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転生監査機関RAC  作者: ぽんにむ
第二章「輪廻庁」2-1「ゥルル編」
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CASE.084「バレた☆」

ご覧いただきありがとうございます。


※本作はカクヨム、noteにも掲載しています。

設定資料をご覧になりたい方はぜひnoteに訪れてみて下さい!!

https://note.com/ponym/m/mc8c9ad24eef6

「今、なんと?」


 衝撃の発言を耳にし、ディーテルは思わず足を止める。

 そればかりか、作戦室へずんずんと入り込んできた。


 振り出しどころか、もはやマイナスである。


(('Д')………)

(おやおや、これで振り出しだ)

(アンちゃん~~~ッ!!)


 ユリスとカイの予感は、相変わらず今回も的中した。

 大人組が必死で作った追い風を掻き消すのは、いつだって新人たちなのだ。


「アンちゃん、いーまはちょっとタンマッスゥーッ」

「ふえ? ご、ごめんなさい! もしかして会議中でした?」


 会議中というか、事情聴取というか、ほとんど尋問に近い会議である。


 ミラは必死に頭を回転させるが、いかんせん半分パニック状態。

 アンを自然に黙らせる方法など、まるで思いつかない。


 だが、それ以上に――。


 作戦室もなかなかにピンチな状態ではあるが、アンの衝撃発言はあまりにも突拍子がなかった。

 モニターに残る「ISIS」の件も相まって、ノルハイコですら身体が固まってしまっている。


 本来ならば、大手柄とでも言うべき情報だろう。


 だが、タイミングがあまりにも最悪なのだ。

 それでいてこの場面では非常に都合が悪く、厄介者のディーテルの興味をすっかり引いてしまっている。


「どういうことか説明願います、アン執行官」

「は、はい……。えと、どちら様ですか?」

「失礼。私は本部から参りました、情報官のディーテルと申します。差し支えなければ『イシス神』の件、ご教示願いたい」

「りょ、了解であります!」


 (いやいや、全然了解じゃないッス!)


 ミラはアンとの通信を一時的に遮断しようと、こっそり手を伸ばす。

 だが、その手をノルハイコが止めた。


(ちょ、ノル先輩!? 何するんスか!!)

(い、今通信を切るのは危険すぎます! それに……)


 ノルハイコとしては、リスクを冒してでもアンの言葉を聞いておきたかった。


 サイモンが必死こいて漕ぎつけた「ISIS」という文字。

 もしかすれば、アンの報告が決定打となるヒントになるかもしれない。


 そう考えると、一オペレーターとして聞き逃すわけにはいかない。


 そしてそれは、他の面々も同じ様子だった。

 アンを止めようにも止められない。

 好奇心の方が勝っているという状態だ。


 ミラがカイの方を見ると、彼女は「アンの好きにさせて」と唇の動きで表現した。


(ホントに良いんスかぁ!? 知らないッスよー!?)


「お願いいたします」

「はい! ま、まず私の恩寵(ギフト)は、人の心を読めるという能力でして――」


 アンはディーテルに、己の異能について簡単に説明した。

 ディーテルはうんうんと頷いており、後ろの女性情報官は前かがみになって記録、録音している。


「それで?」

「ゥルルの中から声がしたんです!」

「ほう……その者がイシス神と名乗ったと?」

「その通りです!!」


「…………ふむ」


 全員が信じられぬという顔で、アンの報告を受け止めていた。


(ユリス……これどういうこと?)

(僕にも分からない。明らかに常軌を逸した報告だが……)


 人力検索機であるユリスの脳内にすら、アンが言ったような事例は見当たらないらしい。

 彼は新しい知識に出会えたと、目を大きく開き、熟考し始めた。彼ですら知らないとなると、あと頼りになりそうなのは――。


 カイはヘパーに目配せを送る。

 だがヘパーは一度カイと目を合わせると、ぷいっと逸らした。


 分かりやすいほどに、何かを知っている風な態度である。


「本当にイシス神なのですか?」

「は、はい?」

「いえ。その方は何を根拠に自らをイシス神と名乗っているのでしょうか? 何故アン執行官は、その方をイシス神だと断定できたのですか?」

「ふ、ふえぇ……」


 情報官らしい畳みかけるような尋問に、アンは声からして慌てふためいている。


「ふむ……信憑性には少々難アリ、ですね。それに、そう軽々とあの方々(主神級の神々)を名乗るべきものでは――」

「でも本当なんです!!」


 アンは負けじと声を張り上げた。


「イシスさんは言ってました! 私はゥルルを守るために、自ら身体を棄てたって! ゥルルのそばにいるために、ずっとあの子の中にいるんです!!」

「お、落ち着いてください……言っている意味が――」

「イシスさんはただ、ゥルルと一緒にいたいだけなんです! それは私の恩寵(ギフト)がちゃんと証明してます!!」


「……」


 ディーテルはカイの方を見つめる。

 補足しろとのメッセージを受け取ったので、カイは慎重に口を開いた。


「アンの恩寵(ギフト)は、相手が意図的に嘘をついているかどうかを拾える。少なくとも、その声の主が“自分はイシス神だ”と分かったうえで嘘をついているなら、アンには分かるわ」

