表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界生物怪奇譚  作者: 入舟三叉


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
17/35

異世界生物怪奇譚16:チューリップ

ここは異世界、ナイラーヘイムル。

日は東から昇るし月は一つだが、生き物は現実世界と少し違う。

そんな世界。の少し変わった生き物のお話。


あれは旅行から帰ってきた時の事。

南国リゾートを存分に楽しみ・・・少しイライラすることもあったが、満喫してバーイリンへと帰ってきていた。

護衛と御者のおじさんにチップを渡して、街の入口から自宅へと歩いていく。

そうして道を歩いていると、やたらと不幸そうにトボトボと歩いている女性を見かけた。

何か見た事がある顔だな、と思ってよく見てみるとそれはエルザだった。


髪は伸び、少しやつれているようだったが、あの特徴的な目は忘れない。

しかし、そこそこ生活力はあるし、余裕をもってお金は渡していたはずなので、豪遊したりギャンブルをしなければ2~3年は・・・

と考えていたところで思い出した。

そうだ、ギャンブルに嵌めて逃げたんだった。


放っておいても良かったのだが、いくらか縁があった人間ではあるので、罪悪感から声を掛けてしまっていた。

エルザは一瞬気付かなかったが、私の存在を認識すると、神にでもあったかのような目で縋りついてきた。

「ヤメェダさまぁ!会いたかったですぅ!」

捨ててきたのに、私への信仰は薄れていないようだった。

続けて、エルザが申し訳なさそうに語りだした。

「あのぉ・・・そのぉ・・・私が至らなかったからなのですが、とてもお金に困っていましてぇ・・・」

うん、そうだろう。見ればわかる。

あまり聞きたくはなかったが、あれから何があったのか聞いてみた。


ライ麦の収穫からギャンブルに目覚め、あれやこれやと手を付けていったそうで。

相場やサイコロ、剣闘など、いくつかのギャンブルを触ってみたものの、最初のライ麦の感触が忘れられなかったと。

そして、最終的に行きついたのが"チューリップ"。


しかし、私の記憶が間違っていなければ、チューリップはバブルの話で、あれはどちらかというと相場の話だった気が。

怪訝に思い、チューリップはどんなギャンブルなのかを聞いてみた。

「そうですね・・・なかなか説明しづらいので、実際に見ていただいた方が良いと思います。」

そうして、エルザに手を引かれ、私はチューリップ屋へと向かった。


そこは派手な装飾が施された露店で、いくつかの大きなカゴにチューリップの球根が山のように盛られている。

カゴに立ててある札には、それぞれの球根の産地や品種、値段が書かれていた。

花の球根にしては少し高いが、そんなに高すぎるというわけでもない。

せいぜい銅貨数枚で、貴族や商人でなくても、普通に手が届く金額だろう。

それを眺めていると、エルザがその中から一つのカゴを指さした。

「あれにしましょう、ヤメェダさま。今年のネザリンドの新種で、すごく良いんです。とりあえず、10個ほど買いませんか?」


それを聞いた私は、何を言ってるんだコイツはと思った。

一個が銅貨数枚でも、10個も買えば小銀貨以上。

そんなにホイホイ買うような金額ではなく、宿に泊まったり、ちょっとした贅沢が出来るくらいの金額だ。

少し悩んだが、財布に余裕はあるし、チューリップがなんなのかわからなければどうしようもない。

渋々、それを買い、家へと帰って行った。


家に着くと、荷物を降ろし、チューリップの球根を机に広げた。

見た目は普通の球根。ニンニクくらいの大きさで、赤い皮で覆われている。

二つ三つ手に取り、眺めているとエルザが言う。

「これは皮を剥くんです。私のおすすめは、上から少しづつ剥くのが、緊張感があって良くて。」

そういうものなのか、と思い一つ剥いてみる。

皮を引っ張っていくと、中の白い球根が徐々に見えて行き、それが半分くらいに差し掛かった時。

ピン!

