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転生監査機関RAC  作者: ぽんにむ
第二章「輪廻庁」2-1「ゥルル編」
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CASE.081「もしもし、今あなたの脳内に――」

ご覧いただきありがとうございます。


※本作はカクヨム、noteにも掲載しています。

設定資料をご覧になりたい方はぜひnoteに訪れてみて下さい!!

https://note.com/ponym/m/mc8c9ad24eef6

【……か】

「むぅ……」


 布団の中で丸まるアンとゥルル。

 

【…………すか】

「んむ……」


 すやっすやであり、任務中とは思えないほど深い熟睡をしている。

 すべすべのゥルルの身体はちょうどいいサイズ感で、表面もひんやりとしているため、最適な抱き冷やし枕と化していた。


 そんなアンの頭の中に、誰かの声が響いていた。


【…………聞……ますか】

「んむぅ……」


 夢にしてはあまりにも朧げであり、現実にしては曖昧な声だ。

 アンは謎の声にうなされ、口をむにゃむにゃさせる。


 すると声の主がしびれを切らしたのか、はっきりとした声音でアンに語りかけた。


【起きなさい、腹ペコ娘!】

「ふぁい!」


 アンは飛び起きた。


 布団が跳ね、寒くなったのかゥルルがぷるるっと震える。

 だがすぐに、むにゃむにゃと眠り始めた。


「?……??……??」


 アンは目をゴシゴシと擦りながら、周りを見渡す。

 眠気で視界がひどくぼやけており、結局何も把握できていない。


「……むぅ」


 そしてそのまま、布団の中へと戻っていく。


【こら、お布団に戻らない!】

「!?!?」


 再度頭に声が響き、アンはいよいよ目が覚めた。

 今度はぱちくりと瞬きをし、明瞭となった視界で周りを見渡す。


 特に何もない。


 依然として、ゥルル専用の子供サイズの家具たち。

 そして懐で眠るゥルル本人。


 それ以外は何も変わらない。


「……う、うぇ……誰?」


 作戦室のミラたちにも通信を試みるが、なぜか反応がない。


 何か向こうでトラブルが起きているのか。

 となると、この声の正体は一体何か――。


 そう考えていると、またもや声が頭の中に響いた。


【やっと起きましたか……全く。最近の執行官はずいぶん腑抜けているようですね】

「ふ、ふぇ!? だ、誰、誰ですか?!」


 自分たち以外、誰もいない空間から見知らぬ声が聞こえる。


 女性の声だ。

 大人びた、慈悲深く温かい女性の声。


 だがその響き方は、口から発せられた言葉というより、脳内へ直接語りかけられているような感覚だった。


【何を驚いているのですか。これは貴女自身の力を介したものですよ】

「わ、私の力ですか? 私の――」


 そこでふと、アンは自身の恩寵(ギフト)を思い出した。


 彼女の能力である『|あなたの物語を聞かせて《ユア・テイル》』は、人の心の内を、言葉を介して感知することができる。

 そしてある程度親交を深めることで、そ(・)の(・)人(・)物(・)の(・)心(・)の(・)声(・)を(・)聞(・)く(・)こ(・)と(・)が(・)で(・)き(・)る(・)。


 つまり、この声も誰かの心の内から届いているということだ。


「えぇ!? でも私、あなたとは初対面……なんじゃ」


 アンはひたすら混乱していた。


 人の心の声を拾える条件は、ある程度の親密度。

 事前にある程度仲良くなることが必要だ。


 だが、この女性とは初対面。

 本来であれば、彼女の声など聞こえるはずがない。ましてや姿かたちもないのに。


【はぁ……察しの悪い娘です。特六のハズレの方を引いてしまいましたか。できれば、あの赤モノアイの執行官がよかったのですが……まあいいで――】

「ドゥー先輩を知ってるんですか!?」


【…………】


 赤モノアイといえば、あの男しか思い浮かばない。


 それにこの声の主は幾度も「執行官」、そして「第六」という言葉を口にしている。

 つまり、こちらの事情をある程度知っているということだ。


 アンはすぐさまそこへ食いついた。


「ドゥー先輩は今どこですか?! 何で私たちのこと知ってるんですか?! なんで――」

【落ち着きなさい】


「……はい」


 アンはしゅん、と大人しくなる。

 困り果てた様子の声の主は、少しだけ声音を和らげた。


【貴女の恩寵(ギフト)は把握しています。人の心の内を聞き取る力なのでしょう?】

「はい……おっしゃる通りです」

【その繋がりを利用して、こちらから貴女へ語りかけています。ここまで言えば、お分かりでしょう】

「え、ちょっと! もうちょっとだけヒントを〜!」

【………………ゥ】


「…………う?」


 あまりにも察しが悪いので、とうとう声の主は答えを口にした。


【私は今、ゥルルの中から貴女に語りかけています】

「…………うぇ?」


【………………】

「………………」

【………………】

「…………あ!」


【ハァ……やっとですか……】


 声の主は、思わずツッコミを入れてしまう。

 アンはようやく理解したのか、反射的にゥルルへ手を伸ばしかけた。


【こら、おやめなさい。私の坊やがまだ寝ているでしょうが!】

「ピィッ、ごめんなさい〜!」


 即座に腕を引っ込める。

 頭は大混乱中だが、ほんの少し足りない彼女の頭でも、とりあえず以下のことが分かった。


 1.声の主はゥルルの中にいる。

 2.自分の恩寵(ギフト)や、執行官のことを知っている。

 3.ゥルルの保護者……っぽい?

