承 理解するために
承 理解するために
「明日は俺の部屋に来てみないか?」
アダムと呼び名が決まったこの人間は笑った顔を継続させたまま言った。
「まだ休息とれていないんだろうし、今日はこの辺で退散する。それで明日からは俺の部屋で集合にする。その方が楽だからな。」
なぜこの人間…アダムは当たり前のように私の予定まで決めていくのだろうか。まだ私はほとんど何も理解できていないのに。私を置いてきぼりにしたまま、話を進めていく。
「なんだ?やっぱり関わるのはもう嫌なのか?」
しかし、この人間…アダムはいつも強引だったように思う。初めて部屋に来た時も、本を強引に押し付けられたのだ。私が色彩に気をとらわれているうちに、そういう流れかその本を受け取ってしまったのは覚えている。そしてどういう流れだったか、毎日来るようになったのだ。
「イブ、イブ聞いてんのか?」
当たり前のようにイブと呼ばれてハッとする。そう、イブと呼び名が決まったのだ。そしてこの人間は…
「…アダムの部屋を知らない。どうアダムの部屋に集合するというのか?」
「おぉっ。お前順応早いのな。もう呼び名に慣れたか。」
「お前がアダムと呼べと言ったんだろう」
「その通りだ、少し驚いたけど慣れてくれてよかった。で、明日もこっちにいつも通りに来て、そのまま俺の部屋に連れていく。いいな?」
「わかった。」
「明日また来る。少し休息をとったほうがいい。少し長めに酸素カプセルに入れよイブ。」
「わかった。」
「じゃあ、明日な、イブ。」
アダムは帰った。アダムがこんなに早く帰ることなんて初めてだろう。急に部屋が静かになった。なんとなく、そんなはずはないのに部屋が冷えたように感じる。SCが室温も湿度も管理しているから、そんなはずはないのに。なんだか急に疲労を感じてソファの…アダムが座っていたところに腰を掛ける。
…暖かい。
アダムに触れたことはない。自分の首を触ると暖かいようにきっとアダムも暖かいのだろう。
…当たり前のことだ。
呼び名というのは初めてだった。個人識別番号以外に呼び方を付けるなんて、アダムは考えることが私には想像がつかない。
「イブか…。」
自分の呼び名を唱えると、なぜかソファに面していない胸に暖かさを感じた。




