濃密な魔力
(ソルスも強くなったな。…Sランク冒険者でもなければ、討伐出来ないだろうな。まあ、そんな事させないけど。)
ソルスを送還し、荷物を確認すると悠は眠りについた。
翌日。
悠は起きると、瞼を擦りながら立ち上がる。宿の側の井戸で顔を洗い、食堂で朝食を摂る。
今日はシンプルに、ベーコンエッグ、サラダ、柔らかいパンだった。全ての食材が新鮮で、素材そのものの味を美味く感じた。
美味い朝食で舌鼓をうった後は、アリシアの家に向かう。
今では、通い慣れた路を歩いて行くと、様々な思い出が蘇ってくる。
色々な事があったが、ダンジョンを完全制覇した後は、この街を離れると思うと、少しばかり哀しくなってくる。
最初は、こんなにも感傷的な気持ちになるとは思いもよらなかった。
森の狩人のメンバーとの別れを経験し、アリシアやアグネスさんとの出会いを経て、自分も成長出来たと感じた。
古くから、『出会いと別れは、人を成長させる』とは、よく言ったものだ。
感傷に浸っていると、目の前にアリシアの家があった。悠は普段通り、アリシアに向けて呼び掛ける。
「おーい!アリシア!着いたぞ!」
暫くして、ドタバタと聞こえてきそうな気配の後、アリシアが出てきた。
「…ユウ!遅くなってごめんね。」
「全然大丈夫だよ。……今からダンジョンに行くけど準備は出来てるか?」
「うん!ダンジョン攻略を楽しみにしてたから、忘れ物は無いと思うよ!」
屈託のない笑顔で、純粋に言われると、自分が何か悪い事をしたのかと焦ってしまう。
「…そうか。さあ、ダンジョン攻略を始めよう。」
「えい、えい、おー!」
「…遠足じゃ無いのは分かってるよね?」
「勿論!でも、こっちの方が元気出そうじゃない?」
「…まあ、そうなのかな」
(うん、これは絶対に悩んでも無駄なやつだ。)
内心、苦笑しながら、ダンジョンへ向けて2人は歩き出す。
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悠達は、41層へ、転移魔法陣を利用して移動する。
俺も何時かは、転移系の魔法を覚えたい。
進んで行くと、Aランクモンスターが群がってくる。
それを、神聖属性を纏わせた刀で切り裂きながら、進んで行く。
45層、46層、47層を超えて、今では48層まで踏破している。
ここらで一旦、俺の次元結界を使って、仮眠や、ご飯を、交互に摂取していく。
数時間、休憩してから、ダンジョンの攻略を再開させた。
最下層から、濃密な魔力を感じた。思わず身構えるが、殺気は無かったから、気のせいだと思いたい。
若しくは、相手はまだ気付いていないかだ。
暫くして、49層に辿り着く。
悠達は、徐々に50層、所謂最下層へ向けて進撃していく。
モンスターを倒して、また何回かレベルアップをした。
俺は、今の時点で、人類辞めたってレベルなのに……カンストしてないとか。
やがて、最下層への扉の前に辿り着いた。
扉をゆっくりと開いていく。重々しく扉は開き、中の景色が見える様になってくる。
50層への扉は、俺達が初めて開けたのだろう。そんな気がした。
最下層は他の階層とは異なり、濃密な魔力が充満していて、Bランク以下の冒険者なら、魔力酔いを起こす程の密度だ。
俺も、アリシアも実力はAランク以上だから苦にはならないが。
図書館で調べた時は、最奥にダンジョンコアが鎮座されている。と記述されていたが、ダンジョンコアは無く。
代わりに、大柄で筋肉質な身体のシルエットが見える。
ソレは此方を向くと、口が裂けるほど、ニヤリと嗤い話しかけてくる。
「ようこそ、私の城へ!! 貴方達は、今夜のディナーにしましょう。……さあ、この場で屍を晒しなさい!!」
人影が近付くにつれ、段々見えてくる。
ソレは悪魔だ。
禍々しいオーラを放ち、重く粘着質な魔力を纏っている。
以前闘った悪魔とは、文字通りレベルが違うのだろう。
悠はゆっくりと、刀を抜き身構えた。




