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先代



(……やばい。これは修羅場だな……。)


まず、悠の頭によぎったのは、これから待ち受けるであろう修羅場についてだ。


「……何をしておるのじゃ。妾に発情するのは、男として当たり前じゃが……。妾の主ならば少しは自重も必要じゃぞ。」


幼女が言い終わると、今までフリーズしていたアリシアが、油の切れたロボットの様に、ぎこちなく動き始める。



「……ゆ、ユウ。…な、な、ナニしてるの」


「…アリシア…誤解だ。これには、深い、深〜い訳があってだな––––」


「言い訳なんて聞きたくないよ!ユウの馬鹿ぁ!!」


アリシアは、言い終わると同時に、高速で平手打ちを繰り出した。

悪い事はしてないが、ここは、甘んじて受け止めるべきだろう。





–––––バチン!!!


辺りに、頬を打つ時の乾いた音が木霊する。


武術の修練の賜物というべきか、アリシアの平手打ちは、とても痛く、心に響いた。とだけ言っておこう。










「–––––だから、この娘は俺が召喚したんだよ、信じてくれた?」


「…うん。…それでも、裸を見るだけじゃなくて触ったんだから、平手打ちの事は謝らないよ!」





「……もう話は終わったかの?」


幼女が気まずそうに話しかけてくる。痴話喧嘩のような雰囲気に耐えれなくなったのだろう。


今は、応急処置としてアリシアの服を着せている。


だが、アリシアの豊満な体とは差があるせいか、服がダボダボしていて、かなり際どい所まで見えている。

その手の趣味の人なら、襲いかかるだろう。


……1つ言っておくが、俺はロリコンではないぞ。





「…ひとまず終わったけど、貴女は誰なの?」


「む?…妾のことか?」


「そうだ、お前以外いないだろ。」


悠の言い方に棘があるのは仕方ないと思う。なにせ、平手打ちの原因の半分くらいは、幼女にあるのだから。


「ふむ、妾を見て誰か分からぬとは……。時は残酷なものよの。」

「妾は…先代、魔王イブリースじゃ。」



「「………。」」



–––––––えぇぇぇぇ!?



「…ま、まあ。落ち着こうか…。」


「そ、そうね。落ち着きましょう。」


「まず、確認だが、先代魔王は勇者に討たれたんじゃなかったのか?」



「そのように伝わっておるのか。…300年前のあの日、妾は助けられたのじゃ。………勇者にな。」


「どういう事だ? 魔王は人類の敵で、勇者は人類の希望だろ。何故そんな事になった」




「話してやるから少しは待つのじゃ。」


先代魔王は、一呼吸間をおいて話し始める。


「妾は、時を司る魔法を使っておった。じゃが、勇者が魔法反射の、魔法を使ってきたのじゃ。……妾の魔法は強力ゆえに、そのまま自分の魔法で自滅していったのじゃ。」


「じゃが、勇者は戦闘中にも関わらず、妾を舐め回すように眺めた後に言ったのじゃ、『ロリは正義だ。俺に美幼女を討つことなど出来ない。」とな。」



(おい!! 変態勇者(ロリコン)が!!)


「……それで?」


「妾は力を削がれた後に、勇者達によって魔王城の地下にある魔水晶に封印されておる。」


「ん?その言い方だったら、イブちゃんは、まだ魔王城の地下にいるってニュアンスだよね。」


「そうなのじゃ。今の妾は、本体を地下に封印されておる。」


「なら、何で召喚する事が出来たんだ?」



「それは妾にも分からん。普通の召喚魔法では、到底無理な事じゃが…。主よ、何か特別な事をしたかの?」



(ヤバイ…。思い当たる事がありすぎる。てか、魔術にしただけじゃ無理だろ。女神の加護があっての召喚だよな。)



「…ま、まあ。心当たりが無いと言えば嘘になるが…。」


「…ユウ。何をしたか正直に話してね?」


アリシアの本気の圧力(プレッシャー)にビビりながらも、本当の事を告げる。



「…ふむふむ。多分じゃが、主の魔力では、妾を召喚するには、些か火力不足じゃの。……じゃが、女神とやらの魔力を用いた事で、妾の精神を呼び寄せた。という感じかの。」


「今の妾は、いわゆる精霊と同じ状態じゃからの。」


「…それなら、契約するのも可能なのか?」


「可能じゃと思うぞ。」


「やったね!ユウ! イブちゃん!これからよろしくね!」


既にアリシアの中では、友達認定しているのか、とてもフレンドリーに話しかけている。イブリースもそれを嫌がる素振りは無い事から、まんざらでもないのだろう。


魔王としてどうかとも思うが、それも仕方ないのかもしれない。

300年近く、封印されずっと孤独だった時に、突然、話せる者が現れたのだ。誰だって喜ぶだろう。



「それじゃあ、契約を結ぶぞ。」


「妾からの条件は、魔王城の地下にある封印を解いて、妾を地下から連れ出して欲しいのじゃ。」



「分かった。…力を貸してくれるなら、俺からは特に言う事もない。」



悠はそう言うと、イブリースの額に軽くキスをして、魔力を流し込む。流れ込んだ魔力が発光し、淡く輝いている。


イブリースも同じように魔力を流し込み、双方が契約を結ぶ。


これで、契約は成立した。



もし、契約を破ると魔力を扱えなくなったり、様々なデメリットがあるから、普通は契約を破る様な事はしない。



「…もう直ぐ、王都に着くから送還していいか?……王都に入ったら出してやるから。」



イブリースの責めるような視線があったからか、王都に入ったら出してやる。と約束をしてしまう。



(先代魔王とか、トラブルの匂いしかしないな……。何もなく異界の奴等を滅ぼせたらいいんだが。)



悠の憂いは、満天の星空に掻き消された。



次回から、王都に入ります!

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