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異世界生物怪奇譚  作者: 入舟三叉


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異世界生物怪奇譚17.5:キリン

ここは異世界、ナイラーヘイムル。

日は東から昇るし月は一つだが、生き物は現実世界と少し違う。

そんな世界。の少し変わった生き物のお話。


古大陸へ渡って、早二週間。

道中、シャチの襲撃というトラブルはあったが、ポールの大活躍のおかげでシャチを食べる肉フェスに。

その後はシャチが来ることはなく、散発的に小規模な盗賊が来るくらいで、予定通りの日程でアルサムールへと辿りついていた。


道中は草木の生えない礫砂漠だったが、アルサムール周辺は大きな河川の流域は肥沃な土地が広がっていて、綿花を始めとして小麦に稲、いろんな野菜や果物などの農業地帯となっている。

現地についてからは、他の商人に教えてもらったりしながら、綿花や織物を中心に買い付けていた。

普通だったら情報を聞こうと思うと有料だったり、一見だと売ってもらえなかったりするのだが、ポールのおかげで非常に手厚くサポートして貰えていた。

正直、依頼料なんかこういう事だけで元手が取れるほどで、バーイリンまで戻ったら報酬は追加でこんもり盛って、酒と肉も山ほど奢らせていただこう。


そんなこんなで、道中は長かったが現地に滞在したのは三日くらいだった。

合間で自分用にちょっとした土産を買ったり、寺院を回ったりはしたが、ほとんど観光することなく帰る時間になってしまった。

一人で来ていたら、もう少しのんびり泊まっていくところなのだが、今回は残念ながら団体行動なので、そのスケジュールには合わせないといけない。

あの砂漠をポールと二人だけで渡るわけにもいかないし。


そうして、名残惜しくはあったがアルサムールを後にして、巨大な隊商に混じって帰路を進んでいった。

帰りは行きに比べると、少し歩みが遅かった。

盗賊やシャチのようなトラブルはなかったが、天候が悪い。

砂嵐やら、雹が降ったり、悪天候の影響で道がぬかるんだり、砂が積もってしまって居たり。

あまり長引くと、食料や補給が不安だなぁと思っていたが、なんとか辿り着けそうなペースで港の近くまで来れていた。


後はこの山裾を回ったら、という頃に前の馬車から声を掛けられた。

「あっちでキリンが見られるってよ。ヤメェダさん初めてだろ?余裕があるなら、見てきたらどうだい?」

キリン?確かにこっちでは見た事はない。

しかし、キリンはこんな砂漠じゃなくて、いるとしたらサバンナじゃないのか?

いや、ナイラーヘイムルのことだから、神話の幻獣みたいなものだったり、某ゲームのユニコーンみたいな生き物かもしれない。

そう思うと、ますます気になってきたので、見に行こうとポールに声を掛けると。

「俺は昔何回か見た事があるが、滅多に見られないし、面白くて綺麗だよな。」

面白い?綺麗?普通の動物のキリンだとすれば、面白いはわかるが、綺麗と形容するだろうか?


少し隊商の列から離れると、そのキリンの方向に何台かの馬車が集まっていた。

その方向へ近づいていくと、なにやら木がたくさん生えていた。

来る途中に、こんなの生えてたっけ?特に来るときは声を掛けられたりもしなかったし。

さらに近づいていくと、木の上の方には薄紫の花が咲き誇っていた。

確かに綺麗な花だと思っていると、幹に何か変なものがあるのに気付いた。

ところどころ、瘤のようなものがあり、長いトゲが生えていて、ウニがくっついてるような。

なんだ、この変な木・・・と思ったところで思い出した。

これ!伊豆シャボテン動物公園で見たやつ!キリンだ!


そう、キリンはキリンでも、植物のキリンだった。

これなら、珍しくて面白くて綺麗というのも分かる。

好奇心が満たされ、それには満足したが、別の疑問が湧いてきた。

ポールなら知ってそうだと思って、首がとても長い、斑模様の大きい動物を何と呼ぶのか聞いてみた。

「あー、あれか。ジラフだろ。いや、ちょっと違うな。ズィラァフだったか。」

なんで、ネイティブに言い直すねん。

ツッコミを入れたいのはやまやまだったが、そういうものかもしれない。我慢しよう。


そうして日が暮れることには、港へと辿りついていた。

今から船は出せないので、港の周りでキャンプを設営し、隊商の全員が揃う最後の夜を過ごしていった。

特にここから別の船に乗ったり、ルートが分かれてしまう人たちはわざわざ挨拶に来てくれたり、連絡先を渡してくれたり。

商人だけではなく、他の商人に護衛で付いてきた冒険者や傭兵なども、私やポールに会いに来てくれたりして。

そして、明日の船に乗るのが心配になるくらい酒を飲まされ、古大陸最後の夜は更けていった。


そして、夜も更け切ったころ。

キリンの木の根元がもこもこと盛り上がる。

しばらくすると、地面から大きな胴体と長い足、尻尾が現れた。

全てのキリンの身体が地面から出てくると、その群れは静かに砂漠の奥へと歩いていった。

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