異世界生物怪奇譚23.5:カボチャ2
ここは異世界、ナイラーヘイムル。
日は東から昇るし月は一つだが、生き物は現実世界と少し違う。
そんな世界。の少し変わった生き物のお話。
白鳥、もといフェニックスの成長を見送った後。
帰り道でナギたち四人はフェニックスが飛び立つ姿に喜んでいたが、私は一人どんよりとしていた。
忘れたわけではなかったのだが、いずれ勝手に枯れて解決するだろうと思っていたカボチャの大木は、青々としていて健在だった。
知らないフリをしていれば良いのだが、あれだけ目立つモノを生み出してしまった責任に胃が痛く。
家に帰り、あまり味のしない食事を胃に収めると、食卓にみんなが揃う中、私はぼそぼそと懺悔を始めた。
「実は・・・その・・・」
私の日頃とは違う歯切れの悪い様子に、ナギが心配そうに問いかける。
「お兄やん?どないしたん?大丈夫やで、ゆっくりで。」
日頃はおてんばお嬢様なのに、こういう時はしっかりしてるんだから。
その声に少し落ち着いて、カボチャを手に入れた経緯から、少しずつ話していった。
そして、カボチャの大連鎖で、あの巨大カボチャを生み出してしまったことを話し終わると。
「あははははははは!お兄やん・・・。プフッ・・・。アレ、お兄やんの仕業なんか。」
ナギは腹を抱えて、床を転げまわっていた。
「ヤマダさんっwww地味にデカいやらかしやるの変わってないのねwwwww昔、社内システム吹き飛ばした時もwwwww」
サエグサも私の背中をバシバシ叩きながら、爆笑していた。
余計な事は言うな。昔の失敗はどうでも良いだろう。
しばらくして、笑いが収まってくると、涙を拭いながらナギが言った。
「あはは。そしたら、お兄やん。明日、いっしょにカボチャ見に行こか。」
「私もいっしょに行くよ。17連鎖のおじゃまカボチャwwwww」
日頃、あまり家から出ようとしないのだが、サエグサも付いてくるつもりのようだった。
ツバキとエルザは用事があるので、来ないそうで。ツバキは来て欲しかったんだけど。
翌日。
私、ナギ、サエグサと三人で巨大カボチャの麓まで来ていた。
「おー!やっぱ大きいなぁ。」
ナギが感嘆しながら見上げる。
こうやって、三人並んでいると私が小さく見えるかもしれないが、それは主にサエグサの背が高いせいである。
ナギも女性にしては大柄なので、相対的に大きく見えないかもしれないが、私は一般的な成人男性くらいの身長はある。
別に、サバを読んでるとかじゃなくて、本当に、ね?
その幹や根、周囲を観察していたのだが、違和感があった。
これだけ大きいカボチャの茎ならぬ、幹なのだから、小さくても家一軒分くらいの実が生りそうなものだが、全く姿が見えない。
通常サイズの実すら見当たらず、生えてから一年以上経っているのに、実はどこにあるんだろうか。
そうして、巨大カボチャのランナーの何節かを進んでいくと、サエグサがそれを見つけた。
「あれ!何か光ってない?」
そう指差した先には何かが光っている。
遥か頭上のそれを、首を反らせて眺めていると、ナギが言う。
「カボチャやなぁ、アレ。ちょっと見てこよか。」
そう言い残すと、ナギは巨大な幹をものすごい勢いで昇っていく。
声を掛けようと思った時には、ナギは米粒くらいの大きさになっていた。
特に何が出来るわけでもなく、しばらく待っているとナギがカボチャから降りてきた。
「お兄やん、すんごいのが生ってるで。どないしよう?取ってこよか?」
ナギがすごいと言うからには、何か普通ではないものが生っているんだろう。
それが何かはわからないが、放っておく意味もないし、ゴーサインを出しナギを送り出した。
しばらく、サエグサが「すごく・・・大きいです・・・」と連呼するのをしばきながら待っていると、ナギがそれを片手に持って戻ってきた。
それはソフトボールくらいの大きさの、七色に光るカボチャだった。
だが、明らかに普通のカボチャではない。
普通のカボチャもわずかに魔力を帯びていて、触るとほんのりわかるくらいではあったが、これは明らかにケタが違う。
魔力を帯びたものと言えば、狸汁や真珠があったが、あれらと比べても遥かに強い魔力だ。
ナギからそれを手渡され、直に持つとその膨大な魔力量がより伝わってくる。
余りにも強い魔力に怖くなってナギに聞くと。
「うーん?どないやろ。少なくとも今は安定してて、爆発とかはせぇへんと思うけど。」
そうして、持って帰っても良いか悩んでいると、カボチャの幹が急速に枯れ始めた。
地平まで続く、巨大なそれは一気に茶色く萎れ、バランスを崩し地に倒れだす。
根元に居ると巻き込まれそうだったため、実を手放す間もなく、急いでそこを離れる事となった。
不安とカボチャの実を抱えつつ、日が落ちる前には家に帰り着く。
エルザに実を取ってきた話をしていると、ツバキも家に帰ってきた。
こういう事はツバキが一番知識があるだろう。そう思い、カボチャを手渡し見てもらう。
ころころと手の中で転がしながら、それの上や下を見回すと、
「どうする?煮つけにでもする?天ぷら?」
いや、ツバキさん。こんなの食べられないです。
食べたら魔力で爆発するか、不老不死か魔王になってしまいます。
売ろうにも核爆弾のようなこれをどうするか持て余し、とりあえず玄関から入ったところに飾ることに。
淡い色の調度品の中に、鮮やかに光るカボチャがぽつんと佇んでいた。




