異世界生物怪奇譚27:トウモロコシ
ここは異世界、ナイラーヘイムル。
日は東から昇るし月は一つだが、生き物は現実世界と少し違う。
そんな世界。の少し変わった生き物のお話。
航海中にイカに襲われたりしたが、それ以外は特に大きな問題もなく、一ヶ月ほどで船は新大陸へと辿り着いていた。
新大陸の港には、大きな灯台があり、波止場も石造りでなかなか重厚な感じである。
港に着いてからは、どんどんと船から荷が降ろされていくのだが、そこで働いているのは普通の人間ばかり。
てっきり角付きばかりかと思っていたが、そうでもないらしい。
荷下ろしが終わると、日も落ちてきていたので早めに宿を取った。
パーティーは6人と、大所帯になってきていたので、最悪宿が取れないかもしれないとも思ったが、大きな港町だけあって、問題なく部屋は確保出来ていた。
夕飯まではまだ掛かるとのことだったので、暇つぶしに港町を歩いていく。
石造りのガッシリとした建物の合間合間に、木造のエキゾチックな建築もあり、あちこちに謎のトーテムが建っていたりとなかなかカオスな町並みで。
装飾ものっぺりとした灰色が続くかと思いきや、いきなりカラフルな飾りつけが飛び出したりと。
日は落ちかけているのに、街角では楽器や歌声が鳴り響く。
人自体はそこまで多くないのだが、こういうのも活気があって良い。
ふと、仲間を見渡し、ここからの旅を思い浮かべた。
戦士、侍、忍者、僧侶(回復魔法は使えない)、吟遊詩人(腐女子向け)、商人。
後衛が役立たずの脳筋パーティー。
ま、まぁ前衛が強いから大丈夫でしょ。だいたいポールさんがなんとかしてくれる、はず。
しばらくすると、日が完全に落ちてきたので来た道を戻る。
途中で土産物を買おうとするナギをしばいたり、新大陸も文化汚染しようとするサエグサをしばきながら。
晩御飯はバーイリンなどでは見ないような取り合わせだった。
少し粒が残るカボチャと豆のポタージュに、トウモロコシの粉を薄く焼いたトルティーヤみたいなものと、大鹿の肉を柔らかくなるまで焼いたロースト。
トルティーヤ風の皮に肉をたっぷり乗せ、ソースと刻んだピクルスを乗せる。
そして、グルっと巻いたら、そのままガブっと齧りつく。
美味しい。味付けは素朴な感じで、タコスとケバブロールの中間みたいなものだが、肉が多くて食べ応えがある。
一本食べ終わると、次々と巻いていき、気付いたころには山のように盛られていた皿は空になっていた。
まぁ、半分くらいはポールさんが食べてたんだけど。
そうして、新世界での最初の夜が明けると、南への旅路が始まる。
距離もあるので馬車でも借りたかったが、それは無かったので代わりにリャマを二頭借りた。
目がパッチリしてて大きく、睫毛が長い。身体はガッシリと筋肉質なんだが、動きが少しクネクネしている。
・・・違うよね?なんか、ポールさんの方ばっかり見てるような気もするけど、そういうやつじゃないよね・・・?
しばらく南に歩を進めて行くと、あちこちに小さく土が盛られカカシが立っている。
畑を守るにしろ、いくらなんでも建てすぎだろう。
そして、守るべき畑はどこにあるのか?全く畑は見えないのだが。
さらに進んでいくと、街道のすぐそばに、そのカカシが立っていた。
よく見てみると、足元にはカボチャが生えていて、カカシの身体には豆の蔦が這っている。
カカシの顔は遠くだと気付かなかったが、作り物ではなく生きている人間のようで。
何かの刑罰かとも思ったが、死んでいるわけではなさそうだし、この取り合わせなら、カカシはナイラーヘイムルのトウモロコシなんだろう。
観察していると、トウモロコシの目がいきなり開く。
「おや、旅人さん。南へ行くのかな?息災無き事を祈っているよ。」
・・・人型を見ると、メンタル削られる呪いの言葉でも吐かれるのではないかと身構えてしまったが、どうやら旅の無事を祈ってくれるらしい。
しかし、返答して良いのかどうか悩んでいると、
「ありがとな~!また会えるかわからんけど、またな~!」
ナギがニコニコと手を振って返していた。
即座に害は無さそうだし、大丈夫なのかな?
そこから二週間ほど経った頃。
山を越え、川を渡り、道中の村や町に泊まったりしながら、どんどん南へと進んでいた。
地域によって、数が多かったり少なかったり、作物の取り合わせが違ったりはしたが、トウモロコシはかなり多く植えられていて。
南部に進むにつれ、気温も高くなるので、作物の育ち具合は旅路の距離より、加速度的に上がっていた。
この辺りまで来ると、カボチャや豆も実り、トウモロコシの葉?皮?も色づき、そろそろ収穫の頃合いなのだろうか。
そして、また街道のすぐそばにトウモロコシが生えていた。
顔は黄色い髭が生えて、北部の港の近くに生えてたものに比べると、壮年のおじさんといった顔立ちで。
近寄って、顔を見ているとその目がクワっと急に開く。
「旅人さん?旅人さん?アッ、アァァァァアーーーー!!!」
いきなり叫びだしたトウモロコシに距離を取って身構える。
前衛三人も武器に手をやり、臨戦態勢に。
サエグサはコケて、エルザに慰められていた。
その叫びは何秒かすると収まり、トウモロコシは身体の力が抜けたのか、お辞儀をするように上半身をぐにゃりと曲げる。
恐る恐るその顔を窺うと、その顔はとても幸せそうに、事切れていた。
そして、ふと下に目線を移すと。
股間から斜め45度にそそり立つ、トウモロコシのトウモロコシが。
緑の皮の隙間からは黄色い粒が見え、先端からは白い髭がだらりと垂れ下がり。
もう、また食べられなくなる系のヤツじゃないか・・・
「わー!びっくりしたけど、トウモロコシってこうやって生るんやなぁ。美味しそ。」
こら、ナギ。手を伸ばすな。はしたない。
「一つくらい貰っていっても、文句は言われんだろう。」
そういうと、ポールはトウモロコシのトウモロコシを根元から、ブチリと捩じ切った。
ヒウッ!自分の事では無いが、こっちまで縮み上がりそうで。
そうして、トウモロコシを片手にまた南へと街道を歩んでいった。
私は少し内股で。




