魔導決闘祭1回戦
イズルの1回戦の相手はクラスメイトだった。
「なあ、シールドって焦げたりするのか?」
「考えたことないな」
魔導決闘祭では、試合に出る選手はバッジを付ける。
バッジは装着者にシールドを付与し、相手の魔術を受ける度に数値が減っていく。
時間内に数値を0にするか10分経過時点でシールドの値が多い方の勝ちになる。
「Bランクの魔獣には一瞬で破壊されたけどな」
魔物討伐実習では、安全のために全員がバッジをつけていた。だが――現れたBランクの魔物は一瞬でそのシールドを破壊した。
パーティは崩壊し、イズルがパーティメンバーを燃やすきっかけにもなった。
「まあ、今となってはどうでもいいことだ」
イズルはイズルは目立ちたい性格ではなかった。
だから前衛ではなく、後衛――魔術師として1年間過ごした。
魔術師として、パーティメンバーをサポートして来た。
補助魔術は使えなかったから、攻撃や地形操作で敵の足止めをした。
最後の一撃を決めるのは常にパーティメンバーで、イズルは目立たずに済んでいた。
だが今は――嫌でも目立ってしまっている。
イズルがいくら目立ちたくないと願っても、人前に出るだけで声が聞こえてくる。
あいつがパーティメンバーを燃やしたんだ。近づいたら危ないぞと。
「こんな学園、早く出ていくんだ」
イズルが改めて決意を固めた時だった。
「――試合開始」
審判が宣言した。
イズルが手にしているのは杖――だがそれは仮の姿。
普段に握っている部分は鞘になっていて、引き抜くことができる。
イズルは杖を握る手をいつもより強め、一気に鞘を引き抜いた。
すると――黒色の刃が姿を現した。
「うわあああああああ」
悲鳴が上がったのは――刃が見えたのと同時だった。
それは対戦相手からではなく、試合を見ていた生徒たちからだ。
彼らの目に映るのは、戦う二人ではない――壇上を覆いつくす炎だけだ。
その光景は、相手を燃やしたと思わせるには十分すぎた。
「ブーブーブー」
シールド値が0になったことを知らせる音が鳴り響く。
イズルは刃を鞘に納め、炎もすぐに鎮まりかえった。
「大丈夫なのか……?」
「焦げてはなさそうだな」
「これが炎帝か……」
口々に声が聞こえた。
それは勝利を称えるものではない。
恐怖と畏怖の混じった――歓声という名の悲鳴。
この試合を見た生徒は思った。炎帝とは絶対に戦いたくないと。
同じように試合を見ていた――たったひとりを除いては。
「ほら、やっぱり先輩の炎はこんなにも優しいじゃないですか」
試合時間は1分にも満たない。
そんな一瞬で、相手を傷つけることなくシールドだけを破壊するなんて簡単にできることではない。
恐怖を浮かべる生徒たちの中で、少女だけは嬉しそうに笑った。
「絶対に逃がしませんよ、先輩」
その視線はずっとイズルを追っている。
勝者なのに、まるで敗者のように縮こまった体。
そんなのは許せないと思った。
「周りがどれだけ敵になっても、私だけは先輩の味方ですからねっ」
少女は走り出した。イズルに話しかけるためだ。
もうすぐ自分の出番だった気がするが、そんなことはどうでもよかった。
だって今は――話しかける理由がある。
話しかけるためのきっかけを必死に考えて、それでも本当にこれでよかったのか悩みながら、やっとの思いで話しかける必要がない。
1回戦の戦いが凄かった。
そう伝えるだけでいい。伝えればきっと、答えてくれる。
そんな少女の目に飛び込んできたのは、他の女と話すイズルの姿だった。