と、高い音が鳴り、球根がわずかに発光する。

それを見たエルザがため息をつきながら言った。

「あぁ、ハズレですねぇ。次を剥きましょう。」

どうやらこれはハズレらしい。当たりだったらどうなるんだろう?


そして、二つ目を剥いたが、これも一つ目と同じでハズレらしい。

何が当たりなのかわからないまま、三つ目を手にする。

前の二つと同じように、皮を剥いていくと。


パキン・・・ビー!ビー!ビー!ビー!

キュイン!キュイン!キュイン!

ピコピコーン!ピコピコーン!プオーン!プオーン!プオーン!プオーン!

喧しい音を立てながら、球根は宙に浮き、回転しながら七色の魔力の光を放つ。

しばらくの間、その球根は音を立てながら、キラキラと光っていたが、光と音が収まると机の上に転がっていた。

「さすがヤメェダさま!すごいです!私もまだアルティメットブルーアイズホワイトスキンパートスリーを引いた事ないのに!」

良くわからないが、かなりレアなものが出たらしい。

その球根はハズレの白い球根とは違い、表面が青っぽい金属のような光沢に覆われ、光をかざすと色味が変わる。


確かに、これは綺麗だなぁ、と思いながらいくらくらいするものなのか、エルザに聞いてみた。

「うーん、そうですねぇ・・・私は剥き専なので、あまり詳しくないんですが、金貨1~2枚くらいだったかとぉ。」

思ってたよりは高価だった。で、剥き専ってなんだよ。この演出を楽しむだけか。


残りを剥いてみたが、派手な演出が起こるものはなく、黄色い球根が少し多めに光るくらいだった。

「あぁ、でもぉ。たまにハズレたと思ったら、急に光りだしてやっぱり当たりみたいなものもあってぇ。」

私は逆転演出はあまり好きではないので、先告知の方が、じゃなくて。

剥き終わったところで、本題をエルザに問いただす。

今、いくら借金があるのか。

エルザは言いづらそうにモジモジとしていたが、落ち着くと顔を伏せて数字を言い出した。

「えーっとぉ・・・ダヴェドさんのところで金貨50枚と、ミカエさんのところで30枚・・・あと、レーアさんのところにも20枚・・・」

思っていたより酷かった。この世界には総量規制は無いらしい。


これは、どうしたものか。

今の私の蓄えから、代わりに返済するのは簡単だが、どうせエルザはまた借金するに決まっている。

しかし、エルザに自力で返済させるにしろ、この高利な世界では働いても利息分を払っていくのも難しい。

頭を抱え、しばらく考えていたが、ふとあるものを思い出した。


そして、今度はエルザの家へ向かった。

ボロボロで建て付けが悪い戸を開けると、狭い部屋の中は大量の球根で埋め尽くされていた。

その球根は三桁では全く効かないだろう。四桁か、もしかしたら五桁くらいの個数があるかもしれない。

しかし、まぁここまでは想定内。

レアなものはどこにあるのかとエルザに聞くと、ゴミだらけの部屋には似つかわしくない綺麗な棚があった。

何段かに分かれていて、一番上の段にひときわ綺麗な球根が五つ並んでいる。


私は左から順番に指差し、いくらくらいするものなのか聞いていった。

「あぁ!それは一番レアなやつで、金貨2~3枚くらいにはなると思いますぅ。」

次。

「それもとても珍しくて、金貨1~2枚くらいでしょうかぁ?」

次。

「それはどうでしょうかぁ?金貨・・・いや、大銀貨数枚くらいでしょうかぁ?」

次。

「そうですねぇ・・・大銀貨5・・・3枚くらいかもしれないですぅ・・・」

次。

「それはぁ・・・大銀貨1枚くらいの値が付けば良い方でしょうかぁ・・・」


これも想定はしていたが、持っている球根を売っても利息を一二回払えば終わりである。

私はニヤリと笑って、エルザに言った。

「よし、エルザ。この球根を売って、借金を返済するぞ。」

それを聞いたエルザは、困惑しながらおどおどと答えた。

