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異世界生物怪奇譚  作者: 入舟三叉


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異世界生物怪奇譚28:リュウゼツラン

ここは異世界、ナイラーヘイムル。

日は東から昇るし月は一つだが、生き物は現実世界と少し違う。

そんな世界。の少し変わった生き物のお話。


新大陸に入ってから、もう一月以上が過ぎ。

肌寒かった気候も暖かいを通り越し、暑く色鮮やかな景色へと変わって行っていた。

木々の葉は広くなり、種類も増え、淡い単色だった花畑も、彩度が高いモザイク模様に。

色とりどりの鳥や虫が飛び回り、地を這う動物も増えてくる。

初めての新大陸ではあったが、先導するポールのおかげで順調に南へと進んでいた。


そうして街道を進んでいると、何度目かわからない分岐へと辿り着いていた。

ポールは立ち止まると、それぞれの道を眺める。

「こっちだな。今日中に次の村へは着くか。」

さすがポールさん。こちらからお願いしたわけではないが、一緒に旅をするうえで、これより頼もしい存在はない。

ふと気になって、新大陸に来るのが何回目くらいなのか聞いてみた。

「うん?新大陸に来るのは初めてだぞ。どっちに行くかは勘だな。」


予想していなかった返答が返ってきた。

勘でこの長い道のりを進んできたのか・・・。

いちおう、判断基準を深堀りして聞いてみると、人の歩いた跡や轍だったり、道や地形の形状、流れてくる僅かな匂いや人の気配だったり、手がかりは見ているが直感の方が強いそうな。

これぞ熟練の冒険者と言うべきか、多少何か起こったとしてもスペックでゴリ押す豪胆さというか。

あんまりにも自然に進んでいくから、そういうものだと思っていたけど、もうちょっと道を聞いたり、地図買ったりしよう。

ポールさんは大丈夫でも、私たちも大丈夫かはわからない。


道中で青いドラゴンや、白鯨に襲われたりもしたが、概ね順調にさらに南へと進んでいた。

石造りと木造建築が混ざる街並みは変わらないが、その色は石は白く、木は色濃くなっていく。

宿で出してもらう食事も、香草やいろんな野菜が混ざるようになり、酒もクセのある強い酒になってきていて。


そして、また道中の村に着くと、宿を取り食事を出してもらう。

お酒はそのままだとキツいので、割りものとして水や果物が用意されているのだが、ツバキとポールは数十度はあるだろう、濃い酒精をそのまま水のように飲んでいた。

ポールはまだわかるが、ツバキの小さな体のどこにアルコールが入っていくんだろうか?

血ではなくて、身体にはアルコールが流れているのかもしれない。


そんな事を考えながら、食事をしていると宿屋の主人が声を掛けてくる。

「そのぉ・・・お急ぎでなければ、宿代はタダにしますし、報酬も別でお支払いするので、収穫を手伝っていただけると助かるんですが・・・。」

急ぐ旅でもないので、宿屋の主人の話を聞いてみることにした。

どちらかというと、ほろ酔いのサエグサが「お伺いしましょう、旦那。」なんて絡んできたからなのだが。


話を聞いてみると、この今飲んでいる酒の原料になっている、リュウゼツランの収穫の季節なんだとか。

例年であれば、のんびり収穫していれば間にあうのだが、今年は天候がよく豊作で、急いで刈り取ってしまわないといけないのだとか。

幸いにも人手はあるし、断る理由もないので快く引き受けることにした。

リュウゼツランってどんなのだっけ?高く伸びて花が咲くんだっけ?そんな事を思いながら。


そして翌日。

宿屋の主人に連れられ、畑へと行くと、一面にそれは生えていた。

トゲのように鋭い葉が放射状に延びる、緑のウニのようなものがズラっと。

てっきりナイラーヘイムルの事だから、ドラゴンの頭でも生えているのかと思っていたが、見た目は普通のアガベだった。

作業としては簡単で、根元からそれを切り取る、その後に要らない葉を切り落とすと。


切り取る作業はナギ、ツバキ、ポールに任せ、葉を落とすのはエルザ、サエグサ、私と前後衛で分担して進めていた。

「葉を落としたら、ピニャはそこに転がしといてくれたら、後で拾うからええでよぉ。」

そうして、次々にパイナップルというか、緑の松ぼっくりのような大きな塊を畑に転がしていった。

日もどんどん昇って行き、順調に作業を進めていると、変な音が聞こえた。

ピンッ!

音のした方を振り向くと、なにやらエルザがあわあわとしている。


何が起こったのか分からずに見ていると、離れて作業をしていたナギがエルザを地面に押し倒し、ツバキはピニャを空へ蹴り上げ、ポールは二人を守るようにその間に立ちはだかる。

宙に飛んだピニャが、僅かに頂点を過ぎ落ちかけたところで。

ドカン!

その葉が刈り取られたリュウゼツランだったものは、空中で爆発四散した。


「おー。ピンを抜いたら危ないでよぉ。ピンはそのままでなぁ。」

頭をポリポリと掻きながら、宿屋の主人が歩いてきた。

危ないというか・・・。危ないなぁ。

私も適当に葉を切って落としてたけど、ピンってどれだよ!

あ、これか。

上部に近いところに、横向きに丸い輪と棒のようなものが刺さっている。

ピニャ=パイナップルって、そっちのパイナップルかよ・・・。


そこからは慎重に葉を落としていっていた。

葉を切ったり、払ったりするときに輪に引っかかると危ない。

最初は葉を落とすペースの方が早かったが、だんだんと葉を落とす方が間に合わなくなり、ツバキも葉を落とす方に加わっていた。


そうして、その後はうっかり爆発させることもなく、三日が過ぎたころには畑のリュウゼツランの収穫は全て終わっていた。

数年分は歳を取ったような心労を味わいつつ、高いのか安いのかわからん報酬を受け取り、おまけの秘蔵だという5年物のテキーラを受け取る。


そして、あと幾日か。

魔王の住まう、首都へと旅を続けて行った。

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