異世界生物怪奇譚12.5:お土産
ここは異世界、ナイラーヘイムル。
日は東から昇るし月は一つだが、生き物は現実世界と少し違う。
そんな世界。の少し変わった生き物のお話。
「ただいまバーイリンより帰りました。ナギお嬢様、お久しゅうございます。」
時は少し流れ、場所も変わってヤシマの武家屋敷。
護衛の任が終わり、ツバキはバーイリンからヤシマへと帰ってきていた。
「えーっ!なにそれ、めっちゃ可愛いやん。お兄やんに買うてもろたん?うちへのお土産はぁ?」
そう、メイド服が気に入ったツバキは、着たままヤシマまで帰っていた。
地球半周も旅すればいくらか痛みそうなものだが、何故か綻び一つなくメイド服は綺麗なまま。
そして、何処で覚えたのか、スカートの裾を軽く持ち上げお辞儀する。
「ヤマダさんに買ってもらいました。もちろん、ナギ様の分も買ってきてありますよ。」
そう言って、荷物から服を取り出すと広げてナギへ見せる。
メイド服と似たような意匠ではあるが、色は赤く、フリルやリボンがあしらわれ、魔法少女もとい地雷系のような服だった。
「可愛いぃ!めっちゃええやん!」
ツバキからそれをひったくるように受け取ると、ニコニコしながら続ける。
「でも、うちに似合うかなぁ?ツバキみたいに華奢やったらええけど。」
日頃、男装に近いような恰好が多いナギとしては、可愛らしい恰好が少し不安だったようで。
「きっと似合いますよ。近いサイズの物を見繕ってきたのですが、採寸が出来なかったのでこれから合わせていきましょう。」
フィッティングを勧めたツバキだったが、ナギは我慢出来なかったようで。
「今着たらあかん?細かいところは後でやったらええやん。早く着んともったいない。」
何がもったいないのかわからないが、そう言いながら帯を解きだした。
ツバキは、しょうがないですねぇ、と呟きながら顔は笑っていて、こちらもこちらで早く着せたいようだった。
ナギが着替えている間、ツバキは何枚かの鏡が張り合わせられた姿見を持ってきていた。
そして、着替え終わったナギを鏡に映す。
「お似合いですよナギ様!すごく可愛い!」
そこにはフリフリの衣装に身を包んだナギの姿が映し出されていた。
ただ、華奢で平坦な身体のツバキと違って、凹凸豊かなナギの身体。
胸の布はパツンパツンに張り、ボタンは今にも弾け飛ばんと悲鳴を上げていた。
腰はグッと絞られていたが、高いヒップはスカートの裾を持ち上げ、長い脚はスラリと伸び、太ももは半分くらい露出していた。
「めっちゃ良い。良いんやけど・・・ちょっとセクシーすぎへん?」
本来、ある程度ゆったりした造りのはずだが、大柄でメリハリのある身体のナギが着ると、魔法少女というよりグラビアアイドルだった。
「いえ、最高ですナギ様。ヤマダさんにも見せてあげたいくらい。」
そう言われたナギは照れながら、身体をくねらせた。そうするたびに、短いスカートが引き上げられ、中が見えそうなくらい短くなる。
「そうかなぁ?そうかなぁ?お兄やんも喜ぶかなぁ?」
けっこうちょろいお嬢様だった。照れながらも、ニコニコしながら鏡の前でグルグル回ったり、ポーズを取ったりしているところに。
「ナギ様。お土産はこれだけではないんです。」
そう言って、姿見を壁に立てかけると、もう一つの包みを取り出す。
そして、何度か開封された後のある、油紙を開くと中身を取り出して拡げた。
「これです!服も良いんですけど、これが!これが!」
ナギは、見慣れないデザインの冊子に怪訝な顔をしながら、手に取りページを、捲る。
2ページ、3ページと捲り、4ページと進むと手が止まった。
「えっ!?・・・なにこれ。」
一瞬、ツバキの顔を見ると、またその薄い本へ視線を移す。
ページを捲り、少し戻って、また捲りながら読み進める。
「これ、バーイリンに合ったん?全部?うちがバーイリンに行った時はなかったんやけど。」
そう、バーイリンで文化浸食が起こっていたのは、ナギが帰った後で、ちょうど入れ違いになっていた。
そこから、ナギは二冊目、三冊目と次々と読み進めて行く。ツバキも隣に座って、ナギが読み終わった本を手に取りいっしょに読んでいった。
そうして、五冊全て読み終え、重ねて置くと大きく手を叩いた。
「よし!行くで、バーイリン!ほら、お兄やんにお礼もしにいかないかんし。」
言い訳はすぐに思いついたようだった。
それを聞いたツバキは、ニヤニヤしながら答える。
「そうですねナギ様、私もそう思います。お父様には適当な理由を付けて行きましょう。私もお供します。」
二人はニヤニヤしながら手を取り、バーイリンへの旅への悪だくみを始めた。
そこからしばらく経ち、二人は上手い事言い訳を用意出来たようで、出島で大陸行きの船へ乗ろうとしていた。
「お兄やん元気してるかなぁ?」
そう呟いたナギにツバキが答える。
「頼りなさそうに見えて、意外としっかりしてるんで大丈夫ですよ。私が付いてた時も・・・」
「えー!何があったん?教えてぇな。」
そんな話を二人がしていると、大陸から渡ってきた人たちとすれ違う。
そして、二人は気付かなかったが、船から降りてきていた中に変わった人間がいた。
背はかなり高いが、ひょろひょろとしていて猫背の女。服は派手な着物をダボっと着崩している。目の下には取れない隈がくっきりと浮き、頬はコケていた。
「ここがヤシマか。ちゃんと和風だねぇ。ヤマダさんには会えるかなぁ。」




