↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生監査機関RAC  作者: ぽんにむ
第二章「輪廻庁」2-1「ゥルル編」
PR
84/123

CASE.082「まだバレてない」

ご覧いただきありがとうございます。


※本作はカクヨム、noteにも掲載しています。

設定資料をご覧になりたい方はぜひnoteに訪れてみて下さい!!

https://note.com/ponym/m/mc8c9ad24eef6

 時は少し巻き戻り、場所は特殊第六執行部隊の作戦室。


 あり得ぬ場所から「イシス神」の名が出現し、一同の間には、言いようのない嫌な空気が漂っていた。


「どどどどどどどうするんスか!?」

「ほーら、言わんこっちゃねえ。真っ黒じゃねえか、この案件」

「あぁーもう! なんでウチはいつもこんな案件しか来ないわけ!?」


 ミラ、ヘパー、カイの順で、各々が愚痴を吐いていた。


 ノルハイコとサイモンの第四執行部隊組は再度分析を試みているが、やはり出てくる「ISIS(イシス)」の文字に、彼女らも頭を抱えていた。


「隊長……これはどういうことでしょうか?」

「わ、分かりません……。何故、彼女の名前が……いや、それよりも聞いていた話とは――」


 準特級オペレーター兼上級執行官であるノルハイコにとっても、現在のこの状況は異常そのものであった。

 そこに、やつれて髪が乱れたカイが倒れ込んでくる。


「なぁ~にか分かったかしら……ノルちゃん」

「え!? あ、はい! イシス神は亡くなったはず——だったのですが、これは明らかに彼女からの介入を示しています。つまり、彼女は確実に生きているという証拠であり、我々と敵対している可能性があります」

「わあ、ありがとう。素晴らしく絶望的な報告ね……」

「大丈夫ですか、カイさん? 少し休んだ方が――」


 カイはふらふらと、遠い景色を見ているような虚ろな目になっており、ノルハイコがそれを支える。

 だがそこに、ユリスのノンデリが炸裂した。


「ついでに本部からの通達がある。どうやらデータバンクへの侵入について情報官が事情聴取のために訪問するらしいが……どちらかというと、こちらの方が脅威だ」

「はぁーーッ、もう!! アンタたち今(・)度(・)は何をやらかしたの!?」


 カイは天を仰ぐと、ヘパーの方をギロリと見つめる。

 「今度は」という言葉から、カイの中ではすっかり「ヘパー・ルールー」コンビも「ドゥー・ミラ」コンビと同列の厄介者扱いとなっているらしい。


 ミラは肩をびくつかせ、対するヘパーは激昂した。


「おめぇーが調べに行けって言ったんじゃねえか!」

「限度ってもんがあるでしょうが!! まさか本部の秘匿データバンクに侵入しただけじゃないでしょうね!?」


 ミラは再度、肩を跳ねさせる。

 過去にドゥーとの悪ノリで同じようなことをしたので、彼女もこの話に全くの無関係というわけではない。


「侵入なんかしてねえ!! ちょっくら覗いただけだ!! なぁおい、クソガキ」

「ちょッ、あーしを巻き込まないでくんない!?」


 急に話しかけられ、そそくさと逃げようとしていたルールーはカイに首根っこを掴まれる。

 まるで猫のように背筋を丸め、大人しくなるルールー。

 その横で、カイとヘパーの口喧嘩が勃発する。


「バカあんた、それを侵入って言うのよ!!」

「馬鹿言え! キャバクラで言う、ちょっと入口から顔覗かせて女の顔を「今日イイ女いるかァ?」って拝むみてえなもんだ! なんも支障はねぇ!!」

「大アリよ、でかっ鼻!!」

「あぁん!? うっせえぞビッチ!! 大体オメエはいちいち細ぇーんだ!!」

「あんたが大雑把すぎるのよ! このがさつ親父!!」

「ヒステリックおっぱい!!」

「無駄にデカい顔!!」

「デカチチ!!」

「朴念仁!!」

「酒狂い!!」

「引きこもり!!」


 絶えずIQ低めな罵詈雑言が飛び交い、あのインヨウ兄妹すらも部屋から顔を覗かせている。

 このままでは埒が明かないので、ユリスが仲裁を試みた。


「落ち着きたまえ、2人とも。今はそのような幼稚な舌戦をしている暇は――」

「引っ込んでろワカメ頭!! その眼鏡叩き割んぞゴラ」

「あなたはコーヒーでも淹れてきなさい!!」


「……ohh、これは参った」


 あまりにも大きな飛び火が降りかかり、ユリスは情けなくも瞬時に退散する。

 そこに、ミラの疑問の一声が投げかけられた。


「あのーやばいって、これ具体的にどうヤバいんッスか?? 参考までに……」


 当然の質問に固まる2人。


 あまりにも基礎的な疑問なので、2人は一周回って冷静になる。

 とはいえ誰も回答しようとしないので、ノルハイコがぼそりと解説してくれた。


「万が一、ヘパーさんがデータベースに不正アクセスしたことが発覚した場合、おそらくはとても厳しい処分が……」

「え”ッ!! そそそそれってどんくらい――」

「良くてクビ、悪くて擬似タルタロス送りかと……」


「イヤァー!!」


 ミラは発狂した。

 そのままカイの懐へと飛び込むと、何かを早口で懇願し始める。


「やばいやばいやばい、カイ姐マジやばいッス。本当にどうしよう、本当どうすればいいんスかぁ~!?!?」

「ど、どうしたのミラ?! あなたはこの件にはあまり関係ないわよ?」


 何故、当事者でもないミラがこんなにも慌てふためいているのか。

 カイには甚だ疑問であり、さっきまでの口喧嘩の熱がすっかり冷め切ってしまう。

 ヘパーはばつが悪そうに髭をぽりぽりと掻いており、健気にもユリスは全員分のコーヒーを淹れていた。


「大丈夫よ。タルタロス行きはこの馬鹿(ヘパー)1人だけだから。あなたは何も心配しなくていいのよ?」

(ぴぇえええええ!! 余計にヤバイッスウウウッッ!!!)


