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転生監査機関RAC  作者: ぽんにむ
第二章「輪廻庁」2-1「ゥルル編」
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CASE.075「触れざる角」

ご覧いただきありがとうございます。


※本作はカクヨム、noteにも掲載しています。

設定資料をご覧になりたい方はぜひnoteに訪れてみて下さい!!

https://note.com/ponym/m/mc8c9ad24eef6

 ハフハフハフ。

 ガツガツハフ。


 字面でもお分かりだろうが、これは人が咀嚼をする音だ。


 ゥルルの連れということで無償の滞在を許されたアン。

 そして、そのアンのおこぼれで滞在を許された頬こけの狩人らしき男は、目の前の晩餐にがっついていた。


「~~~~っ! もぐもぐもぐ」

「うまいうまい! うまいよぉ~!!」


「~♪」

「あんたたち、もうちょっと噛んで食べなさいっての」


 目の前に置かれた木皿いっぱいの料理は、そのどれもが食欲を爆発させる見た目だった。


 骨付き肉の丸焼き。

 分厚い腸詰め。

 香草を詰めた焼き野菜。

 甲殻の器に注がれた濃いスープ。


 どれも1人前とは思えない量で、湯気と脂の匂いが容赦なく立ち昇る。


 食事というより、狩りから戻った者の身体を無理やり叩き起こすための燃料。

 誰もが夢見る、狩人たちの豪華絢爛な晩餐である。


「うぁ~~~!!!」

「おなか減ってきたわ……」

「サイモン…カップラーメンとかって——」

「ないですよ隊長……というか任務中にラーメンってちょっとダメかと……」


 女性陣は悶絶していた(2回目)。


 飯テロの極致のようなその映像は、嫌でも彼女らの胃袋を刺激する。

 目を逸らそうにも、ASMRがもうとんでもない。


 それに業務上、張り付いていなければならないので、もはや拷問同然である。


 そんな品もなくむしゃぶりつく2人を見て、ゥルルは微笑んでおり、女将は忙しそうに配膳を続けていた。


「アンちゃん、よく食べるわねぇ~。ちっちゃい体なのに」

「あふはほうほはいまふ(ありがとうございます)!!」

「あとヘーロー! あんたは少しは自重しなさい?」

「んうう?? はっへは(なんでだ)??」


 女将は大きくため息をつく。


 頬こけ男の肌にはすっかり血色が戻り、先ほどまでのやつれた様子が嘘のようだ。

 だがそれでも、自身の店の飯を無我夢中で食されるという景色は、女将という立場からすればなんとも心地良いものだった。


 次第に口角が上がり、2人のところへサービスのお茶とデザートを配膳する。


「ん!? |ん~んふぇふふぁ《んえ!? 良いんですか》!?」

「イイの。スイーツは別腹でしょ? 遠慮なく召し上がりなさいな」

「~~~っ、ゴクンッ。マジかよ姉御! 太っ腹だぜ!!」

「馬鹿おっしゃい。これはアンちゃんとウル坊のよ。あんたは別(・)料金よ」

「あんまりだぜ!!」


 アンは素早く咀嚼し、せっかく頂いたスイーツ――プリンのようなぷるぷるしたものを一口運ぶ。


「おいし~~♡」

「おいしー!」

「やっぱ姉御んとこの飯はクルキブリ1だぜ!!」

「フン……おだてても何も出ないわよ」


 そうは言うが、内心は満足げ。

 隠しきれない客をもてなす愉悦感が、女将の表情から滲み出ていた。


 ゥルルももぐもぐとデザートで口いっぱいにしており、年相応の笑顔を見せている。


 しばらくして、アンたちは団体用の晩餐を平らげてしまった。


 その内訳は3割が『ヘーロー』と呼ばれた冴えない狩人。

 そして驚異の残り7割がアンという、普通なら逆であろう現象が起きていた。


 それでもアンはけろっとしており、頂いたお茶を啜っている。


「いやぁー、助かったぜ嬢ちゃん」

「いえ……」

「そういや自己紹介がまだだったな。俺は『ヘロメロス』! 特別にヘーローって呼んでくれてもいいぜ」

「なーにが特別よ、このバカチンが」

「あいてぇ!」


 ヘロメロスの物言いに、女将は拳骨を食らわす。


「私はこの『てるまえ』の店主、『サポーニス』よん。仲良くしてね♡」


 サポーニスはアンにウインクを送る。

 妖艶な立ち振る舞いだが、彼女――いや、彼はれっきとした男である。

 その浴衣の内に秘める筋肉は、どうにも隠しきれていない。


「こう見えてヘーローさん、狩人(スレイヤー)なんだよ!」

「おいおいウル坊。“こう見えて”はないだろうに。俺は一応、あの憎き“厄竜”を追っ払ったただ1人のにんげ――」

「それはロンショウの手柄でしょうが。あんたは尻尾巻いて逃げただけでしょうが」

「う……」


「すれいやー……?」


 アンは話が見えていないようで、“スレイヤー”という単語を舌の上で転がしていた。


「もしかしてアンの嬢ちゃん、“スレイヤー”知らない感じか??」

「まさか! 馬鹿言ってんじゃないよあんた! さすがのアンちゃんでもスレイヤーくらいは……」


