進歩と治療
「はぁぁぁ!!」
光属性の魔力を流した刀で、モンスターを切り裂きながら進む。
「ファイアーボール!」
悠の動きが止まり、隙が出来た瞬間。
程よいタイミングで援護射撃がはいる。
そこに畳み掛けるようにソルスが突撃し、モンスターを爪で切り裂いていく。
「魔法での援護お疲れ様! 改めて思ったけど凄い威力の魔法だよな。 ソルスも援護ありがとな!」
「グガァ!!」
まるで肉串を欲している様にも聞こえる。
「いえ。まだまだユウさんには及びませんよ。 ……でも、そうですね。威力はかなり上がってきたと思います!」
二人と一匹は今、30層から39層までの間でレベリングをしていた。また、悠は休憩中にアリシアの得意な火の魔法と、土属性の魔法を教わっていた。教わっている途中の警戒は悠が気配感知で行っていた。
それなのだが・・・
「いえ。違います! もっと魔力を燃え上がるように、グッと押し込めてから、バッと解き放つんです!!–––ああ〜!違います!!」
「んー。サッパリわからん。」
アリシアは天才型なのか、教えるのがあまり向いていなかった。ソルスは休憩中になると寝そべって、昼寝をしている。
「自分がするのは、こんなにも簡単なのに……。人に教えるのが難しいとは思いませんでした…。」
「まあ。なんだ。気にしたら負けだよ。うんうん。」
「一人で納得しないで下さい!!」
「うぉ!? ごめん! 謝るから、謝るから魔法はやめよう!!なっ、なっ?」
「うぅー。分かりました。その代わり夜はご飯奢って下さいね!約束ですよ?」
アリシアはリスの様にほっぺを膨らませていて、とても可愛い。
だけど、こんな可愛い娘がパーティメンバーとか、男の冒険者に妬みを買いそうだな。
まあ、アリシアを奪いに来たら即刻排除するけど。
「よし! 出来たぞ!」
「ファイアーボール!」
悠が魔法名を唱えるとアリシアの物よりも小さめだが、しっかりと魔法は発動していた。
「ストーンニードル!!」
地面から石で出来た針が突き出してくる。土魔法も物にしたようだ。
「アリシア! 今日はありがと! お陰で新しく魔法を習得出来た…よ?」
「むー…。そこは素直に『アリシアのお陰で習得出来たよ。ありがとう!』 で良くないですか⁉︎」
「………。」
「な、な、なんですかそのジト目は!? やめて下さいよ! そんな意地悪するなら泣きますよ!? 良いんですか!?」
「嘘だよ。魔法を新しく覚えれたのはアリシアのお陰だよ! ありがとな!」
「……フ、フン。 わ、解ったなら良いんですよ!」
えっへん。とでも聞こえそうな程に胸を張っている。
日頃ゆったりとしたローブを着ているから隠れて気付かなかったが、今はボディラインが強調されていて、大人の艶かしい部分を感じて思わず赤面する。
「…まあ。それは置いといて、もうそろそろ日が暮れ始めるからダンジョンから出とかないか?」
「あ。今日はお母さんに挨拶するんでしたよね。……私すっかり忘れてました。」
テヘペロが似合いそうな、バツの悪そうな顔をしてソソクサと場を離れる。
(まあ。今日は新スキルをかなり身に付けられたし、地味に充実してたな。)
「…やれやれ。困ったパートナーだ。」
悠は言葉とは裏腹に、その表情にはパートナーへの確かな親愛を感じとることが出来た。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「紅蓮の泉亭…でしたっけ? あそこは本当に美味しかったです!! また連れて来て下さいね?」
(…上目遣いの破壊力が……。)
「…あ、ああ。大切なアリシアの頼みなら何時でも連れてってやるぞ!」
紅蓮の泉亭で夕飯を食べて、そんなやり取りをしているとアリシアの家に到着する。
「お母さーん! ただいまー! ………… ユウ!入って大丈夫だよ!」
「お邪魔します。」
中に入ると、小綺麗な花瓶に花を生けている。日本では見た事ない、黄色の花と葵い花だ。
廊下を進みリビングらしき所に、アリシアと母親らしき女性がいた。
アリシアの母親はアリシアの姉と言われても気付かない程に若く美しく見えた。
だが、顔色は少し青い様に見える。すかさず鑑定をかけてみる。
すると…………。
『魔力欠乏症』とあったので、更に鑑定してみる。
●魔力欠乏症・・何らかの要因により、元々持っていた特殊なスキルが無くなる若しくは、子供に移った時に起こる異常反応。治療するには高位の治療魔法使い或いは、高級ポーションが必要。
そのまま母親の身体を、隈なく鑑定していくと、子宮の上から、へその緒の辺りに魔力欠乏が起こっているのを見つける。