「……では、その者自身がそう思い込んでいる可能性は?」

「そこまでは否定できない。でも、アン自身が狂言を言ってる可能性はないわ」

「……なるほど」


 ディーテルは再びアンの声へ意識を戻す。


 だがカイは、かつかつと前に出た。

 そしてモニター前まで移動すると、ミラを体で隠すように、ディーテルとの間へ割って入る。


「それとウチの執行官を舐めないで頂戴、ディーテル情報官」


 声音が少し低くなる。


「アンはとても誠実な良い子よ。まだ新人だけど、それでもカテゴリー“α(アルファ)”の世界を1人で生き抜く力がある。そんな子がこんな馬鹿げた嘘をつくとでも?」


 そう言いつつ、カイは指文字でミラに指示を送る。


(えーと、“音量オフ”……オッケーッス……)


 ミラはそっとキーボードに手を伸ばし始める。

 ディーテルがカイに気を取られている今がチャンスである。


「いえ、大変申し訳ございません。失礼なことを申しました」

「いいのよ。それより、さすがにこの情報を聞いておいて、このまま事情聴取なんて悠長なことしてられないわ。今日はここでお暇してくれる?」

「ははは……たしかに。これはアン執行官が獲得した貴重な情報ですからね」


 あと少しで指が届く。

 ディーテルはお辞儀をし、いよいよ退出の準備に取り掛かる。


 その時――。


「私、この任務辞退します!」


「……は、はえ?」

「……はい?」


 突然の「やーめた」宣言に、カイとミラが呆けた声を出してしまう。


「ア、アン? どうしちゃったの??」

「私、どうしてもゥルルが悪い子には見えないんです!」


 アンは必死に、思いの丈をすべてぶつけるかの如く、言葉を紡ぎ続ける。


「この子は何もしてない! イシス神も生きてるんです! 『神殺し』だなんて、きっと何かの間違いです!!」

「ちょ、ちょっとアン! 落ち着いて! ね? 一度情報を整理しましょ?? (ミラ、早く音量切って!!)」

(あぁあ、あいあいさーッ!!)

「カイ先輩、これはどういう――」


「ミラ先輩!!」


 あと少しで指が届く所で突然名を呼ばれ、ミラは固まってしまう。


「は、はい?」

「ミラ先輩、なんとかできませんか!?」

「ア、アタシッスか?! ななななんで――」

 

「だってこの前教えてくれたじゃないですか! 前に“転生者”たちの過(・)去(・)を(・)覗(・)き(・)見(・)たことがあるって!!」


 


「ちょッッッ!?!?!?!?!?」

「……はい?」


 ミラは全身の産毛が逆立つ感覚に襲われる。

 同時に、背後からとてつもない殺気のような何かを感じ取った。


「ミラ?」

「ち、違うッスよ!? カイ姐もちつ、おちついてくださいッス!? ぁ↑ぁ↓ぁ↑ああアンちゃん、何か勘違いしてるッスよ!! きっと転生者じゃなくてカイ姐の恥ずかしい検索履歴を……あぁあああああ↑↑、これもこれでマズイッスゥッ!! アタシのバカバカバカ!!」


 だがアンの耳には、ミラのぼそぼそした早口の弁明は届いていないようだった。

 さらなる追撃を送るべく、アンは必死に懇願するように言葉を放つ。


「ミラ先輩の神業があれば、転生者の過去なんてお茶の子さいさいなんですよね!? だったらお願いします!! ゥルルの過去を見てください! きっとこの子は、ただ純粋にこの世界で生きる、たった1人のスライムなんです!!」


「ミィーラァーー??????」

「ちょ、ちが!! 待って、そんな目でアタシを見ないで!! アンちゃん訂正するッス!!! それはただの嘘から出た真と言いますか……とにかく、ただ自慢したくて嘘ついちゃって――」

