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転生監査機関RAC  作者: ぽんにむ
第二章「輪廻庁」2-1「ゥルル編」
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CASE.073「骸都クルキブリ」

ご覧いただきありがとうございます。


※本作はカクヨム、noteにも掲載しています。

設定資料をご覧になりたい方はぜひnoteに訪れてみて下さい!!

https://note.com/ponym/m/mc8c9ad24eef6

 ゥルルと、『ロンおじちゃん』なる者に言われるがまま門を通過したアン。

 彼女は2人の背中を追いながら、骸都クルキブリの通りを練り歩いていた。


「わぁ……すっごい……」

「だろう!? ここは多種族混合の荒くれ者たちの箱庭なんだからなぁ!!」

「~♪」


 アンの思わず漏れてしまった驚嘆の声に、ロンおじちゃん(大髭の大男)は意気揚々と、得意げに胸を張った。

 一方、隣のゥルルはというと、るんるんで鼻歌を歌っており上機嫌。

 だがなぜかフードを深々と被っており、角の部分がちょうど猫耳のようになっていて、さらに可愛らしくなっている。


「お! 悪い悪い、紹介が遅れたな。俺の名は『ロンショウ』! ロンって呼んでくれ」

「は、はい! よろしくお願いいたします!!」


 ロンショウと名乗った大男。


 その見た目は、ヘパーを思い起こすような太い腕、太い脚、巨大な体躯。

 髪と髭は赤黒く、ボーボーに生やしており、この地特有のおしゃれなのか、その先端を装飾品か何かで縛っている。


 ヘパーと決定的に違う点があるとすれば、その出っ張った腹くらいだろう。

 

 まるでアマゾンの力士。

 それが作戦室一同の頭に過ったイメージであった。


 「この人は『アンねーちゃん』だよ。初めてだから、みんな仲良くしてね!!」


 ゥルルが嬉しそうに走りながら、周囲ですれ違う人々にアンの名を触れ回る。

 皆、口々に「ウル坊」と名を呼びながら、珍しい来客であるアンを見つめた。


「……」


 大勢の視線を浴び、アンは少し照れくさそうにする。

 元より引っ込み思案な気がある彼女にとって、なんだかむずがゆい場である。


 すると1人の男が近づいてきた。


 おそらく、出てきた場所的に肉屋の店主だろうか。

 血まみれのエプロンを着た男性が、アンの前でにこやかに頭を下げる。


「僕はカロといいます、旅のお方。どうぞ御贔屓に」

「あ、ああアンです! こちらこそ、よろしくお願いします!」


 カロと名乗った男性は、アンの手を取る。

 そして固い握手を交わした。


 アンは終始たじたじであり、カロはニコーッと商売スマイルを貫いている。


「あ! 抜け駆けずりいぞカロ!!」

「テメエ、せっかくの来客を独り占めする気か!?」


「ふふん……こういうのは早い者勝ちですよ、皆さん」


 ギャーギャーと文句を言い始めた周囲の商売人たちを、カロは堂々と宥める。

 エルフのように尖った耳を、ポリポリと掻きながら。


 そしてまたアンの元へ、腰回りと膝周りに大きく膨らみを持たせたワークパンツを履いた女性が、するりと割り込んできた。

 今度は耳と鼻が尖っており、肌がゴブリンのように若干緑がかっている。


「アタシ、マレイ。よろしくな、アンの姉御」

「あ、姉御!? え、え、よろしくお願いします~あわわわわ」


 マレイはアンの手を取ると、ブンブンと力強く握手をする。

 アンよりも一回り小さな体に対して、その腕は筋肉質な職人のものだ。

 アンの細腕を軽々と振り回し、盛大に目を回させていた。


「なんだなんだ?」

「お! ウル坊じゃねえか」

「なんか見ねえ顔だな、珍しい」


 そしてマレイを皮切りに、騒ぎを嗅ぎつけた人々がぞろぞろと集まり始めた。

 次第にアンを中心とした人だかりが形成され、すっかり彼女は人気者になってしまっていた。


「薬売りのオッシスです。御贔屓に!」

「八百屋のオレーラだ! 霜降草1つどうだ!?」

「研ぎ屋のアクエレどす。ほんま御贔屓に~」


 矢継ぎ早に、次々と多種多様な人種の商売人たちがアンとの握手を求め、列をなす。

 いつの間にかロンショウはその場を仕切り始め、「1人10秒までだ。1秒超過につき銅貨1枚だからな」と勝手に商売を始めている始末。

 ゥルルに至っては、そんなアンをほっぽり、肉屋にぶら下がっていた骨付き肉をもぐもぐと頬張っていた。お金はもちろん払っていない。


「わ……っ、わわあわ!!(誰か助けてぇ~~!!)」


 

「いやぁ~アンちゃん、すっかり人気者ッスね~」

「そうね。ドゥーだったらこうはならなかったでしょうね」


 この現象は、アンの人畜無害っぷりだからこそ為せる人望である。

 これが|全身黒づくめの赤いモノアイ《ドゥー》だった場合、警戒された末にこの街へ入ることすら叶わなかっただろう。


 非力も使い様なのだと、ミラは大変感心していた。


「そうだ、こんなこと言ってる場合じゃないッスわ。アンちゃ~ん? 聞こえますか?」


 何かを思い出したかのように、ミラはアンへ問いかける。

 アンは大勢のエネルギーの塊のような者どもに囲まれながらも、なんとかミラに応答した。


「余裕のある時でいいんで、シスターズが復帰したら、この街を探索してほしいッス。もしかしたら、他の執行官もここにいる可能性があるので」

「……!」


 アンはこくこくと頷く。

 