 カイの慰めの一言。

 それは図らずもミラの過去の罪を抉る、クリティカルヒットとなる。


 カイの胸の中でえぐえぐと嗚咽を上げるミラを、ついに部屋から出てきてしまったインヨウ兄妹までもが、よしよしと撫で始める。

 だがそこに、ユリスの余計な一言が追加された。


「それのことだが。カイ監査官。……おそらくヘパー技術官が投獄された場合、かなり面倒なことになるのでは」

「…………」


 どうやら問題は、ヘパー単体では収まらないらしい。

 またもやユリスの空気を読まぬ事実勧告に、カイは目を細める。


「どうなるのよ、ユリス裁・定・官?」

「彼は特(・)級(・)官(・)だぞ」

「………………あー、そうでした……」


 何がヤバいのか分からず、インヨウ兄妹は頭に?を浮かべる。

 カイは察したようで、眉間を強く指でつまむ。


「いまだ我々特殊第六執行部隊が存続できているのは、ヘパー技術官が特(・)級(・)官(・)であることの影響も大きい。それが失われるとなると……」

「最悪、特殊第六執行部隊が消滅するわね」

(いやあああああああああぁぁぁぁ)


 ミラは膝から崩れ落ちる。

 ヘパーが擬似タルタロス送りとなり、さらに後ろ盾である特殊第六執行部隊まで消えれば、ミラを現在の立場に留めているものも失われる。

 以前の不正アクセスを含めた彼女のやらかしが改めて追及されれば、否応なく彼女自身もただの“タルタロス行き”となるだろう。


 それはつまり、他の囚人と大差ない刑を科されるというわけであり、やがて白目を剥いて黄昏れ始めるに至った。


「オイラたち、やばい感じ?」

「ん?」

「イン、クビになっちゃう??」


 インヨウ兄妹が心配そうにカイを見つめる。

 カイは優しく2人を抱擁し、母神のような包容力のある声で諭し始めた。


「大丈夫よ。私がなんとかするから」

「ホント?」

「うん。だから2人はお部屋で遊んでなさい」


 インヨウ兄妹は再び笑顔を見せ、カイも一安心した。


 とはいえ、状況が何も変わっていないのも事実。

 ここは一度現状を整理し、来るべき情報官とやらを何とかしなければならない。それにイシス神の件もある。

 正直キャパオーバーにはなりかけているが、ここを乗り越えてこその指揮官の腕の見せ所だ。


 カイはユリスが淹れてくれたコーヒーを手に取った。


「本部はなんて?」

「通達では、情報官が直接作戦室を訪問するとのお達しだ。どうやら全部隊が対象のようだが……」

「なるほどね……じゃあ、まだなんとかなるわね」


 カイはコーヒーを啜ると、いつもの落ち着いた雰囲気を取り戻した。

 ミラは終始「なんで?」という顔をしているが、どうやら状況を掴めていないのはミラとインヨウ兄妹の3人だけらしい。


「ヘパー、あんた痕跡残してないでしょうね?」

「あたぼうよ。俺を誰だと思ってやがる」

「そう……。ユリス、これ全部隊が対象ってことは、まだ本部は犯人を特(・)定(・)で(・)き(・)て(・)い(・)な(・)い(・)って認識でいいわよね?」

「問題ないはずだ」


 議論は加速度的に熱を帯び、ミラは完全に置いてきぼりを食らっていた。


 ノルハイコたちはイシス神の介入痕跡の分析。

 カイたちは情報官への対応策。

 完全に蚊帳の外になっている。


 過去のやらかしにより、予想だにしなかったところで横っ腹を貫かれたミラは、置いてきぼりを食らったことでさらに不安になっていた。

 カイの裾をぐいぐいと引っ張ると、捨てられた子猫のような目で彼女を見上げる。


「え、ちょ、どういうことスか?」

「(? ちょっとどうしちゃったの、この子?)わざわざ特定できていたら、全部隊の事情聴取なんてまどろっこしいこと、あの合理主義者のあの方々がやると思う?」

「え……えぁ?」

「要するに、まだヘパーのやらかしはバレてないってこと! そうよね?!」


 カイはその場の、少なくとも頭が回る全員に目配せを送る。

 ユリス、ヘパー、ルールーが頷き、作業をしている第四の2人もこちらを振り返り、同意を示す。


「では、作戦を伝えます」


【今回の用語まとめ】


■地獄の板挟み

現在の特殊第六執行部隊が置かれている状況。

外では、死亡したはずのイシス神による転送妨害の可能性が浮上。一方RAC内部では、魂籍管理局への不正アクセスを巡る事情聴取が開始されようとしている。

イシス神を追えば本部に睨まれ、本部への対応を誤ればヘパーの失脚――最悪の場合、特殊第六そのものの存続にも関わるという、文字通りの板挟み状態。




――――――――――――――――――――――――――――



ここまでお読みいただきありがとうございます('ω')ノ



よろしければ、フォロー・ブックマーク・感想などいただけますと励みになります。

感想については、質問・ご指摘・話の感想など、なんでもお気軽にお寄せください~!!全て受け止めます!!



※AIの利用について:

・本作ではChatGPTとclaudeを、誤字脱字の確認、前話との整合性確認、アイデア整理、世界観管理の補助として一部使用しています。

・作品本文および物語の主要構成は、すべて作者自身が執筆・最終決定しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。