「ドゥー先輩と一緒に見たんですよね!? ブッタさんの力を使えば、縁がどうとかって……」

「くぁwせdrftgyふじこlpjGいうpwおぱ98hjき」


 止めを刺され、ミラは発狂しながら失神した。

 かろうじて消音ボタンは押せたらしく、彼女の意識と共にアンの声は遮断された。今更だが。


 カイはそんな彼女を、軽蔑するかのような、これまで見たことのない形相で、這いつくばるバカオペレーターの背中を見ていた。


「カイ監査官。詳しくお聞かせ願えますか?」

「……ディーテル、お願い。私たちに時間をちょうだい。ね?」


 ディーテルに甘えるように、カイは報告だけは待ってほしいと彼の手を掴んで懇願する。


 だが、さすがは本部直属。

 親しい仲であっても、彼は仕事は仕事と割り切れるタイプのようだ。


「それはお受けできかねます、カイ先輩」

「ディーテル……」

「我ら情報官の使命は、この眼、この耳、五感すべてによって得た情報を届けること。そこに、貴女との友誼が入り込む余地はありません」

「お願い! 待って!!」

「申し訳ございません……。お前たち、撤収するぞ」


 ディーテルは指を鳴らすと、女性情報官たちも即座に記録を中止し、扉へとつかつか早足で向かっていく。

 カイは何とか引き留めようと、口八丁手八丁で言いくるめようとするが、彼は思った以上に融通が利かない。


 まさしく謹厳実直の体現者のようだ。


「ディーテル……待って!」


 無慈悲にも、あっという間に扉前へ差し掛かった情報官一行。

 ディーテルは残念そうな表情で、カイに一言だけ残そうと振り返った。


「大丈夫です、カイ先輩。できるだけ本部の方には内容を丸くしてお伝えします。さすれば少しは罪状も…………おや?」


 だが彼の背中に、何かがぶつかる感覚があった。

 振り向くとそこには、いつの間にか待ち構えていたヘパーがいた。


「あの……では失礼します、ね? 皆さま御達者で……」

「おう、達者でな! また明後日くらいに会おうじゃねえか、情報官の坊主!!」

「は、はい?? 何を言って――」


 ボゴン。


 鈍い音が作戦室に響いた。


 正体はヘパーの拳骨。

 それが直下で、ディーテルの頭上に炸裂したのだ。


 ばたりとディーテルは人形のように倒れる。

 頭には漫画でしか見たことのないたんこぶができており、ヘパーの拳骨の威力を物語っている。


「あ、やべ。死んでねえよな?」

「「貴様ッ!!」」


 女性情報官の2人が戦闘の構えを取った。

 ヘパーはやれやれと肩をすくめており、完全に舐め切っている態度だ。


 それに対しさらに憤慨した女性情報官が、今まさに飛び掛からんと膝を曲げた。

 

 だが次の瞬間、糸が切れたかのように意識を飛ばしてしまう。


「おう、お疲れさん」

「うっす」

「うーすっ」


 その犯人はインヨウ兄妹。

 ロザリアの件でも見せた目にも留まらぬ高速移動で、彼女らの意識を掻っ攫っていったのだ。


「あなたたち……何やって――」


 カイはただひたすらに困惑していた。


 情報官の3人がお尻を突き出す形で、情けなく倒れている。

 前代未聞の異常な光景だ。


 そんな彼らをひょいっと軽々持ち上げると、ヘパーは自信満々に宣言した。


「よし、テメエら。腹くくれ」


【今回の用語まとめ】


■情報官ディーテル

RAC本部直属の情報官で、カイの後輩。

私情と職務を明確に切り分ける謹厳実直な人物であり、特殊第六の事情を知っても報告を曲げることは拒否した。


■アンの任務辞退宣言

イシス神との対話を経て、アンが「ゥルルを助けたい」という自身の意思から口にしたもの。

ゥルルの神殺しという罪状そのものに疑念を抱き、本任務から降りる意思を明確にした。


■ミラとドゥーの過去の不正行為

以前、ミラがドゥーと共に転生者の秘匿された過去へ踏み込んだ一件。

アンの悪気なき暴露によって、よりにもよって事情聴取中の情報官の前で再浮上してしまった。


※ミラとドゥーが転生者の過去を覗き見た件については、CASE.026「転生者たちの歴史」参照。


■情報官強制足止め

ディーテルたちが本部へ報告しようとしたため、ヘパーがディーテルを拳骨で昏倒させ、インヨウ兄妹が残る情報官2名を制圧。

特殊第六はついに「事情聴取を誤魔化す」段階から、情報官を物理的に帰さない段階へ突入した。



――――――――――――――――――――――――――――



ここまでお読みいただきありがとうございます('ω')ノ



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※AIの利用について:

・本作ではChatGPTとclaudeを、誤字脱字の確認、前話との整合性確認、アイデア整理、世界観管理の補助として一部使用しています。

・作品本文および物語の主要構成は、すべて作者自身が執筆・最終決定しています。

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