 これほどまでに派手で巨大な街であれば、他の執行官と合流できる可能性はかなり期待できる。

 シスターズが休眠モードから復帰し次第、探索モードで周辺を一気に解析すれば、執行官の反応を拾える可能性があるのだ。


「そこまでだ、てめえら」


 人混みにもみくちゃにされるアン。

 やっとのことで、ロンショウの助け舟が入った。


「解散だ解散! むさくるしったらありゃあしねえ」

「おめえの方がむさくるしいだろ!!」

「あんん?!?!」


 今度は勝手に仕切っていたロンショウにヘイトが集まる。


 まだまだ長蛇の列が続いており、その中からロンショウへのヤジが飛ぶ。

 それに対し「そーだそーだ」という相槌も、周囲の店々から追撃として放たれた。


「引っ込んでろデブ!!」

「おい、今誰が言った!?」

「胸毛剃れ!!」

「風呂入れ!!」

「いつ結婚相手見つけんだ~??」


「上等だ、ごくつぶしどもッッ!!!」


 周囲からやたらめったらにヤジが飛び交い、早くもロンショウの堪忍袋の緒が切れた。


 ヤジの1人を標的に、ロンショウは人混みの中へ突進する。

 ドガーンという音と共に3、4人の人が宙に飛び、阿鼻叫喚となる。


 巨漢の暴走をきっかけに、まったく関係のないところでも殴り合いの喧嘩が勃発。

 ギャーギャーと人混みが混沌と化した現場に囲まれ、アンはぽけーッと放心していた。


 あちこちで拳と血が飛び交う中、人混みをかき分ける小さな影が、アンの元へ辿り着いた。


「アンねーちゃん!」

「……あ、ゥルル! どこ行ってたのもぉ~!」


 アンは頬を膨らませながらすぐさま、ゥルルの元へ駆け寄る。


 連れてきた張本人にもかかわらず、アンを放置し、手にはいっぱいのお土産を持っている。

 なのでアンは少しだけぷんすかと怒っていた。


「ご、ごめんね! ついお肉が……もぐもぐ」

「む、私にも1つください」

「ん! どーぞ!」


 いつの間にか、周囲の人だかりは散開し始め、遠くで行われているであろう乱闘に今度は人だかりができる。

 ぞろぞろと人が離れていき、ついにアンの周りにも地面が見え始めた。


「おいし~♡」


 直前の人混み地獄のことは忘れたのか、アンはゥルルに手渡された肉へかぶりついていた。

 何の肉かは甚だ見当もつかないが、鶏肉にも似た淡泊でジューシーなそれは、疲れたアンの胃と舌をこれでもかと刺激する。


「んん?」


 人の熱気がなくなったことで辺りが涼しくなり、アンはようやく周りの状況に気づく。

 街へ入った当初は緊張で視野が狭まっていたが、肉による安心感を得た今、彼女の視界にはさらに広く、夜空の下で美しくエネルギッシュな骸都が広がっていた。


「おとぎ話の世界みたい……」

「んね! ここが骸都クルキブリ! ぼくの大好きな街だよ!!」


 ゥルルは手を広げて、骸都を我が物顔で自慢する。


 そこでアンは、あることを思い出す。


 ――ぼくはずっと1人、だよ。


 あの時ついた、ゥルルの嘘。


 シンプルに、彼は別に1人ではないということなのだろうか。

 この光景を見る限り、少なくともアンにはそう思えた。


(なんだ……1人じゃなかったのね)


 何故、彼がそんな嘘をついたのかは分からない。

 もしかすれば子供特有の軽い嘘かもしれないし、何か別の意図があったのかもしれない。


 だが少なくとも、この街に彼の居場所があることだけは間違いなさそうだった。


「よかった……」

「?」


 ウル坊と親しげに呼ぶ人々。

 腕いっぱいに抱えた品々。


 その一つ一つが、ゥルルがこの街でどれだけ可愛がられているのかを物語っている。

 少なくともアンの目には、彼は決して孤独には見えなかった。


 そのことに、アンは心の底から安堵したのであった。


【今回の用語まとめ】


■ロンショウ

骸都クルキブリに住む大柄な男性。通称「ロン」。

ゥルルからは「ロンおじちゃん」と呼ばれており、彼とは以前から親しい。豪快で喧嘩っ早く、街の住民たちとも遠慮のない関係を築いている。


■骸都(がいと)クルキブリ

巨大生物の骨や素材を利用して築かれた、多種族混合の巨大拠点。

人間だけでなく、エルフやゴブリン系など多様な種族が暮らしており、商売人や荒くれ者たちで常に活気に満ちている。


■「ウル坊」

クルキブリの住民たちがゥルルを呼ぶ愛称。

街へ戻るなり多くの住民から声をかけられ、食べ物なども気軽に渡されていることから、ゥルルがこの街で広く親しまれていることが分かる。


■クルキブリの商業区

肉屋、薬売り、八百屋、研ぎ屋など、多種多様な商売人が軒を連ねる活気ある一帯。

種族の違いをあまり意識せず住民同士が入り混じっており、初来訪のアンにも積極的に交流を求める開放的な文化が見られる。



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ここまでお読みいただきありがとうございます('ω')ノ



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※AIの利用について:

・本作ではChatGPTとclaudeを、誤字脱字の確認、前話との整合性確認、アイデア整理、世界観管理の補助として一部使用しています。

・作品本文および物語の主要構成は、すべて作者自身が執筆・最終決定しています。

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