 アンは頭上に?を浮かべており、本当に何も知らないということが見て取れる。

 サポーニスとヘロメロスは、互いに顔を見合わせた。


「狩人(スレイヤー)はね、モンスターを倒す人のことだよ」

「ほえ~、そうなんだ! てっきりハンターとかそういう名前かと思ってたから……」


「ふぅ~ん、不思議な子ね。アンちゃんは」

「なんか別世界から来た人間みてーだな。んなわけねーけど! アッハッハ!!」

「………………ギクッ」


 「ちょっとあんた呑みすぎ!」と、サポーニスはヘロメロスの口へ水をぶち込む。


 アンはドギマギしており、なんとか笑顔を顔にへばりつかせていた。

 そんな彼女の膝元に、ゥルルがちょこんと乗ってくる。


「大丈夫? アンねーちゃん?」

「う、うん! 大丈夫! ちょっと食べ過ぎちゃって……」

「いっぱい食べてたもんねぇ~」

「えへへ」


 アンはすりすりとゥルルの頭を撫でる。

 ゥルルは気持ちよさそうに体を揺らしていた。


 やはりとてもかわいい。

 

 そんな彼の角――フードが膨らんでいる部分へ、アンは何気なく指を伸ばした。


 ちょっとした好奇心だった。


 だが、ゥルルの反応はアンの予想外なものであった。


「……ッ!!」


 彼は体をびくりと震わせ、即座にアンの膝から離れた。

 そして彼女の隣ではなく、わざわざ対面の席へ座り直したのだ。


「ご、ごめんね! 嫌だった??」

「いいの! 大丈夫! 大丈夫だから……」


 ゥルルはフードをぎゅっと掴みながら、何故か物静かになってしまう。

 その時、不意にアンの恩寵(ギフト)が発動した。


(あ……)


 彼の言葉の裏にある感情。

 アンの『|あなたの物語を聞かせて《ユア・テイル》』は、その内側から明確な「怯え」を感知したのだ。


 角に触れられたことが原因なのか。

 それとも、そこから何かを連想したのか。


 理由までは分からない。


 ただ、彼が必死に平静を装っていることだけは、アンにも分かった。


 そんなゥルルを見かねたのか、サポーニスが静かに声をかける。


「ウル坊や。あなたはお部屋で先に休んでなさい」

「うん………ありがとう、サポーニスさん」


 ゥルルはすぐさま立ち上がると、そのまま逃げるようにどこかへと消えてしまった。

 「おやすみなさい」もなく立ち去ったので、アンの中では罪悪感が渦巻いていた。


「大丈夫よ、アンちゃん」

「…………え?」

「そうか、嬢ちゃんはまだそ(・)っ(・)ち(・)側なんだな」

「そうねえ。てっきりあなたは知っているものだと思ってたけど……まあ、これも巡り合わせかしらね」


 そう言うと、サポーニスは周りをきょろきょろと見回す。


 もう食事処に、先ほどまでいた客たちの姿はない。

 どうやら彼ら狩人(スレイヤー)の朝は早いらしく、今頃は部屋でぐっすり寝ている頃だろう。


 そのため、今食事処にいるのはアンとサポーニス、そして情けない狩人のヘロメロスだけであった。


「今から話すことは他言無用。絶対に誰にも喋っちゃだめよ?」

「…………はい……」

「ちと長話にゃーなるがな」


 神妙な面持ちで、サポーニスは腰を下ろす。

 ヘロメロスも打って変わって真面目な顔をしており、何やらピリッとした雰囲気が漂っていた。

 アンは正座に体勢を変え、2人の話をしっかりと聞く姿勢になる。


 彼らがこれから口にするもの。


 それは、狩人(スレイヤー)の歴史であり――


 ゥルルの過去であった。


【今回の用語まとめ】


■ヘロメロス

「ホテル・てるまえ」でアンと共に食事へありついた狩人。通称「ヘーロー」。

金欠でサポーニスに借金を抱えているらしく普段は冴えないが、本人曰く狩人(スレイヤー)として活動している。


■サポーニス

クルキブリ最大級の宿「ホテル・てるまえ」の店主。

豪快で面倒見がよく、ゥルルを「ウル坊や」と呼んで以前から可愛がっている。今回はアンへ、ゥルルに関わる何らかの事情を語ろうとしている。


■狩人(スレイヤー)

クルキブリを拠点としてモンスターを討伐する者たちの呼称。

討伐した怪物の素材が街の建築・食料・生活用品などへ利用される、この世界の生活基盤を支える存在でもある。

何故「ハンター」ではなく、「スレイヤー」なのかは現時点では不明。


■厄竜

ヘロメロスが話題に出した存在。

過去にクルキブリ周辺で何らかの騒動を起こしたらしく、ロンショウがその撃退に関わったことが示唆されている。現段階では詳細不明。



――――――――――――――――――――――――――――



ここまでお読みいただきありがとうございます('ω')ノ



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※AIの利用について:

・本作ではChatGPTとclaudeを、誤字脱字の確認、前話との整合性確認、アイデア整理、世界観管理の補助として一部使用しています。

・作品本文および物語の主要構成は、すべて作者自身が執筆・最終決定しています。

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