、善悪は別としても、強大な魔力を持つ者を味方にするのと、敵にするのでは、帝国との戦の結果が大きく異なってくる。」


「しかし、如何様にして強大な魔力の主を探し出すのですか。」



「無礼ながら、発言させて頂いてよろしいでしょうか!!」


オリバーは、上座に座る男に、許可を求める。



「うむ、言ってみるがよい。」


「ありがとうございます!」

「王都にある、闘技場(コロッセオ)を使用して、魔法だけで闘う大会を催すのは如何でしょうか。」


上座に座る男は、口元の髭をさすりながら、少しの間考え込む。


「……ふむ、悪くはないの。じゃが、かの者が必ず出場する可能性はないぞ?」


「王よ、私は、何か景品を出せば解決する問題かと愚考いたします。」



その一言に、室内に騒めきが広がる。


「たかが、1人の魔法使いを引き入れる為に金をいくら使う気だ!!」

「そうだ!! 王国も金が溢れている訳ではないのだぞ!」

「もう少し考えてから発言せよ!」





「よい、余が許可しよう。」


王の一言で、その場の雰囲気が変化する。王の仕草や、眼光、一言にさえも覇気が宿っているかのようだ。


先ほどまで、騒ぎ立てていた貴族らしき輩も、今では知らん顔をして座っている。



「オリバーよ、そなたの主導にて、魔導大会を開催せよ。期間は一ヶ月以内じゃ、それ以上延びると帝国に抜け駆けされかねんからの。」



「オリバー、おぬしに王命を下す。」

「魔導大会にて、件の魔法使いを見つけ出し、我が国に引き込むのだ。…頼んだぞ。」


「王命、しかと受け賜わりました。このオリバー、命に代えても果たしてみせます!!」


オリバーは、恭しく頭を垂れ、王命を受ける。周りの貴族からは、もう野次は飛んでこない。

そのまま、一礼すると扉を開け退出していった。




すみません。話が思ったより進まなくて、王都に入るのは次回からになります!

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