 

 作戦室に応援を要請しても、一向に連絡がつかない。

 耳のイヤホンを叩いても、何の反応もないままである。


【少々回線をいじらせて頂きました。しばらくあちらとの通信は不可能かと】

「…………あなたは一体、誰なんですか?」


【どうやら、自分の置かれた状況をある程度は理解していただけたようですね】


 声の主は、こほんと咳払いをして仕切り直した。


【その質問に答える前に、まずはこちらの質問にお答えなさい】

「は、はい! (この人、圧が強いよぉ……!)」


 声の主の圧に、アンはびしっと返事をする。

 やけに先ほどから当たりが強くなっており、アンはすっかり萎縮してしまっていた。


【貴女の目的は何ですか?】

「え……」


 突拍子もない質問に、アンは固まってしまう。


【失礼しました。もう少し噛み砕いてお聞きします。貴女がこの世界へ来た理由をお答えください】

「…………それは、執行任務です……」


 アンはふと、本任務の目的を思い出した。

 そして、眠るゥルルを見つめる。


 ――そう。

 ゥルルの執行が、彼女、そして6.4合同執行部隊の任務。


 すっかり忘れていた。

 いや、目を逸らし続けていたという表現の方が正しいだろうか。


 ゥルルはあくまで転生者(ターゲット)であり、自分は執行官。コレはどうしようもない事実。

 同じ転生者という立場ではあるが、命令上は、最終的に彼の命を奪わなければならない関係だ。


 どれだけ仲良くなろうと。

 どれだけ彼が自分を信じてくれようと。


 今の任務が続く限り、その事実だけは消えない。


【では、現在の貴女自身の目的は何ですか?】

「……私たちの目的は…………転生者(ターゲット)、ゥルルを――」


 言葉が出ない。

 というより、出したくない。


 喉から出かかってはいるものの、脳がそれを拒否してしまっている。


「ころ――」

【違います。それは、あなた方6.4合同執行部隊の目的です】


 何を言っているのか、とアンは混乱する。

 だが、続けざまに声の主は問いかけた。


【もう一度聞きます。貴(・)女(・)自身の目的は何ですか?】

「私の…………目的……ですか?」


 その声音から、「建前ではなく、本心を聞いている」という意図を感じ取ることができた。

 そこでようやく、アンはこの人物が何を尋ねているのか理解する。


 考えても仕方ない。

 考えたところで、今の寝ぼけたアンから綺麗な答えなど出ない。


 ならば、自分の本心をそのまま曝け出すしかない。


「私は――ゥルルを助けたいです」


【…………そうですか】


 一瞬、声が途切れた。

 声の主は考え込んでいるのか。

 すると、先ほどまでの圧が嘘のように和らいでいく。


【いえ……ありがとうございます】


 その声から、ほんの少し安心したような感情を読み取る。


【では、貴女の質問にお答えしましょう。何から聞きたいですか?】

「え、あ。あ!」


 突然逆質問を振られ、アンはワタワタと焦る。

 とても重要な機会であり、聞きたいことが山積みで頭がパンクしそうなアン。

 

 そのため、アンは率直に一番気になっていることをつい口にしてしまう。


「あなたは誰、ですか?」


 しばらく沈黙が続く。

 だが声の主は意を決した様子で、ゆっくりと言葉を紡いだ。


 

【私の名は――】


【今回の用語まとめ】


■ゥルルの“ママ”

ゥルルの内側から、アンの『|あなたの物語を聞かせて《ユア・テイル》』を介して接触してきた謎の女性。RACや特殊第六、ドゥーについても把握している。


■『|あなたの物語を聞かせて《ユア・テイル》』・深層接続

対象との親交が深まるほど、その人物の深い感情や心の声まで届くアンの恩寵(ギフト)。今回はその接続を逆利用され、ゥルル内部の存在からアンへ直接語りかけられた。



――――――――――――――――――――――――――――



ここまでお読みいただきありがとうございます('ω')ノ



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※AIの利用について:

・本作ではChatGPTとclaudeを、誤字脱字の確認、前話との整合性確認、アイデア整理、世界観管理の補助として一部使用しています。

・作品本文および物語の主要構成は、すべて作者自身が執筆・最終決定しています。

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