レベリング
遅くなってしまって、すみません!
暫くして、親子水入らずの団欒を終えたのか、アリシアが戻ってくる。
表情は以前に比べ、柔らかくなり、アリシアの美貌を最大限引き出している。
「ユウ!お待たせ!……気を遣ってくれて、ありがと!」
「好きな女に気を遣うのは、当たり前だよ。……これからダンジョン攻略する為に、アリシアに頑張って欲しい事がある。」
「私は、ユウの為なら、何でも出来るよ! ……私は何をするの?」
悠は、間を置きながら喋りだす。
「アリシア、君には固有スキルが宿っている事を覚えてるね?」
「…うん。お母さんから貰った力だよ、それがどうしたの?」
「…そのスキルだけど、アリシアが、発動させた事は今まで1度でもある?」
アリシアの表情に影が差したが、気のせいではないだろう。
「……ううん。…今まで、1度も無いよ…。」
「それを今回は、十全まではいかなくても、半分以上は、引き出して欲しい。」
「分かったけど、どうすれば良いか分からないよ…。」
アリシアは暗い表情になり、何時もの元気が無くなっている。
「俺に考えがある。…元はアグネスさんが持っていたスキルだから使い方を熟知している筈。……気不味いと思うけど、教えてもらえる様に頼んでみよう!」
アリシアは頷くが、その顔色は優れない。
「…でも、何でいきなり固有スキルを使い熟すって言い出したの?……あ、ユウに不満がある訳じゃないよ!?」
アリシアは、慌てて言い直すが、悠は気にした様子は一切無い。
「不満が無い事くらい知ってるよ。」
「それはね、ダンジョンを攻略していくと、50層制覇するまでは、ダンジョンから途中退場出来ないのは、知っているよね?」
「知ってるけど…。私は関係あるとは思えないな」
「例えば、攻略途中に俺達を超える敵が現れたら?アリシアなら如何する?」
アリシアは、暫く考え込んだ後、何か閃いたのか元気よく答える。
「逃げたら良いんじゃない?」
アリシアに無言で拳骨を入れる。
–––ゴン。と鈍い音を立て、堪らず、アリシアは頭を押さえた。
「ユ、ユウ!…何するのよ……。」
涙目になりながら抗議しているが、悠はそれを遮り喋り始める。
「アリシア…。逃げればって簡単に言ってるけど、10層毎にしか、転移ポイントは無いの覚えてた?自分よりも格上の敵から10層も逃げれる訳がないだろ?」
アリシアは納得した様で、目をキラキラと輝かせていた。–––––子供っぽくて可愛い奴だな。
そう思いながら、言葉を続ける。
「…もし、その時に、切り札を準備しているのと、していないのとでは全然話が違ってくるからだろ?」
アリシアは感心しているのか、頻りに頷いている。こんな仕草1つとっても、可愛らしい。
「分かったわ!…今からお母さんに固有スキルについて、教えて貰ってくるから3日間だけ待ってて欲しいの。その間に絶対、自分の力にするから!」
真剣な表情で、懇願している。悠は満足そうに頷くと言葉を紡ぐ。
「分かった、3日間は、互いにレベルアップ出来る様に工夫しよう。……3日後に、俺はアリシアを迎えに行くから、その時はダンジョンを完全制覇しよう」
「分かったわ!ユウの度肝を抜く様な強さを、身に付けてやるわ!」
アリシアは、悠にそれだけ伝えると、家の方へ向かって走って行った。
「さて、俺もレベリングするか。」
悠は、ダンジョンへ向けて歩き出す。途中の屋台で、3日分の食糧を買い込んで……。
––––––42層–––––––
––––ヒュン。
死神の鎌が耳元を掠め、髪の毛を数本切られる。
鎌を振り切り、ガラ空きの胴に、神聖属性を込めた一閃を放つ。神聖属性を付与した刀は、半霊体のレイスの体を両断する。
神聖属性の魔法は亡者を惹きつけるのか––––
–––––周りからは、続々とエルダーリッチや、ソウルイーターが集まってくる。
男は、右手と左手、それぞれの手に神聖魔法を圧縮し、重ねていく。
その間も、モンスターが迫って来るが、男は集中力を途切れさせる事なく、淡々と魔法を重ねる。
既に、二回重ねているが、もう一度両手に魔法を発動させ、圧縮し重ねる。
周りの空間が、魔力にに耐えかねて、ギシギシと軋んでいる様に錯覚する。
男は編み上げた魔法を解放するべく、右手を足元に向け、魔法名を告げる。
「四重魔法・絶対なる聖域」
魔法を解放した瞬間、男を中心に、聖なる領域が拡がっていく。
神聖属性の、神々しい魔力は圧倒的な速度で拡がり、男の周り50メートルを円状に覆った。
聖域内では、モンスターが、聖なる光に包まれると一瞬で浄化され、魔石を残し消え去る。
数分もしない内に、モンスターを狩り尽くした男は、着実に進んで行く。




