一章エピローグ
カエルの干物や、蛇のホルマリン漬けなどが陳列された広間の中心に、壮年の男がいた。
男は右手に光り輝く魔石を取り付けた杖を携えていて、首元には強力な神聖属性の魔力を宿したネックレスをしている。
「…魔界に御わす大悪魔よ、我の求めにこたえよ––––」
先程から、ずっとこの調子で呪文を紡ぎ続けている。足元には血液で作られた様な、濃い赤色で魔法陣を描いている。その光景は、悪魔王でも喚びだすかの様に盛大なものだ。
呪文を紡いでいる魔導士の額には大粒の汗が滲み、頬を伝い地に落ちていく。魔法陣の外には、魔導士の高弟らしき者達が魔封じの結界を張っている。召喚対象の力を抑制する目的と、もし悪魔に憑依された時にも出てこれない様にする意図も含まれているのだろう。
「クリプト様、結界の準備が出来ました。」
高弟の1人が報告をするが、魔法の制御に集中しているのか、頷きを返すのみだ。
暫くして、結界内に満ちていたクリプトの魔力が魔法陣を通して増幅され、収束していく。
魔力が臨界に達した、と思われた刹那。
込められていた魔力が霧散した。
いや、正確には何者かに喰われた。と表現するべきだろう。
「な!?……何が起こったのじゃ」
予想外の展開にも、直ぐ我にかえる所は流石といえよう。だが、今回は相手が悪かった。
クリプトの魔力が霧散した場所に亀裂がはしる。
ミシミシと空間が軋み、高弟達は体を震わせて何者かに怯えている。
クリプトはゆったりと構えているが、眼光は鋭く、いざという時にも対応出来る姿勢は崩さない。
–––––––バリンッ!
何かが、砕ける様な音と共に、異質な魔力が流れ込んでくる。
何かは、徐々に輪郭を形成して、姿を現していく。
その姿は、古に伝え聞く、悪魔と寸分の狂いも無かった。恐らく、これが悪魔と呼ばれる存在なのだろう。とクリプトは直感した。
「…お前達は、先に、この事を皇帝に報告しろ。………グズグズするな!早く行け!!」
あまりの恐怖に我を忘れていた高弟を一喝すると、意識が戻ったのか慌てた顔で走っていく。
「……へえ、おじさん良い魔力してるじゃない。僕が有効活用してあげるから、肉体を渡して?」
「誰が渡すか、お前は此処で儂に使役されるべき存在なんじゃぞ?……あまり調子にのるでない。」
クリプトの体から、四方に魔力が撒き散らされる。尋常じゃない程の魔力を受けても、悪魔らしき者は、平然としている。その事から、明らかに、クリプトを上回る実力を持っている。
「ふむ、それでは隷属の魔法をかけるか。」
クリプトは、淡々と詠唱を始め次々と詠み終えていく。
悪魔は、クリプトへ攻撃をするが、結界を貫く事は出来なかった。だが、諦めずに、しつこく攻撃を続ける。だが、結界に弾かれ満足にダメージを与えられていない。
その間に、隷属の魔法準備が整い、魔力を収束・圧縮して放つ。
真っ白な光は、視界を駆け巡り、白く染めていく。
ヒキニートが転生したら吸血鬼だった。
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