「そのぉ・・・金額を聞いていただいたと思うのですが、売ってもぜんぜん足りないのでは・・・」

心配するエルザを宥め、今日のところは解散し我が家へと帰った。


次の日。

私は大量の小さな袋を商店で買い、エルザの家へと向かった。

そして、私はエルザへ命令する。

「この袋の一つ一つに番号を書いて、球根を一つづつ詰めて。当たりを何番にするかは、これに書いてあるから、それには指定された棚のものを入れてね。」

エルザは良く分かっていない顔をしていたが、素直に球根を詰め始めた。

そうして、エルザといっしょに500個の袋に球根を詰めていく。

午前中の間には詰め終わり、ここへ来る途中に話を付けて置いた、露店までそれを運んでいった。


露店へ着いた私は、札に商品内容と金額を書いていく。

"チューリップくじ!大当たりはブラックナインパワーロータスミントアルファパートワン!ハズレでも無料券がおまけで付いてくる場合も?最後の一つをお買い上げいただいた方には、賞品としてポケットファーストリザードオブネザリンドを差し上げます!一回小銀貨一枚!十回まとめてなら小銀貨九枚!"

そう、私が考えたのは、オリパガチャだった。

かなり攻めた価格設定とサービス内容だが、これくらいしないとエルザの借金は返せない。

控除率は・・・現代なら詐欺と言われるかもしれないが、どうせこの世代の一般人には期待値計算なんて出来ないんだから、売り方と演出が大事である。


そうして、露店の番をしていたが、価格設定もあり、たまにポツポツと売れる程度。

その様子をエルザは心配そうに見ていたが、通りに人が増えてくる時間帯になってきた。

そこで、私は樽に袋を足していった。

もちろん、大当たりが入った袋を。

買った人がそれを引いてくれるかは運だったが、幸いにも一番人が集まる時間帯にそれは起こってくれた。

袋を開くと大当たり。喜んで叫ぶ客。集まる視線。


それを見た往来人が次々と、店の列に並んでいく。

そして、その瞬間を見ていなかった者たちも、列を見て、話しを聞いて、さらに列に加わってくる。

最初の500個セットが売り切れるまで、2~3日は掛かるかと思っていたが、その日の夕方には完売していた。

さらに明日もやるなら、朝一で買いに来ると、買えなかった人や、当たりを引けなかった人からの声をいただいた。


こうなればこっちのものである。

隙あらば抱き着こうとしてくるエルザをしばき倒しながら、延々と袋詰めをさせていく。

あまりにも売れ行きが良く、詰める球根があっという間に無くなったので、新たに剥いたり、買い取りをしたり。

真似してくるものもいたが、おまけやサービスも手を変え品を変え、そのたび売り上げは伸びていった。

3カ月も経ったころにはエルザの借金は払い終えていた。


「ヤメェダさまぁ♡あなたは私の神ですぅ♡これ以上のお慕いする言葉が思い浮かばないのが私の罪です♡」

エルザの信仰度が限界突破していた。

まぁ、これはしょうがないかもしれない。

絶望的な状況に現れ、危機を救ってくれたんだから。

そういう存在がいたら私も信仰してしまうかもしれない。


厄介なことをしてしまったと後悔しつつも、なんとか上手く行って良かったと思い胸をなでおろしていると、エルザが何かを持ってきた。

「ヤメェダさま!良いものを見つけましたぁ!これは翡翠の原石と言ってぇ・・・」

エルザは全く懲りていないようだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
当たりの名前、なんか遊戯王とかどこかしらのゲームに出てきそうな名前だなぁと読んでいたら……オリパッ! ブルーアイズ、限界突破とか含め、もうあっち系にしか見えない! まぁ、異世界とカオスの融合は楽しい…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