「…こんばんわ。貴方が娘のパーティメンバーのユウさんですね。お話は娘より聞いています。まだまだ未熟者で迷惑を掛けると思いますが、娘を末永く宜しくお願いします。」
「ちょ、お母さん⁉︎ いきなり何言ってんの!!……末永くだなんて…。」
「こんばんわ。俺に娘さんを任せて下さい! 絶対に悲しい思いはさせません。……いえいえ。俺もアリシアには世話になっていますから。お気になさらず。これからも宜しくお願いします! ……それと、お母さん。病を患っていると思いますが、良ければ治療してみましょうか?」
アリシアは顔を赤くしながら手で顔を覆い『お義母さんだなんて。』と繰り返している。
「ほ、本当に治療出来るんでしょうか!? …………でも、今は対価を支払えないですが、少しずつ返していきます。…ですので、出来るなら是非お願いします! あと、私の名前はアグネスと言います。」
「人助けに対価なんて必要ありませんよ。」
悠は微笑みながら答える。気のせいか、アグネスの顔色は僅かに血色が良くなっている。
「……ユウ。こんな可愛いパーティメンバーが居ながら……。絶対にお母さんには手を出さないでよね?」
アリシアが黒いオーラを纏いながら威圧してくる。さながら魔王のようだ。
「わ、分かってるって。手を出そうとした気は無いんだけど…。」
「ユウ! そんな事より治療出来るって本当なの!?」
アリシアとアグネスは此方に身を乗り出すようにして話を聞く姿勢をとる。
「うん。本当だけど、実際成功するかは分からないよ?でも、試してみる価値はあると思う。」
アグネスは暫し逡巡した後お願いしますと答えた。
「私は娘に迷惑を掛けてしまって…申し訳ない気持ちなんです。だから1日でも早く元気になって、頼れる母に成りたいんです。」
「「ユウ!(さん!) お願い!(します!) 」」
「わかりました。俺の最善を尽くしましょう。」
まず、ソファにアグネスを寝かせる。悠は服をへその上ぐらいまで捲り上げる。
鑑定を発動させながら、右手に魔力を圧縮・収束していく。右手は淡く光り輝き、見ただけでも身体が癒されそうな輝きを放っている。
右手をゆっくりと下腹部に近づけていき繊細な肌に触れた。魔力が徐々に手を伝い下腹部に流れ込んでいく。
「…んっ。…あ、あんっ。…ふぅ、んっ。」
淫らな矯正が静かな室内に響く。治療は暫く続き遂に終わりを迎える。
「エクストラ魔力ヒール!」
一際大きな光が辺りを包み込む。光が晴れるとすっかり血色が良くなったアグネスがいた。
「お母さん!! 大丈夫!?」
治療中は外に出ていたアリシアが中に入って母親を抱き締める。
「…………!?……お母さん、病気治ったみたい。今まで本当にありがとう。よく頑張ったねアリシア。」
アグネスが優しく髪を撫でると、アリシアは涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら腰に抱きついている。
小さい頃から母に甘えた事はなかったのだろう。
(…今ここに母娘以外が居るのは無粋だよな。……それに、『何らかの要因で特殊なスキルが子供に移る。』まさかアリシアの固有スキルはアグネスさんからの物?…だとすると何の為にそんな事を?)
悠は今日覚えたばかりの領域を発動させながら思考する。
●気配感知・・相手の気配を感じ取り知覚する。達人は、息をする様に気配感知を行える。また、熟練度が上がると、木の葉1枚が落ちるのにも気がつく。
●領域・・魔力感知と、気配感知を取得した者が習得出来るスキル。自分の感知範囲なら、如何なるものも感知する事が出来る。
(誰か黒幕がいる筈。…俺はこの母娘を傷付けたソイツを赦すことは出来ないだろう。一番怪しいのはアリシアの父だな。アグネスさんはアリシアに話していない様だった。……相手方からモーションをかけてきたら楽なのにな。……ん?。)
悠がアリシアの家前で待っていると領域に引っかかる人らしき反応が5つある。
領域ではないと気付けない程の隠密を使う相手なのだ。何もそれなりの手練れだろう。
悠は刀に重力魔法を掛ける。今日作り出した武技だ。
暫しの静寂の後、2人が時間差で襲い掛かってくる。
悠は武技を発動させた。
「抜刀秘剣・鞘鳴り!!」
鞘の内部で加速され、繰り出される頃には音を置き去りにする斬撃が、黒装束1人の胴体を両断する。
臓物を撒き散らしながら倒れる。………間違いなく即死だろう。
直ぐさま重力魔法を使い、コマのように回転しながらもう一方も斬り伏せる。
『アクセル!』
悠は一瞬で加速して相手の背後をとり、1人を残して両断する。
地面には黒装束の臓物や肉片で溢れていた。
最後の1人は、四肢を切り落とし火魔法で傷口を焼くと頭を掴み、悠はアリシアの元に駆ける。




